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なぜ、人は自分が住む世界の常識や価値観を相手に押し付けてしまうのか?=変人たちの世界。そこにある別の価値観? [my opinion]

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なぜ、人は自分が住む世界の常識や価値観を相手に押し付けてしまうのか?=変人たちの世界。そこにある別の価値観?

作家、演出家、音楽家、シンガーソングライター、とかいうと、世間の人たちは芸術家、アーティストと呼び、一目置くこと多い。売れていないとクソミソに言われるが、名が売れた人たちは尊敬さえ受ける。

だが、その手の職業の人にはひねくれ者が多い。おまけに世の中を斜めに見て、頑固で思い込みが激しく、付き合うととても大変な人種だ。正常とは思えない人、狂っているとしか思えない者もいる。(ただ、すぐには本性を見せない?)

それを知らない人たちが多く、尊敬や興味を持ち、チャンスがあると近づいて行く。が、親しくなると、トラブったり、揉めたりしがち。最初は腫れ物に触るように扱うが、付き合いが長くなると、通常の接し方をしてしまうからだ。

アーティストはもともと変人。どうでもいいことに拘ったり、意味不明なことで怒り出したりする。結局、多くの人は「失望した!」「裏切られた!」と離れて行く。だが、もとも彼らは変り者。間違った期待をしただけ、裏切られたのではなく、最初からヘンな人たちなのだ。

確かにこの業界。先輩や後輩を見ても変人が多い。一般常識では計れない人たちがいる。ただ、おかしい人ほど素晴らしい作品を撮っているところがあり、常識的で無い人ほど能力があることが多い。

そして変人というばかりでなく、この業界、歌でも、芝居でも、映画でも、小説でもそうだが、一般の社会とそれら業界の価値観やルールが違うというのも大きい。そんな世界の人たちに、一般社会の価値観やルールを押し付けるとトラブルになるのは必至。

映画学校に行くと生徒から「監督業は食えますか  月給に直すといくらになりますか?」などと聞かれる。それこそ時給50円のときさえある。でも、月給に換算したり、食える食えないというのは一般社会での価値観。そんなことで「監督になる」「ならない」を判断するのはおかしい。

このところの戦場ジャーナリストバッシングも同じ。一般の価値観で批判している。あるお笑い芸人は登山家に例えて「その意味では失敗だった」と発言していたが、ジャーナリストを登山家に例えること自体が無意味。

金をもらわなくても、安いギャラでも手抜きをせず、やらねばならないー命がけの仕事というのも存在する。が、それが多くの人には分からない。「危険なところに行くのはバカだ!」という発想でしか見れない。

俳優の松田優作さんは、「ブラックレイン」の出演が決まったとき、膀胱ガンにかかっていた。手術をすれば下半身不随。映画には出れない。出演すれば症状が悪化、死亡すると言われた。が、出演を選び、亡くなった。

一般の人には理解できないかもしれないが、役者には命がけで演じている人が少なからずいる。戦場ジャーナリストも同じだ。それを外野から一般の論理で批判するのは無意味だ。

親が危篤になれば、多くのサラリーマンは仕事を休み、病院に駆け付ける。が、芸能人は「親の死に目に会えない」と言われる。舞台公演を休んで病院にはいけない。そのために公演ができず、多くのお客が迷惑するからだ、映画撮影でも同じ。1人の俳優が来ないだけでも、その日の撮影はできない。それが芸能の世界。

他にも映画スタッフは最初、無給で見習いをすることがある。現場で技術を学ぶ。それを「ただ働き!」「若者を利用している」「せめて時給を払え」と批判する人がいる。でも、職人や調理師の世界にも同じ習慣がある。そしてタダで働くのではなく、授業料を払わずに学べるのだ。それに気付かない人がいる。

高い授業料を払い役に立たない知識を教える映画学校が多い。現場のベテランスタッフから直接、授業料なしで学べる見習い。どちらに意味があるのか? 学校を批判しないで、見習い制度をなじるのは違うように思える。

人は知らない内に、自分のいる世界の価値観や常識に縛られてしまい、当然のようにそれを相手に押し付ける。受け入れないと「おかしい!」「失礼だ!」「常識がない!」と批判。自分は正しい。相手が非常識なのだと考える。

アーティストたちも世間の常識から見ると変人なのだが、実は彼らなりの価値観やルールが存在する。でも、それが分からない。カタギの世界から見ると意味不明。だから、変人だと思ってしまう。

だが、東京と大阪でも価値観が違うし、日本とアメリカも違う。宗教によって、世代によって、男女によっても違う。業界だって、それぞれの価値観やルールがある。違うということからスタートすること。大事なことだと思える。


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「見えてる世界が全てじゃない...」が今の時代に大切なこと。 [my opinion]

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「見えてる世界が全てじゃない...」が今の時代に大切なこと。

これは新シリーズの「ゲゲゲの鬼太郎」のキャッチコピー。アニメと思って侮るなかれ、今回のシリーズはかなり社会派。ブラック企業、食品問題、移民問題、と社会問題をテーマにしたエピソードが多い。そして先の「見えてる世界が全てじゃない..」は今の時代にとても必要な発想だ。

映画製作のときに、一般の人が自分たちの価値観や習慣を押し付けることでトラブルが起きること。何度も書いた。自分たちの知らない映画の世界を理解せず、自分たちの価値観しか分からないことで問題が起こる。戦場ジャーナリストが誰に迷惑をかけた訳でもないのに、批判する人々。お笑い芸人が登山家に例えて非難したり。皆、自分の価値観や習慣を、まるで正義のように掲げ、自分たちが知らない業界の人たちを糾弾する。

まさに彼らに見えている世界が全てだと思っているのだろう。自分の知らない世界。見えないから分からない。なのに知ろうとしない。自分たちの価値観で判断。押し付ける。そんなことをいろんなところで感じる。俳優になりたい人たちへの記事も、このところ続けて書いたが、夢破れる人の多くは一般の価値観、大学=>就職=>会社員という流れ、それを芸能世界に当てはめて考えてしまう。

アルバイトと同じように、1時間いくら?で判断する。会社員のように固定給があって生活が安定する。それと同じものを映画監督業に求める若い人もいる。皆、一般社会の理屈やシステム。価値観が芸能界も同じと思い込んでいて失敗している。

芸能界に一般の常識は通用しない。が、似たような世界でも音楽と映画の世界は違う。テレビと映画も違う。CMもまた違う。それぞれに別の価値観がある。当然、国と国とは全然違う習慣やルールがある。そこは分かりそうだが、分からない。

留学時。LAに遊びに来た友人たち。危険ということが分からない。財布にいっぱい札を入れて買い物する。危ない地域に行きたがる。フードコートでテーブルにバッグを置いて、買いに行く。LAでは絶対にやってはいけないことだ。が、安全な日本に住んでいると分からなくなる。そこは仕方ないかもしれないが、アメリカは違うということを考えもしない。

いろんなことが「見えてる世界が全てじゃない...」という同じキーワードで納得できる。つまり、当たり前と思うことを疑うことだ。見えてない世界が存在する。そこには別の価値観がある。だから、まず、疑うことだ。


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俳優と脚本家の仕事は似ている? それを今、実感中! [映画業界物語]

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「全然違う仕事じゃない?」と思うかもしれない。俳優はカメラの前で演技する仕事。脚本家は撮影前に物語を作る仕事。だが、とても似ていること。以前にも書いた。

まさにそれを今、実感中。そんな話を書く。まず、俳優はシナリオを読み、台詞を覚えるだけでなく、自分が演じる役についてあれこれ考える。

年齢、経歴、出身地、職業、恋愛関係、会社での立場、よき上司なのか? 嫌われているのか? 妻とはうまく行っているのか? 子供はいるのか? いれば親子関係は良好か? 等々。シナリオを読み、それら情報があれば把握。なければ想像する。

一般的に俳優はかっこ良く、或は綺麗な人という印象。演技については「うまい」「下手」とかいうが、本当の意味で演技とは何か?は分かってないことが多い。演技とは何か? その第1歩が先に書いたキャラの想定である。

「そんなことしなくてもいいんじゃない?」

と思う人もいるだろう。が、それがスタート。例えば、中年男性の役。街角で泣いている子供を見る。メインの物語とは直接関係しない。そのときに、どういう顔をするか? ただ、見ているなんてあり得ない。何かを感じるはずだ。もし、妻と別居中で、子供と会えない設定なら「ああ、うちの坊主はどうしてんだろうな...」という顔をするだろう。子供嫌いな役なら「子供って本当に面倒だよな」という表情。

それら設定がシナリオに書かれていればいいが、なければ俳優自身が想像し決めなければならない。シナリオに書かれた部分から想定したその男の経歴。それに当てはめて気持ちを考える。が、その経歴にそれがない場合。俳優自身が考える。

「そうだ。子供に嫌われているオヤジという設定にしよう。あの子くらいのときは仲良かったのに、中学生頃から口も聞かなくなったよなあ...」

その設定で演じる。観客が観たときに「ああ、この男性の悲しそうな顔。いいな。嫌な奴だと思ったけど、子供に対して強い愛を感じているんだ」と感じてくれたりする。それによって、その男性がリアリティを持つ。親近感を感じる。逆に憎しみを感じるのもOK。いずれにしても映画内の世界が広がる。

なので、演じる前には徹底して役の履歴を作る。出身地、小学校、中学、高校、大学。家族構成、家族の履歴。もし、その役が警察官なら、徹底して調べる。階級は? 所属は? 勤務地は? 警察官ならこんなとき、どんな反応をするのか? 日常はどうなのか? 

もし、警察官の友達がいれば根掘り葉掘り質問する。文献を読む。刑事ドラマを見る。いろんな方法で警察組織と警察官を勉強し、それを演技に取り入れる。警察署を訪れる。取材というと拒否されそうなので、何か理由をつけて道を訊くとか...。そうやって俳優は役作りをする。

さて、脚本家だ。例えば戦争映画のシナリオを書く。そのためには、その戦争を知らなければならない。歴史的な経緯、戦場となった町、敵対するそれぞれの国の事情。それらを把握した上で、キャラクターを作る。主人公は日本兵。まだ若い。召集令状を受けて軍に入る。その辺はウソがあってはいけない。ちゃんと調べる。

戦争に行くのは、どんな気持ちなのか? 脚本家自身にそんな経験はない。元兵士に訊く。でも、太平洋戦争に参加した人はもう高齢。亡くなった方の方が多い。文献を読む。ドキュメンタリーを見る。映画を見る。そうやって戦場に行くときの気持ちをを調べて、主人公にそんなリアクションを取らせ、台詞を言わせる。戦場ではどんな行動を取る? どんな気持ちになる? 調べる。戦場だった地を訪れる。

実際にあった戦争の場合は特にそうだが、架空の戦争であってもリアリティを求めるなら、現実を調べることが大事だ。「こんな感じで、勇敢に戦ったんじゃないの〜」と安易な想像で描くと、観客は気付く。知識がなくても気付く。

「何か、違うんじゃない〜」

これは本当に不思議だが、小説でも、シナリオでも、映画でも、調べて事実を元に書いたものは観客を納得させる。逆に、調べずに想像で安易に書くと、客はリアリティを失い、物語に興味をなくす。SFでも、ファンタジーでも同じ。だから、脚本家は調べて書く。

さあ、どうだろう? 俳優が役作りをするのと、脚本家がシナリオを書くのはとても似ていることに気付いただろう。調べる。話を訊く。本を読む。現地を訪れる。そうやって脚本家も俳優も架空の人物を組み立て、現実味を持たせて行くのだ。

脚本家と俳優。やっていることはほぼ同じだ。違うのは脚本家が作り上げた役を俳優はまず把握。書かれたことを理解する。あとは書かれていない部分を想像し、調べて取り入れる。職業等が特殊なものなら、さらに調べる。

つまり、優れた作品を書く脚本家の作品に出れば、よく調べて作られているのでリアルな役を演じることができる。逆に言えば、いい俳優が出てくれれば、書かれた役をさらに膨らませて脚本家が考えていない部分までリアリティを持って演じてくれるのである。

そして両者共に言えるのは、調べるものは調べるが、調べても分からない部分。特に精神的なもの。そこをどうするか?もう想像するしかない。では、どう想像するのか? 自分の体験と知識からイメージすることだ。

だから、寅さんを演じた渥美清さん。元々テキ屋のような仕事をしていたので、当たり役となった。武田鉄矢さん。教師になろうと、教生をやったことがある。そんな経験が生きてリアリティある親近感持てる役が生まれた。

シナリオライターの場合。映画ファンで、大学を出て、すぐに脚本家になった場合(普通はそんな簡単に行かないが)経験値が少ないので、いいものを書き続けるのがむずかしい。といっていろんな経験を散々してからだと、脚本家になるチャンスを逃してしまう。これは俳優にも言えること。難しい部分だ。が、最後にものをいうのは、いずれも「見る目」である。

兵士の役を書いたり、演じたりするのであれば、仕事内容や生活を知った上で、人としての思い、喜び、悲しみを見つめることができないと、演じることも、書くこともできない。観客を納得させ、感動させることはできない。

今、僕はある戦争について勉強している。ドキュメンタリーだが、最初にやらねばならないのは、戦争の経緯を知り、戦場の事実を把握。そして、巻き込まれた人たちの思いがいかなるものであったのか? を知ること。

その時代を想像し、イメージし、自分の体験のようになるまで、調べることだと思っている。情報ではいけない。体験にしないと、観客の心に伝わるものは作れない。俳優も脚本家も同じである。



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「明日にかける橋」未公開スチール紹介(アンコール)女優の真木恵未さん=大日本銀行のCMガール! [ロビーカード紹介]

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「明日にかける橋」未公開スチール紹介(アンコール)女優の真木恵未さん=大日本銀行のCMガール!

地元。9週間のロングランの末に上映が終了。凄い記録を打ち立てた。さて、未公開スチール。紹介し切れなかった俳優さんがいるので、アンコールでもう一度。

この写真。誰だか分かりますか? そう、劇中で大日本銀行のCMをしていたタレント。女優の真木恵未さん。テレビドラマや映画で活躍中。この人をまだ紹介できてなかったので、今回ご紹介。


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「明日にかける橋」未公開スチール紹介(アンコール)花火屋の丈さんの場面 [ロビーカード紹介]

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「明日にかける橋」未公開スチール紹介(アンコール)花火屋の丈さんの場面

せっかくなので、もう1枚。花火師の丈役の栩野 幸知さん。僕の前作「向日葵の丘」で怪演して下さったので、今回もお願いした。大林宣彦監督、高橋伴明監督作品にも多数出演されている。黒澤明監督や伊丹十三監督とも交流があった、凄い方。今回も怪演していただき感謝です。


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マイケル・ムーアの新作「華氏119」何かヘン?どうしたんだろう [映画感想]

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マイケル・ムーアの新作「華氏119」何かヘン?どうしたんだろう

「ボーリング・フォー・コロンバイン」以来、どの作品も素晴らしい。社会問題を分かりやすく解説、批判、ラストは感動さえ覚える。そんなドキュメンタリーがあるとは思わなかった。「華氏911」ではブッシュ大統領を敵にまわす作品。そのムーア監督が今回はトランプ批判の映画を作った。

が、引っかかる。トランプ大統領は非常に評判が悪い。ただ、彼を支持する人たちの声に「ん?」というものもある。実はムーアと同じように、アメリカの恥部を描き続けるオリバー・ストーン監督はトランプを支持している。なぜだろう?

また、これまでのムーア作品には多くの人が気付かない、少なくても日本人が知らなかった事件や問題を取り上げ、鋭く斬り込むことが多かった。が、トランプはすでに多くのマスコミが批判している。それを今さら批判することの意味とは、何か決定的な事実を掴んだのか? いくつも気になる点がありながら映画を観た。

お馴染みのスタイルで映画は始まり、ヒラリーではなく、トランプが大統領になったことを当選発表の日の映像を使い見せて行く。が、すぐに話題はトランプ以外に逸れる。フリント市の水道問題。「トランプも同じことをしている!」と展開すると思いきや、延々と水道問題。確かに酷い話。福島と同じ構図。鉛が入った水道水を飲んで、多くが病気になっているのに、市政は「基準値には達していません」と対応を拒む。

だが、その話題はいつまで経ってもトランプに結び着かない。やっとトランプ登場。その町の水道局に遊説中のトランプが訪れたことを紹介。でも、それだけ。話はその後、銃乱射事件に進み、生徒たちが反対運動を起こす話を紹介する。「ボーリング・フォー・コロンバイン」を彷彿とする。

その後、ようやくトランプの話題になるが、先の2つの話とは繋がらない。ヒットラーがいかにしてトップに立ったか?をトランプの言動に重ねて見せて行く。が、これはトランプの問題を描いたものではなく、「危険なトランプに権力を持たせてはいけない」という表現。でも、なぜ、トランプが危険なのか?が描かれていない。

途中で「トランプは人種差別主義者だ」というよく言われることは描かれる。彼を会場で批判した女性たちが係員に連れ出される映像を紹介。数々の問題発言も見せる。が、それだけだ。移民の親子を別々に収容した。親子を引き離した。酷い。という話も紹介されるが、それはトランプ以前から行なわれていたことで、そのことは解決されたというニュースを聞いている。

とすると、この映画で描かれたトランプの悪業は、差別主義者であること。問題発言をしたということだけ。おまけに水道問題の方が圧倒的に長く描かれている。銃乱射事件もトランプとは直接関係ない。なんじゃこれは? 今までのムーア作品とかなり違う。

ドキュメンタリーでも、ドラマでもそうだが、映像というのは演出次第で、取材対象を悪くも、良くも描くことができる。その一番安易な方法は誰もが「悪人!」と思う過去の人物を重ねることだ。よく使われるのがヒットラー。ムーア監督はその手法を今回の作品で使い、

「トランプは差別主義者だ。だから、ユダヤ人を虐殺したヒットラーと同じようなことをするだろう。危険だ!」

と警告する。が、過去の作品のように、細かな事実に切り込み、その被害を描いてはいない。つまり「危険だと思うよ。ヒットラーになるかも?」という予想でしかない。

思い出すことがある。検察が小沢一郎の事務所を捜査。有罪に持ち込もうとしたのに結局何ら問題は発見されず、無罪になった。イメージとして悪徳政治家だと思う人が多いが、実際は問題なかった。特捜部が何ヶ月もかけて調べて証拠がでないということは何もなかったということだ。「ロス疑惑」の三浦一義もあれだけマスコミに「怪しい」とバッシングされながら、結局、無罪。

怪しい=悪人と攻撃するのはアウト。イメージだけで決めてはダメ。同じようにトランプが大統領になり、2年も経つ。その間に彼が行なった悪業をムーア監督は批判すべき。それが描かれていないというのは、何ら発見できなかったということ? 

だから、直接関係のない水道問題と銃乱射問題を延々と描いた? あるいは、その2つこそがムーア監督が本当に描きたかったことで、そのネタだけで弱いので、今回はトランプ批判という大看板を着けた? 何だかそんな感じさえする。もし、トランプを批判するなら

「ヒラリーが大統領になっていれば...アメリカはこうなった」

という展開もありだ。「ボーリング...」でも銃社会アメリカと、お隣の銃のない社会カナダを比較したように。だがヒラリーの話は冒頭しか出て来ない。そしてヒラリーを描くと、もっとどす黒い事実が出てくるはず。

ただ、おもしろいのはオバマ批判は出てくる。平和主義者のイメージ。良識ある人気の大統領と思われがちだが、そうではない!とムーア監督は斬り込む。先の水道問題。その町にオバマがやってきてスピーチをするが、その問題を隠蔽しようとする市長を庇い、問題を矮小化するような発言。彼に期待した市民は大いに失望する。

また、オバマは記録的な空爆を許可しており、多くの犠牲者が出ている。さらに、これまた記録的な数の移民を追い返している。これらの事実は説得力あり、オバマの正体を暴くものだ。トランプに対しても問題発言があるとかではなく、「こんな酷いことをやっている!」という事実を暴けばいいのに、それがない。だから、ヒットラーと重ねることしかできないのだろう。

ああ、ヒラリー問題も少しあった。本来、全米で勝ち抜いたのはバーニー・サンダースだったのに、それをすり替えヒラリーが勝利したことになったという指摘もある。が、深く追及せずに別の話題に行く。そしてトランプが不正選挙をしたという指摘はない。「なぜ彼が大統領に成りえたか?」についても追及せず「そこに不正がなかったのか?」も触れない。ということは不正選挙はなく、正式に国民が選んだということだ。

では、なんでこんな映画を作ったのか? トランプの政敵から金をもらった? でも大した違反材料が見つからずこうなった? 或は先に上げたように本当にやりたかったのは水道問題? いずれにしても、これまでの彼の作品とは違い。納得も、驚きも、感動もなかった。

確かにトランプは問題発言が多い。見かけも悪の大ボス風。口も悪い。そもそもビフ(?)のモデルだし。イメージはとても悪い。が、それだけで「悪人 !」と決めつけることはできない。ムーア監督であれば、その先に斬り込むべきなのに、描いていることは、ネガティブキャンペーンと同様のものばかり。なぜ、トランプは北朝鮮を攻撃しなかったか?も描かれていない。

そこが一番のポイント。ブッシュのようにありもしない大量破壊兵器があるといちゃもんつけて戦争すればいいのに、していない。でも、そこにトランプの目的があると思え、そこを追及すると、映画が成立しないからだと思える。

映画を見終えて思うのは、「なぜ、ムーア監督がこんな切り込みの弱いトランプ批判映画を作ったのか?」ということ。「論点が逸れまくる映画にしたのか?」批判にすらなっていない。裏に何かあるはずだ。この映画で「アメリカの正義はまだ死んでいない」とか「日本のマスコミは見習うべきだ」という意見があるが、とんでもない。情報を見抜く力を持ちたい。


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