「明日にかける橋」監督 太田隆文プロフィール紹介。予告編も見られる! [My Movies]
1961年生、和歌山県出身。ジョージ・ルーカス等のハリウッド監督が学んだ USC(南カルフォルニア大学)映画科に学ぶ。帰国後、映画作家の大林宣彦に師事。1995年に脚本家デビュー。テレビドラマで監督デビュー。2005年にした青春ファンタジー「ストロヘ゛リーフィールス゛」て゛劇場映画テ゛ヒ゛ュー。全ての作品は自身でオリジナル脚本を執筆。
毎回、カンヌ映画祭等、海外の映画祭で招待上映。選んだ新人キャストがその後大ブレイクする監督ともいわれる。大林宣彦監督も高く評価。次世代を担う実力派と期待されている。
【フィルムグラフィー】
「ストロベリーフィールズ」(2005年)
出演:佐津川愛美・芳賀優里亜・東亜優・谷村美月・波岡一喜・三船美佳
昭和40年代を舞台にした女子高生の幽霊ファンタジー。
カンヌ映画祭2005 フィルムマーケット招待作品
ジャパン・フィルム・フェスティバル・LA 201111招待作品
監督ブログ=>http://t-ota.blog.so-net.ne.jp
「青い青い空」(2010年)
出演:相葉香凛・草刈麻有・波岡一喜・鈴木砂羽・袴田吉彦・藤田朋子・長門裕之・松坂慶子 浜松を舞台にした涙と感動の青春書道映画!
ジャパン・フィルム・フェスティバル・LA 2011招待作品 ふじの国映画祭2017招待作品
DVDは全国のTSUTAYA等でレンタル中
監督ブログ=>http://takafumiota08.blog.so-net.ne.jp
予告編=>https://youtu.be/3qK8Q8o-pyY
「朝日のあたる家」(2013年)
出演:並樹史朗・斉藤とも子・いしだ壱成・山本太郎
原発事故を背景に家族の絆を描いた社会派ドラマ。静岡県湖西市ロケ。
ジャパン・フィルム・フェスティバル・LA 2011招待作品、アリゾナ州立大学、シンガポール、ニュージーランド、バリ、バンクーバ、ドイツ。世界6カ国で上映。絶賛される。
DVDは全国のTSUTAYA等でレンタル中
監督ブログ=>http://cinemacinema.blog.so-net.ne.jp
「朝日のあたる家」予告編=>https://youtu.be/rP2ztda0kpg
「向日葵の丘 1983年夏」(2014年)
出演:常盤貴子・田中美里・藤田朋子・芳根京子・藤井武美・百川晴香・別所哲也・津川雅彦
静岡県島田市ロケ
1983年と現代が交差する悲しみの青春物語。
ジャパン・フィルム・フェスティバル・LA 2015招待作品
DVDは全国のTSUTAYA等でレンタル中
監督ブログ=>http://aozoraeiga.blog.so-net.ne.jp
最新作「明日にかける橋 1989年の思い出」
バブル最高潮だった昭和64年。平成元年である1989年と現代が交差する家族物語。
静岡県の袋井市、磐田市、森町でロケ。
DVDはamazon、楽天で購入できます。全国のTSUTAYAでもレンタルできます!
出演 鈴木杏、板尾創路、田中美里、越後はる香、藤田朋子、宝田明
予告編=>https://youtu.be/MacNc2k56wQ
監督ブログ=>http://cinematic-arts.blog.so-net.ne.jp
映画のHPはこちら=>http://ffc2017.main.jp
そして本年、初めての長編ドキュメンタリーに挑む。
「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」
2019年12月、沖縄で完成披露試写会が行われ、大評判となった。
現在は次回作を準備中
飛行機で1時間で行けるロケ地=映画製作にとってお得か? [地方映画の力!]
飛行機で1時間で行けるロケ地=映画製作にとってお得か?
時々、地方自治体の方から「監督、ぜひ、うちの町で映画を撮ってくださいよ」と言われる。ある町に仕事で行った時は観光課の課長さんがやってきて「ぜひ、市内を案内させてください」と言われた。課長さん自らの運転で市内の名所巡り。というのも、多くの自治体は今、財政難。新しい事業を始めるのも難しい。元手をかけずに収入が増えるのは観光。観光客が宿泊、お土産、食事とお金を落としてくれる。
が、京都、奈良のような観光地ならいいが、何ら有名な史跡もない。大自然の恵みもない町にはなかなか来てくれない。そこで映画のロケ地。映画の舞台となった町には、その映画を見て感動したファンがやってくる。映画が撮影されることでマスコミが紹介する。町で作るパンフレットにも映画「***」のロケ地と書ける。いろんな意味で大きなアピールができるのだ。ただ、映画製作者側からいうと簡単ではない。ある田舎町の方が言った。
「監督、うちの町は東京から遠いと思われがちですが、飛行機なら1時間ですよ! あっと言う間ですよ。ぜひ、映画を撮ってください」
だが、問題は時間ではない。お金だ。東京からその町まで飛行機だと片道3万2320円。往復で6万4640円。スタッフキャストが約50名。掛ける50で、300万以上。その内10名以上が何度も往復する。俳優もそれなりの人はビジネス・クラスにせねばならない。そして宿泊。地元ホテルに50人が数週間泊まる。飛行機代と合わせて700万以上。さらに現地で使うレンタカー。機材や衣装も郵送。その他の経費も入れれば1000万は必要になるだろう。
もし、同じ物語を東京近郊で撮ればその1000万はかからない。その分を節約。あるいは他に回せる。CGで迫力シーンを作る。大爆破シーンができる。ロケ弁が豪華になる。いやいや、そんなもんじゃない。いろんなことのプラスになる。おまけに交通費や宿泊費がいくらかかっても、映画自体のクオリティは上がらない。5千万の製作費だとしたら、その内の5分の1は物語に関係のないことで消えてしまうのだ。
そこまでして、その町でロケして何のメリットがあるか考えると厳しい。京都奈良なら憧れる人たちがいる。北海道も同様。神戸横浜もあり。しかし、聞いたこともない町、歴史的な史跡もない。広大な大自然もない。その町で撮影して喜んでくれるのは、町の人たちだけ。わが町が映画でアピールできる人たちのみなのだ。だから「監督、ぜひ!飛行機で1時間ですよ」と言うのだが、その「飛行機で1時間」がどれだけ高くつくのか?分からない方が多い。
でも、それを理解し製作サイドのメリットを考える町もある。要は製作費が削減できることがあればいい。宿泊を地元の旅館やホテルが引き受け全部無料にする。食事を地元の人たちが全て提供。他、車、機器、ロケ地探し協力と、少しでも製作費が安くなるような便宜を図る。そんな支援をする街もある。
そうすれば多少遠くても「その町でロケしようか?」と言うことにもなる。その種の活動をするのがフィルムコミッションなのだが、それはまた別の機会に紹介。そんな風に「飛行機で1時間だから近い。ぜひ、うちの町で」は問題はあるが、考えればいろんな方法はある。また、そのことは紹介する。
俳優業の厳しさ。ロケ地に呼ぶだけで経費3万円。それでも呼びたい実力と個性が大切。 [映画業界物語]
俳優業の厳しさ。ロケ地に呼ぶだけで経費3万円。それでも呼びたい実力と個性が大切。
遅くなったが、ワークショップのことを報告。今回も素敵な面々が集まり。4時間のレッスン。実力派が集合。それぞれの力を見せてもらい、長所と短所を指摘。その辺は僕の得意とするところであり、正解率は高い。だから選んだ新人がよくブレイクする。
俳優もそうだが、アーティストは意外に自分の良さが分からない。個性があるのに「俺は個性がない」と思い込んだりもする。そして欠点には気付きやすいが、どう克服するか?がなかなか分からない。そして、人間としての短所こそが、演技の上で武器になることを知らない者も多い。
今回、参加してくれたメンバー。全員ではないが、即戦力と言える人たちが何人もいて、いずれ現場でご一緒したい。それと実力はもう一息だが、努力しているし、思いもあるし、これから伸びていく若手もいた。本当にこんな連中を現場に呼んで、どんな役でもいいから演じてもられば、とても勉強になり、成長するのだが、現場に呼ぶのはとても難しいのだ。
もし、東京で撮影があれば、ノーギャラでも、勉強のために呼んで小さな役でも演じてもらうことができる。が、例えば静岡ロケ。前回の撮影現場だと新幹線で片道1万弱。往復で2万。宿泊が1泊6千円。飯が3回で3千円とすると3万円になる。ギャラなしでも、1人の俳優を呼ぶのに3万円が必要。10人だと30万だ。これは大きい。
俳優の勉強のために使える額ではない。つまり、勉強ではなく、それなりの力を示せて、その役を演じ切れる実力があるものしか呼べないということなのだ。それが撮影であり、低予算の現場。僕が気に入ったからと無理を言えることではない。かわいい女優がいる。仲良くなりたい。だから、呼ぶということはできないし、やっては行けない。
それなら、その3万円を別の有効なことに使うべきなのだ。小道具、衣裳、レンタカー、機材。それらに使えば撮影がスピーディになったり、よりよいアングルで撮影できたりする。だから俳優は実力があるだけでなく、個性があり、他の俳優では替えが効かない存在になってこそ、交通費も、宿泊費も、食費も出して、さらにギャラを払ってでも現場に呼ぼうということになる。
本当に厳しい世界だ。が、今回のメンバーにそんな存在は何人もいた。あとは、次回作で彼らが演じられる役があるかどうか?それがまた厳しいが、彼ら彼女らと仕事が出来る日を楽しみにしている。
太田隆文監督作品ー予告編集「青い青い空」から「明日にかける橋」4本を一気見! [My Movies]
太田隆文監督作品ー予告編集
「青い青い空」から「明日にかける橋」4本を一気見!
「明日にかける橋 1989年の想い出」予告篇!
出演 鈴木杏、板尾創路、田中美里、越後はる香、藤田朋子、宝田明
ロケ地静岡県では9週間の大ロングラン上映!
書道映画ブームの火付け役がこれ。
DVDはamazon、楽天で購入可能。全国のTSUTAYAでもレンタルできます!
予告編=>https://youtu.be/MacNc2k56wQ
監督ブログ=>http://cinematic-arts.blog.so-net.ne.jp
太田隆文監督作品、第2弾(2010)
「青い青い空」予告編
浜松の高校、書道部を舞台にした青春書道映画。
笑って、泣いて、感動。松坂慶子、長門裕之ら大物俳優も出演。
太田隆文監督作品、第4弾(2015)
「向日葵の丘 1983年年 夏」予告編ロングバージョン。
常盤貴子、田中美里、藤田朋子。芳根京子。
豪華キャストのノスタルジー物語。
一緒に高校時代を過ごしたあの夏の日。
忘れられない悲しみが今、感動の涙に変わる。
全国32館で公開。各地で大ヒットした感動作。
太田隆文監督作品。第3弾(2013)
原発事故の悲劇を描いた映画「朝日のあたる家」予告編ロングバージョン
山本太郎さん出演でも話題になった。
全国の映画館27館で公開。世界6カ国で上映。
大ヒットした話題の映画。
太田隆文監督プロフィール
1961年生まれ。「スターウォーズ」のジョージ・ルーカス監督らハリウッド監督の多くが学んだ南カルフォルニア大学(USC)映画科に学ぶ。
「ストロベリーフィールズ」(2005年 佐津川愛美、谷村美月)
「青い青い空」(2010年 波岡一喜、鈴木砂羽、松坂慶子、長門裕之)
「朝日のあたる家」(2013年 並樹史朗、斉藤とも子、いしだ壱成、山本太郎)
「向日葵の丘 1983年夏」(常盤貴子 田中美里、藤田朋子、津川雅彦、芳根京子)
「明日にかける橋 1989年の想い出」(鈴木杏、板尾創路、田中美里、藤田朋子、宝田明)
帰国後、大林宣彦監督に師事。地方を舞台にした感動作を作り続け、全ての作品は海外の映画祭で上映。大物俳優や国民的俳優が数多く出演。また、太田作品に出演したのち大ブレイクしたのが谷村美月、芳根京子ら。出演はしていないが、最終候補に残った若手俳優も、その後、NHKの朝ドラ等に出演。新人発見の監督と言われる。
2013年には原発事故を題材にした「朝日のあたる家」を監督。山本太郎が出演したことも話題になった。全国23館で公開。世界6カ国で上映された。最新作は沖縄戦を題材とした初の長編ドキュメンタリー作品。
物語はどうやって作られるのか?=「朝日のあたる家」の場合。 [My Movies]
物語はどうやって作られるのか?=「朝日のあたる家」の場合。
「太田監督の映画はいつも感動的だけど、シナリオもご自身で書いているんですよね? どうやって物語って考えるんですか?」
とたまに聞かれる。物語を考えると言うのは、あまりすることではないので不思議に思えるようだ。僕の場合。最初はネタから。前作の「明日にかける橋」ならタイムスリップ。「朝日のあたる家」なら原発事故。「青い青い空」なら書道。「ストロベリーフィールズ」なら幽霊という風にネタというか、題材を決める。分かりやすい例は「朝日」だ。
まず、原発事故の悲劇を伝える映画を作ろうと考えた。しかし、原発自体を描くと億単位の製作費が必要。あと、それではパニック映画になるし、本当の意味での原発事故の恐怖は描けない。被害者である住民を描いてこそ恐怖や悲しみが伝わる。戦争映画でもそうだが、軍部視点で描くと、戦争の進行は分かりやすいが、悲劇の部分が伝わりにくい。
そこで「朝日」は住民を視点で描いた。ある家族を中心にして、周りの人たち。原発内部、官邸の内側も一切見せず、一般人の視点で見えるものだけを描いた。この手法は過去にある。スピルバーグの「宇宙戦争」あれはトムクルーズの家族だけを描き、政府、軍部、宇宙人側は一切描かない。主人公が見るものだけを観客が見る。それゆえに不安感が増大する。その手法だ。
もう一つが山田太一の「岸辺のアルバム」。新築の家を舞台に悩める家族模様が描かれ、最後は大水でその家が流されてしまうまでを描く。そのことで家族とは何か?を見せつける。この2つの作品の方法論を参考に、原発事故に巻き込まれた家族の物語を描いてみた。登場するエピソードは全て本当に福島で起こったこと。だから、机の上で考えた話ではなく、胸に突き刺さる。
次に家族構成。平凡な家庭がいいので、お父さん。お母さん。娘2人。1人は大学生。1人は高校生とする。娘上は美大で絵の勉強。娘下は犬が好きな子。お父さんはいちご農家。お母さんは主婦。ここまで出来れば、そこに原発事故があればどうなるか?を考えれば物語ができる。が、この手の物語で大切なのは専門家。怪獣が登場するなら怪獣博士がいる。この場合は原発と放射能に詳しい存在。
それがいしだ壱成さん演じる反原発活動家。そのことであれこれ説明と解説をしてもらえる。「ゴジラ」なら志村喬の役割。あと、主人公の1人、お父さん(並樹史朗)と対立するキャラも必要。そのことでよりドラマが深まる。それが山本太郎さんが演じてくれた伯父さんだ。
ここまでくればもう、想像するのではなく、実際の原発事故に合わせて家族の反応や行動を推理していけば物語ができていく。別の映画のパターンもまた紹介する。
ある若手女優さん。状況把握力が凄い。=天才少女の考え方? [映画業界物語]
ある若手女優さん。状況把握力が凄い。=天才少女の考え方?
テレビ、映画で活躍している若手女優。僕もお仕事をしたことがある。彼女は毎回、違うタイプの演技をする。声の出し方まで違う。天才的な俳優。だが、凄すぎて、それに気づかない人が多い。だから、一般の映画ファンの評価はあまり高くない。そんな彼女に芝居をするときの注意点を聞いたことがある。
「そうですね。まず、リハのときに、周りの人の芝居を観ます。この人はこんな感じ。あの人は力押し。こちらはマイペース。その中で私が考えて来た演技をした場合。どうなるか?考えます。相手役の女優さんも同じテイストの場合もある。どちらもマイナス。と言って、相手に芝居を変えろとは言えない。また、マイペースでそのパターンしかできない人もいる。だから、周りを見渡して、テイストが被らない。それでいて、相手の芝居を受けて返せるスタイルの演技をするんです」
可愛い顔して、そこまで考えていたのか!当時17歳。これは状況把握能力がズバぬけているのだ。俳優は表現の仕事だ。表現をするのにもあれこれ考える。が、それだけではダメ。プロレスと同じで、相手の技も受けないといけない。それができず、自分ばかりが前に出る俳優もいる。が、彼女は状況を把握した上で、自分の演技も考え抜き。周りに合わせて修正して演じてしまう。
観ていると分かるが、周りに遠慮しているのではない。周りを立てているというもの少し違う。周りの状態を把握した上で、それらを否定せず、かつ、自分の芝居が一番目立つ演技を選んでいるのだ。まさに天才少女。彼女は10年以上経った今もテレビ、映画の第1線で活躍。俳優業は状況把握能力が重要であること。よく分かる話であった。
本日は午前10時の映画祭。「アラビアのロレンス」完全版。 DVDも持っているが、 また見てしまった [映画感想]
クリエーターは理解されてはいけない。理解されないから作品を作ることができる? [映画業界物語]
クリエーターは理解されてはいけない。理解されないから作品を作ることができる?
人は「理解されたい」という欲求がある。自分を理解してくれる人がいると嬉しい。理解されないと寂しい。という思いはそこから来ている。
一番身近にいる両親に理解されないことで不良になる。その思いが満たされないことが原因だろう。だから、喧嘩したり、暴れたり、万引きしたりして注目を集め、認められようとする。芸術を志すのも実はそんな反動の一つだろう。理解されたくて絵を描く、歌を歌う。小説を書く。同様の行為だ。
僕も多分、同類。昔から人に理解されない。小学生の頃はクラスの人気者で友達もたくさんいたので、認知欲求は満たされていたのだろうが、理解されることがあまりなかった。「あいつは変わっている」と言われた。漫画ばかり読んでいるとか、おかしなものを集めるとか、変わった趣味もない。
中学、高校になっても同じで、上京したら「関西の人は変わっている」と言われ、留学すると「日本人は変わっている」と言われた。関西も、日本も関係ない。要は理解できないということだ。その変人度は国際級ということ。これは自慢できるかもしれない。映画界は変人の集まりだった。でも、そこでも「変わっている」と言われた。アル中でもない。ギャンブル狂でもない。極度の女好きでもない。時間は守るし、犯罪にも手を染めない。が「変わっている」と言われる。
ある時、何度かお仕事をした先輩スタッフ。技術系。信頼できる人で、僕を理解してくれるので応援してくれていると思えていた。が、監督デビューを目指し、相談した時に言われた。
「要は、何でもいいから1本撮ってしまえばいい!と思ってんだろ?」
と。信じられなかった。その言葉を解析すると「何でもいいから」=「こだわりなくどんな映画でもいい」「撮ってしまえばいい」=「監督デビューすれば、こっちのものだ!」という意味だろう。
僕には強いこだわりがある。観客が感動する。涙する。ドキドキハラハラするのが映画。それを作るために監督になりたい。だから「監督になれれば何でもいい。どんな映画でも撮れればいい」という思いは全くない。もちろん、そんな輩もいる。「監督と呼ばれたい」「尊敬されたい」「何でもいいから監督になりたい」要はある種の大学生が「どこでもいいから一流企業に就職したい」と考えるのと同じ。個人的に最も軽蔑するタイプ。
先輩は僕の思いを理解して応援してくれていると思っていたが、作品にこだわるより肩書きが欲しいだけの若い奴らと同じに思われていたのだ。かなり落胆したが、もうかなり昔の話。人はなかなか理解してくれないことをまた痛感した。
最近は自身が理解されなくてもいい。作品が支持されればそれでいいと考える。これがもし、身近な人たちに理解され、ハッピーなら映画を撮る必要はないのだろう。理解されないからこそ作品を作る。それがクリエーターの原動力になっている。俳優も、作家も、歌手も同様なのだ。
映画のタイトルを決める時。様々な観点からベストを選ぶ? [映画業界物語]
映画のタイトルを決める時。様々な観点からベストを選ぶ?
映画のタイトルを選ぶとき。多くの人が集まり、一番支持があるものを選ぶのはダメという話を前回書いた。趣味嗜好だけで選んでしまう。みんながいいというものより「皆が嫌いではない」になりがち、それは最大公約数。多くの人にアピールしない。アートというのは不思議なもの。だが、論理的に考えることもできる。
僕がタイトルを決める時。考えることがいくつかある。まず、物語を象徴しているか? タイトルと結びつくか?だ。「明日にかける橋」は時間を超える「橋」が出てくる。「向日葵の丘」は向日葵が咲く丘がキーになる。そんな風に物語と関連する言葉があることを重要視する。
次に覚えやすいか? 人はなかなかタイトルを覚えてくれない。なのに長いもの、ややこしいものにすると、さらに覚えてくれない。覚えてもらうには印象的な言葉や物語をイメージさせるものが大事。
「深夜にようこそ」というタイトル。何で深夜なのにようこそなの?迷惑じゃないか?と思うが、それがコンビニの話と分かれば「なるほど」と思える。そんな風に何で?と思わせることも大事。「東京の日本人」だと当たり前だが、「巴里のアメリカ人」だと、ドラマが生まれる。
3番目に大事なのはお客さんの印象。僕の映画は家族で見られるものが多いので、「殺人」とか「戦慄」とかいう言葉は使わないようにする。「恐怖」「殺人」とかも同様。おばあちゃんが「恐怖の殺人者」見てきたよ!とは言いづらい。子供も同様。残酷な映画だと思えてしまう。だから、文芸調のタイトルにして、誰でも憚らずにタイトルが言えるものを選ぶようにしている。
最近、好評だったのが「19**年」シリーズ。「明日にかける橋」が「1998年の想い出」「向日葵の丘」が「1983年夏」それぞれがサブタイトルである。単に「明日にかける橋」だけでなく「1989年」がつくことで、当時の物語と分かる。その時代を知る人は懐かしいと感じるし、知らない人でもバブル時代。日本が元気だった時代とか想像することができる。
そんな風にタイトルを聞くだけで「ああ、そういう物語ね」と思ってもらうことも大事。そんな風に趣味嗜好だけで選ぶと「これが好き」「これは嫌い」になり結論が出ずらい。そうではなく映画のターゲット。宣伝方法。内容が伝わるか?という観点から考えることが大事なのだ。