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俳優と脚本家の仕事は似ている? それを今、実感中! [映画業界物語]

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「全然違う仕事じゃない?」と思うかもしれない。俳優はカメラの前で演技する仕事。脚本家は撮影前に物語を作る仕事。だが、とても似ていること。以前にも書いた。

まさにそれを今、実感中。そんな話を書く。まず、俳優はシナリオを読み、台詞を覚えるだけでなく、自分が演じる役についてあれこれ考える。

年齢、経歴、出身地、職業、恋愛関係、会社での立場、よき上司なのか? 嫌われているのか? 妻とはうまく行っているのか? 子供はいるのか? いれば親子関係は良好か? 等々。シナリオを読み、それら情報があれば把握。なければ想像する。

一般的に俳優はかっこ良く、或は綺麗な人という印象。演技については「うまい」「下手」とかいうが、本当の意味で演技とは何か?は分かってないことが多い。演技とは何か? その第1歩が先に書いたキャラの想定である。

「そんなことしなくてもいいんじゃない?」

と思う人もいるだろう。が、それがスタート。例えば、中年男性の役。街角で泣いている子供を見る。メインの物語とは直接関係しない。そのときに、どういう顔をするか? ただ、見ているなんてあり得ない。何かを感じるはずだ。もし、妻と別居中で、子供と会えない設定なら「ああ、うちの坊主はどうしてんだろうな...」という顔をするだろう。子供嫌いな役なら「子供って本当に面倒だよな」という表情。

それら設定がシナリオに書かれていればいいが、なければ俳優自身が想像し決めなければならない。シナリオに書かれた部分から想定したその男の経歴。それに当てはめて気持ちを考える。が、その経歴にそれがない場合。俳優自身が考える。

「そうだ。子供に嫌われているオヤジという設定にしよう。あの子くらいのときは仲良かったのに、中学生頃から口も聞かなくなったよなあ...」

その設定で演じる。観客が観たときに「ああ、この男性の悲しそうな顔。いいな。嫌な奴だと思ったけど、子供に対して強い愛を感じているんだ」と感じてくれたりする。それによって、その男性がリアリティを持つ。親近感を感じる。逆に憎しみを感じるのもOK。いずれにしても映画内の世界が広がる。

なので、演じる前には徹底して役の履歴を作る。出身地、小学校、中学、高校、大学。家族構成、家族の履歴。もし、その役が警察官なら、徹底して調べる。階級は? 所属は? 勤務地は? 警察官ならこんなとき、どんな反応をするのか? 日常はどうなのか? 

もし、警察官の友達がいれば根掘り葉掘り質問する。文献を読む。刑事ドラマを見る。いろんな方法で警察組織と警察官を勉強し、それを演技に取り入れる。警察署を訪れる。取材というと拒否されそうなので、何か理由をつけて道を訊くとか...。そうやって俳優は役作りをする。

さて、脚本家だ。例えば戦争映画のシナリオを書く。そのためには、その戦争を知らなければならない。歴史的な経緯、戦場となった町、敵対するそれぞれの国の事情。それらを把握した上で、キャラクターを作る。主人公は日本兵。まだ若い。召集令状を受けて軍に入る。その辺はウソがあってはいけない。ちゃんと調べる。

戦争に行くのは、どんな気持ちなのか? 脚本家自身にそんな経験はない。元兵士に訊く。でも、太平洋戦争に参加した人はもう高齢。亡くなった方の方が多い。文献を読む。ドキュメンタリーを見る。映画を見る。そうやって戦場に行くときの気持ちをを調べて、主人公にそんなリアクションを取らせ、台詞を言わせる。戦場ではどんな行動を取る? どんな気持ちになる? 調べる。戦場だった地を訪れる。

実際にあった戦争の場合は特にそうだが、架空の戦争であってもリアリティを求めるなら、現実を調べることが大事だ。「こんな感じで、勇敢に戦ったんじゃないの〜」と安易な想像で描くと、観客は気付く。知識がなくても気付く。

「何か、違うんじゃない〜」

これは本当に不思議だが、小説でも、シナリオでも、映画でも、調べて事実を元に書いたものは観客を納得させる。逆に、調べずに想像で安易に書くと、客はリアリティを失い、物語に興味をなくす。SFでも、ファンタジーでも同じ。だから、脚本家は調べて書く。

さあ、どうだろう? 俳優が役作りをするのと、脚本家がシナリオを書くのはとても似ていることに気付いただろう。調べる。話を訊く。本を読む。現地を訪れる。そうやって脚本家も俳優も架空の人物を組み立て、現実味を持たせて行くのだ。

脚本家と俳優。やっていることはほぼ同じだ。違うのは脚本家が作り上げた役を俳優はまず把握。書かれたことを理解する。あとは書かれていない部分を想像し、調べて取り入れる。職業等が特殊なものなら、さらに調べる。

つまり、優れた作品を書く脚本家の作品に出れば、よく調べて作られているのでリアルな役を演じることができる。逆に言えば、いい俳優が出てくれれば、書かれた役をさらに膨らませて脚本家が考えていない部分までリアリティを持って演じてくれるのである。

そして両者共に言えるのは、調べるものは調べるが、調べても分からない部分。特に精神的なもの。そこをどうするか?もう想像するしかない。では、どう想像するのか? 自分の体験と知識からイメージすることだ。

だから、寅さんを演じた渥美清さん。元々テキ屋のような仕事をしていたので、当たり役となった。武田鉄矢さん。教師になろうと、教生をやったことがある。そんな経験が生きてリアリティある親近感持てる役が生まれた。

シナリオライターの場合。映画ファンで、大学を出て、すぐに脚本家になった場合(普通はそんな簡単に行かないが)経験値が少ないので、いいものを書き続けるのがむずかしい。といっていろんな経験を散々してからだと、脚本家になるチャンスを逃してしまう。これは俳優にも言えること。難しい部分だ。が、最後にものをいうのは、いずれも「見る目」である。

兵士の役を書いたり、演じたりするのであれば、仕事内容や生活を知った上で、人としての思い、喜び、悲しみを見つめることができないと、演じることも、書くこともできない。観客を納得させ、感動させることはできない。

今、僕はある戦争について勉強している。ドキュメンタリーだが、最初にやらねばならないのは、戦争の経緯を知り、戦場の事実を把握。そして、巻き込まれた人たちの思いがいかなるものであったのか? を知ること。

その時代を想像し、イメージし、自分の体験のようになるまで、調べることだと思っている。情報ではいけない。体験にしないと、観客の心に伝わるものは作れない。俳優も脚本家も同じである。



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