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大手映画会社に騙されるのに、頑張るスタッフを批判する地方の人たち? [地方映画の力!]

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映画界の価値観やルール、本当に理解されずらい=大手映画会社に騙されるのに、本当に頑張るスタッフを批判する地方の人たち?

地方で映画を作るときは地元の方々と共同作業。あるいは映像関係の仕事をしたことのない会社から依頼を頂くこともある。そんなとき、難しいのは映画作りの方法論や価値観が理解されないことだ。簡単にいうと、資本主義と共産主義の人間が一緒に法律を作るような、キリスト教とイスラム教の人が一緒に料理するようなものだ。

価値観やルールが違うので揉める。ただ、映画製作なので映画界のルールでやるべきで、そこに建設会社の方法論や居酒屋チェーンの価値観を持ち込んでもうまく行かない。なのに、いろんな人がそれぞれの世界のルールや価値観を持ち込もうとする。そこがまずトラブルの原因となる。

一番理解されないのは予算。例えば映画を作る最低予算は3000万円ほど。もちろん、今時は500万という映画もあるが、それでは専門学校の実習レベルの作品しかできない。ただ、今時はそんなものでも映画館に掛かってしまい「映画」と言われる。それらを除外すれば、まともな映画はやはり3000万円が最低線。企業映画は最低1億円。

ただ、映画業界でない人に3000万で何ができるか? 想像できない。できないのにも関わらず地方映画製作時に地元の声を聞くと、

「映画を撮るのなら主役はやはり高倉健だよなあ!」

「綺麗どころの女優をズラーーと並べたいよね!」

そんなことを地元の実行委員が笑顔で言う。冗談?と思ったが、マジだった。3000万なんてテレビの深夜ドラマ・レベルと思ってもらうのが正解。2時間ドラマだって3000万ではできない。ゴールデンに放送している観光旅行をしながら、犯人を探す?あの手の中身のないドラマでも最低5000万はかかる。銃撃戦もない。カーチェイスもない。特撮もない。オールスターキャストでもない。有名俳優は1〜2人。それなりのものは7000万以上かける。

健さんのギャラは1本で数千万円。3000万だとギャラにさえならない。地元の方が悪いのではない。それくらいに映画業界のことは分からない、知らないと言うこと。だから、3000万でスタッフが懸命に努力して、超安いギャラで、かなりいい映画を作っても、地元の方は

「3000万あれば、このくらいの映画ができるんだな?」

としか思わない。本来、ギャラ以上の仕事をしたスタッフに感謝すべきところなのに、当たり前に思う。それどころか、

「3000万も使ってこの程度しかできないのか? 製作費抜いてんなあ....」

「3000万も払ったんだから、監督は数百万のギャラを取っているんだろうな? 感謝してもらわないとな!」

が、3000万の映画で監督のギャラなんて、本当にわずか。1年働いてもサラリーマンの初任給1ヶ月分ほど、が多い。それでも監督やスタッフは「いい映画が作りたい!」と言う思いがある人が多いので、頑張り、低賃金で働いてしまう。それが地元には伝わらず、疑われたり、感謝を求めて来られたりする。

逆のケースもある。ある地方映画。7000万円の製作費。地元自治体が捻出した。それなりに有名な製作会社が担当。でも、3000万で製作。4000万を自社の利益にしてしまった。にも関わらず、地元の人は

「街のために頑張ってくれて感謝している...」

と疑う人はいなかった。製作費の20%ほどを手数料として引くのは業界的にもオーケーだが、半分以上を抜くのは阿漕。犯罪に近い。が、地元の人は誰も気づかない。その上、手弁当で撮影を手伝ったと言う。大手の会社だと地方の人は両手を上げて信頼してしまう。逆に小さなプロダクションが利益なしで、頑張っても、あらぬ疑いをかけたり、撮らせてやったと態度をする人がいる。

それらも全て「映画業界が分からない」ことが原因。3000万というと個人には凄い額だが、映画製作からいうと本当に厳しい、何もできないに等しい低予算なのだ。そこからスタッフが努力して、7000万クラスのことをやっても「3000万だとこのくらいのことができるんだな」と努力が理解されない。また、真面目な監督やPはそれを恩着せがましく言わないから、地元は誤解したまま。むしろ、悪徳Pが7000万から4000万抜いて製作

「映画は本当に金がかかります。7000万ではこのくらいの映画です」

という方が、理解され、感謝される。と書いていて気づく。あれ? お年寄りを狙った羽毛布団の詐欺も、そんな感じじゃないかな? 高いものを安くするといい、安いものを売り付ける。同じ構図だ。映画も、知名度のある企業、映画会社だと地元の人はすぐ信じてしまう。

そんなことがあるから、僕が映画を作るときは地元でレクチャーを何度もする。理解してもらい、現状を分かってもらう。が、なかなか分かりづらいこともある。あまりに身の丈以上のことを要求するので「だったら止めよう!」と言いたくなった街もある。が、それとは違い猛勉強して頑張ってくれたのが「明日にかける橋」の実行委員。ありがたかった。

何事も同じ。商売でも、観光でも、政治でも、自分たちの価値観やルールを別の業界に押し付けても揉めるだけ。勝手な想像をして期待。外れたら「騙された!」と怒る。でも、その前にその世界を知ること。その上で自分たちの経験や新鮮な発想。「地元ならでは利点を活かせないか?」考えること。それが新しい何かをスタートさせる秘訣なのだ。


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