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監督の作品を見ないでオーディションに参加する若き女優たち? [7月ー2017]

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「向日葵」も「青い空」も見ないでオーディションに参加する若き女優たち?

 先日、東京オーディションを行なった。こちらは東京にあるプロ俳優の事務所多数に連絡。こちらの希望するタイプの俳優を送り出してもらい、オーディションするというもの。その中から、主人公の高校時代。親友。弟。彼氏の4人を選ぶというもの。

 高校時代の主人公は「向日葵」でいうところの芳根京子と同じ存在だ。彼女も今回と同じようなオーディションに来てくれて選んだ。そして常盤貴子さんの高校時代を演じてもらった訳だが、今回も主人公を演じるある有名女優(今週中に発表)の高校時代を演じてもらう。

 芳根と同じように単なる高校時代の回想出演ではなく、ほぼ主演という大きな役だ。それだけに慎重に選ばねばならない。つまり、第二の芳根京子を探せオーディションと言える。芳根も「向日葵」のあと大ブレイク。NHKの連ドラ「べっぴんさん」で主演を演じるようになった。今回の子も彼女に負けない素晴らしい素質を持つ子。選びたい。

 その役のオーディションには100人ほどの現役の女子高生たちが参加してくれた。審査は台詞読みだけでなく自己紹介やあれこれ質問をする。ロケ地のひとつ静岡県の袋井市で行なった市民俳優オーディションも同じスタイルで行なったが、プロの俳優たちへも同じようにあれこれ聞いた。好きな映画。目指している女優。好きな音楽。これまでの経験....あれこれ聞いていて、こんな質問をした。

 「僕が監督した作品で、何か見たものはありますか?」

 驚く事に多くが「見ていません」と恥ずかしそうに答える。或は「しまった」という表情になる。ということは「見ておけばよかった!」と感じているのだ。でも、見ないで来てしまった。以前は僕の作品。ほとんどがDVDになっていなかったので見ることはできなかったが、今は「青い青い空」「朝日のあたる家」「向日葵の丘」が全国のTSUTAYAでレンタルされている。置かれてない店はたまにあるが、隣町のTSUTAYAを探せばすぐに見つかるだろう。

 なのに、見ないで来ている子が多かった。オーディションを受けるとき基本、監督の名前は伝えられる。スマホで検索して「どんな監督か?」調べることができる。過去の作品もすぐ分かる。あとはTSUTAYAに行くだけだ。作品を見れば、その監督がよく分かる。どんなタイプの映画を作り、どんなタイプの俳優を好むのか? どんな演技を求めているのか? ありとあらゆる情報が詰まっている。

 にも関わらず、多くの女の子たちはDVDを見ないでオーディションに参加しているのである。もし、事前に監督作品を見ることに意味がないと思っていれば、「何か見た?」と聞いたときに「しまった」という顔はしないだろう。つまり、「見なくても大丈夫。そこまでしなくてもいい」という思いで参加しているのだ。

 しかし、中には事前に送ってある台詞。(シナリオ全部でなく高校時代の主人公の台詞を一部抜き出したもの)を完全に暗記して来ている子たちもいた。努力家だ。やる気も感じる。にも関わらず、僕の過去の作品は見て来ない。なぜなのか? 感じたのは事務所から「台詞は暗記していけ」と言われたが「監督の過去の作品をチェックしろ」とは言われていないからだろう。

 だから見ないで来た。でも、見ておいた方がいいという意識はある。なのに、特に言われないから「まあ、いいや〜」と台詞だけ覚えて来た。その段階で俳優ではない。言われたことだけするのは会社員だ。或は言われたこと以外をやると、マイナスになりがちなお役所の仕事。俳優というのは、あれこれ考えて、監督が何を求めているのか? その作品はどんなスタイルなのか? どんなテイストなのか?をあれこれ考えて、それに答える芝居をする仕事なのだ。

 それが監督の過去の作品も見ずに来る。やる気が感じられないーと判断するしかない。言われたことしかできない人たちだと思われても仕方ない。「太田監督の映画に出ていた**さん(有名女優)が目標です」ーという女の子もいた。が、その映画を見ていない。YouTubeで予告篇は見たというが、だったらなぜTSUTAYAに行かない?

 これは僕の映画を見ないということが失礼という話ではない。大林宣彦監督の映画のオーディションに行くなら大林映画をできる限り見るべきだし、三谷幸喜監督のオーディションなら三谷作品をテレビドラマを含め見てから受けるべきなのだ。ま、そこまでしない子が多いというのは、以前からキャスティング担当者から聞いてはいたが.....、

 オーディションをしながら、あまりにも僕の過去の映画を見た子が少ないので、最初にその質問をして「見てません!」と答えたら「はい、結構です! 次の方〜」と言ってやろうか?とも思ったが、途中からその質問をしないことにした。だんだん、空しくなって来た。それが後半に入った頃。ある15歳の女の子が自己紹介でこういった。

 「私は今日のオーディションがあるので、太田監督の過去の作品を調べて『向日葵の丘』を見ました。芳根京子さんが映画作ったのにお父さんに止められるシーンが心に残りました」

 と自分から言い出したのだ。それも「見た」ことをアピールするのではなく、もの凄く感じるものがあったので、僕に伝えたいという感じだった。感想を聞いていて思ったのは、その子は「向日葵」を見て、主人公の高校時代に強く共感して、物語を見つめた。「がんばってほしい!」と思いながら見ていたのに、お父さんのために上映できなくなる。その部分に憤りを感じたようなのだ。

 その子が日頃感じていること。その子の思いが伝わって来た。芝居も結構できるし、最終候補に残すことにした。繰り返し書くが、その子が僕の作品を見ていたから好印象なのではない。「何を求められているか?」を知るために、その監督の作品を見た。「どんな映画を作る監督なんだろう?」と好奇心を持ったということを評価するべきなのだ。

 台詞は覚えて来たが、監督の映画は見ていないーというのは、仕事なら何でもいい。映画に出演できればOK。どんな監督でもいいということ。「この監督の映画に出たい!」と思い、オーディションに来る子とは雲泥の差。就職の面談でも同じ。「この会社で働きたい!」という人と、「どこでもいいから就職したい」というのは大きな違いがある。

 自分が就職したい会社の業績や商品を知らずに面接を受ける人はいないだろう。映画も同じ。そんなことを感じつつ。9時間に及ぶ審査は終了。現在、最終候補を絞るべく、ビデオやプロフィールを見直している。




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