仲良しクラブでは素晴らしい映画はできない。会社員に理解しづらい映画製作の現場? [映画業界物語]
仲良しクラブでは素晴らしい映画はできない。会社員に理解しづらい映画製作の現場?
映画製作では監督がスタッフ&キャストを集める。と話すと、こんなことを言う人がいる。
「気の合う人や友達を集めてやるってことだね。それお友達内閣と同じ。気楽でいいね〜」
大抵は会社員がそういう。背景にあるのは会社。どこでも嫌な同僚や分からず屋の上司がいる。そんな人とも仲良くし、頑張るのが仕事だと言う概念がある。それは分かるが、だからこそ本来やるべき作業が分からず屋の上司のせいできなくなったり、嫌な同僚のために時間がかかったりはしていないか?
そんな環境の中で頑張ることは大変なことだが、本来は環境を変え、無駄のないスピーディーな仕事ができるようにすることが大事なはず。でも、社員に環境作りはできない。だから分からず屋の上司や気の合わない同僚と我慢して仕事をする事が「仕事」であり、気の合う人や友達と仕事をするのは「趣味」や「サークル」なのだ。と思い、当て外れな批判をした。和気藹々と楽しく仕事をすると想像してしまったのだ。
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映画製作ではスタッフ集めから始まる。気の合う人たちを呼ぶ。会社ではない。わざわざ気の合わないやつを呼ぶ必要はない。僕のやり方を理解してくれている人に依頼する。その方が仕事が早い。本来なら3時間説明せねばならないところが3分で済む。あれこれ語らなくても、分かってくれる。異論を唱えたり、別の方法論を押し付けてくる奴がいては時間がかかるばかり。
映画は時間との戦いだ。今の時代は黒澤明監督のように何ヶ月も粘って撮影できない。そのためには気の合う、そして優秀なスタッフが必要。だが、当初はそれが分からない。撮影が始めると性格が激変する人。日頃は温厚だが撮影だと古い価値観を押し付ける人。いい奴だが仕事が遅い。人間性とは別に様々な問題がある。
その人たちが長年の付き合いであることもあった。友人として付き合っている場合もあった。降ろすとプライベートにも影響する。かなり悩んだが、決めた。長い付き合いでも、友人であっても、問題がある人は次から依頼しない。プライベートでも交流はやめる。
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制作費を誤魔化す。嘘をつく。女優にちょっかいを出す。すぐ怒鳴る。実力以上の評価を求める。ギャラで文句をいう。それらも全てアウト。次から呼ばない。若い女優にメルアドを聞きたがる若いスタッフもいるが、それもアウト。そのことで女優が演技に集中できなくなる。
俳優でも、女優にやたら近づく人は注意。撮影中に別の仕事に行く者も要注意。多くの仕事の一つと思うなら他を優先してほしい。スタッフ&キャストに厳しいだけではない。監督自身が一番、自分を律することが大事だ。俳優とは仕事以外では極力会わない。距離が縮まり馴れ合いにならないように。スタッフとも意味なく飲み会をしない。プライベートではなるべく会わない。
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「でも、監督って女優と結婚するんじゃない? 若い女優連れて飲みに行ったりするんでしょう?」
よく言われるが、僕は俳優とプライベートでは会わないし、友達付き合いはしない。仲良くなると現場で甘えが出るから。演技がうまく行かなくても「監督は分かってくれるはず...」と思うようになる。以前に面倒を見ていた若手たちがそうなった。映画学校に行くと「監督になると女優と付き合えますか?」と聞かれるが、僕は絶対に女優を彼女にはしない(というか向こうが嫌がる?)甘えが生まれる関係は全てアウトなのだ。
大事なのは気の合う、優秀な人たちと、仕事をすること。仲良しクラブではなく、プライベートには線を引き、ミスや甘えは絶対に許さないこと。そこが素晴らしい映画を作ることが出来る現場となる。
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