18歳の時に観た「さらば青春の光」を58歳で見直して分かったこと、 [映画感想]
18歳の時に観た「さらば青春の光」を58歳で見直して分かったこと、
1980年、なぜ、僕は2日続けてこの映画を映画館で観たのか? 原作であるThe Whoの2枚組アルバム「四重人格」を何度も繰り返し聴いた理由が分かった。
今振り返ると、主人公ジミーの境遇に物凄く共感したのだと思う。共感どころではなかった。「これは僕だ!」と思ったのだろう。この映画の公開から3年後に登場する尾崎豊の歌を聴いた時のような思いだった。
「僕も同じ気持ちだ....」
そんな感じだった。当時、ローリングストーンズやビートルズは聴いていたが、三大バンドの一つ、The Whoだけは日本で人気がイマイチ。知らない人が多い。また、当時Whoは日本でライブをしたことがなく、実現するのは1990年代に入ってからだ。
しかし、そのThe Whoの歌は当時のイギリス、そしてアメリカの若者の共感を集めて大ヒット。10代の葛藤を歌ったものだった。その歌詞に共感するのは日本でも同じ。その彼らのアルバムを映画化したのだから、10代の僕は共感しないはずはない。
当時のイギリスの若者たち。
ドラッグと、SEXと、暴力と、米軍の放出コートを着てベスパにまたがり、仲間が集まり、強がって見る。パーティで酒を飲んで踊り、街を暴走する。そんな彼らは学歴もなく、安い賃金のどうでもいい仕事をしている。親から理解されず、大人たちから批判されてばかり。仲間とバカをしている時だけが、惨めな自分を忘れ、俺たちは特別だと思える。
しかし、彼らは同じ境遇のロッカーズと抗争。本当の敵が見えないでいる。主人公ジミーがシャワールームで再会した友人。服を着れば親友は黒い革ジャンのロッカーズと分かる。裸になれば皆、同じであり、友と昔と同じように接することができるのに、服を着ただけで敵味方。ドラッグで自分をごまかし、大人にダマされて、ブライトン(地名)では逮捕される。
そこからジミーはさらなる転落。
やっと手に入れた彼女を仲間に奪われ、仕事を無くし、親から縁を切られる。真剣な恋だと思った彼女が遊びだと分かり、大切なベスパも壊れてしまう。そして、憧れのエース(演じるはあのスティング!)の正体を知り全てに絶望する。そこに再び、18歳の僕は自身を重ねたのだろう。親も、教師も、同級生も、誰にも理解されなかった10代の自分。The Whoの大ヒット曲「マイゼネレーション」はこんな歌詞だ。
「みんなが俺たちをダメにしようとしている
なぜなら、俺たちが面倒を起こすからさ
俺たちは年取る前に死にたいぜ」
映画のオープニングで流れる「real Me」の一節はこうだ。
「あんたは本当の俺が見えているのかい?」
医者に、母に、父にそう問いかける歌詞だ。高校卒業の翌日に名画座で観たこの映画。主人公のジミーはすでに社会人になり働いているが、僕自身の高校時代があまりにもダブった。映画とロックが好きなだけの無力な18歳。大学に行くのも拒否。誰もが「無理だ」と否定する映画監督を目指して横浜に旅立つ直前だった。また、別の機会に続きを書く。
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