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ベテラン俳優たちから学んだこと。いつも命懸けで演じる? [映画業界物語]

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ベテラン俳優たちから学んだこと。いつも命懸けで演じる?

僕の映画。大手映画会社の資本で作ったものはない。何より僕自身が知名度のある大監督ではない。にも関わらず、毎回、第1線で活躍する国民的俳優、人気俳優が数多く出演してくれる。本当にありがたい。そんな俳優たちとは仕事をして、毎回、教えられることが多い。

あるベテラン俳優。テレビや映画で大活躍。日本人で彼の顔を知らない人はいないだろう。その人が出演してくれることになった。が、忙しい人だ。きっと、パターンの演技で来ると思えた。テレビドラマでも、彼は時々、パターンでこなしている。もちろん、数多くの作品に出ているので、その全てを全力では演じられないだろう。最初にお会する時に彼はこういうと思った。

「どーも、どーも、ま、楽しくやりましょう!」

肩の力を抜いて、リラックスして仕事をこなそう!という感じで来ると思った。僕の作品は大手映画会社やテレビ局が作る大作映画ではない。俳優にとってメリットは少ない。いや、国民的な俳優に出てもらえるだけでも、こちらは感謝だ。でも、予想に反して彼はこういった。

「私は演技に命を賭けています。まず、自由にやらせてください。それで違うところがあったら、言ってください」

僕のような若輩監督に対して、ベテラン俳優は丁寧に挨拶し、そう語った。上からものを言うことなく、真剣な思いを感じる。何より「命を賭けていますから」なんて、なかなか言えない。本当に思っていてもテレが出てしまう。それもベテランだ。でも、それを敢えていうところに決意が伝わってきた。

もし、新人が言えば、ある意味で眉唾な気がするだろう。技術も経験もないのだから、命を賭けるしかないとも思える。が、演技力も長年の経験もあるベテランが命を賭けるというのは、どういうことなのか? 答えは次第に分かってくる。

彼は徹底したこだわりを見せた。衣装、小道具、うるさいほどにこだわった。そして撮影。僕があれこれ言うレベルではなかった。本人があれこれ考えて、演じてくれる。ああ、そう言う動きをすれば、よりセリフが生きる!とか、その仕草に思いが出るな!とか、見ていて感心するばかり。

撮影までの間。彼はその場面の芝居を延々と考え続けていたのだろう。撮影が終わり、最後にメイン俳優紹介のための集合写真を撮った。全員笑顔。その中で彼だけが難しい顔。気に入らないことがあったのか? いや、違う。紹介写真でも役を演じていたのだ。気難しい、その親父の役を。

「パターンでこなすと思っていたのに全然違った。それこそ全力で命懸けで演じてくれた」

そう話すと先輩は答えた。

「あの人はいつでも全力だよ。絶対に手抜きしない。お前が見てパターンだと思ったテレビドラマも、物語のタッチに合わせた軽めの演技が相応しいと考えたんだろう。手抜きじゃないんだよ」

今はそれが分かる。だからこそ、第1線で、何十年も活躍して来れたのだと痛感する。若い俳優はいう。

「俺、本気出してませんから。こんな仕事、全力ではやりませんよ」

俺が本気出せば凄いんだ。と言いたいのだろう。ベテランが命懸けで演じ、若手が仕事に合わせて手を抜く。だが、あのベテラン俳優は若い頃からいつも全力投球だったのではないか? いや、そのはず。他にもご一緒したベテランたち。皆、全力投球だった。監督が若いから、ギャラが安いから、低予算映画だから。と手を抜いた人はいない。毎回、ベテランたちからは、いろんなことを教えられる。


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