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「明日にかける橋」編集日記ー映画の要はセンスだ? [「明日」編集]

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ある業界の人がこんなことを言ってくれた。

「太田監督の映画。魅力はどこかというと間が素晴らしいんだ。あのセンスは他の日本映画ではない。自分の世代で言えば漫画の『タッチ』あれは単なる野球漫画ではなく、会話の間の取り方が素晴らしい。そこで無言になるか? そこで会話を終わらせるか?という間の取り方が魅力だった。それと同じものを感じる」

「タッチ」かあ。一応読んではいたが、あだち充とか高橋留美子(めぞん一刻)はそれまでの漫画と違うセンスがあった。あの時代大人気で僕のまわりでも誰もが読んでいた漫画。ただ、好きか?と言われると、それほどでもなかったのだが、確かに「間」や「センス」は大事だ。編集時にも一番考える部分である。

どうしても男性は派手なアクションが好きで無骨な人が多い、センスにこだわる人が少ない。そんな中、先の人はかなり鋭い感性を持っている人だと思える。逆に女性はセンスに敏感。だからファッションにこだわる。家具や食器。アクセサリーや小物にも注意を払う。男なら暖かければいいというコートでも、女性はそのデザインや生地にもこだわりを見せる。

国で考えても違いがある。アメリカ映画。特にハリウッドは男性的。これでもかーという金のかけたアクションものが多いが、センスはあまりよくない。その点、ヨーロッパ映画を見ると、抜群にいいセンスの監督が多くいる。ただ、ハリウッドでもヨーロツパ系、イタリア系の監督はこだわりを感じる。フランシス・コッポラの「ゴッドファーザー」シリーズは単なるギャングものでなく、そのセンスも素晴らしかった。

「PARTⅡ」のエンディング。兄フレドーが湖畔に浮かぶ小舟で撃たれるシーン。それを豪邸で銃声だけを聞くマイケル。そして回想。エンディング。ニーノ・ロータのテーマミュージックと、絵画を見るような美しさとセンスある場面だった。

M・ナイト・シャマラン監督もホラー的な存在と思われがちだが、鋭いセンスを感じる。特に「サイン」のこれもラストシーンは素晴らしい。事件が終わって、それを建物の2階から主人公たちを写している。そのままパーンして隣の部屋へ。そこで着替えをしている主人公のメル・ギブソン。その服で全てを観客は理解する。この説明だけでは分からないと思うが、本当にーーー凄い!打ちのめされた。彼もアメリカ人ではなくインド人。

日本でいうと、あまり言われないが一時期の北野武作品のセンスはもの凄かった。彼もまた暴力的な映画が多く、センスがあるとは思われにくい作家だが、「ソナチネ」「キッズリターン」「HANA-BI」「Brother」とセンス全開の作品群。特に「HANA-BI」のエンディングなど本当に素晴らしい。「参りましたー」という感じだった。ベネチア映画祭の受賞も納得。ヨーロッパ映画のセンスだ。

そう考えていくとセンスある映画に好きなものが多い、「太陽がいっぱい」「愛の嵐」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「冒険者たち」「大人は判ってくれない」「わが青春のフローレンス」「アデルの恋の物語」ーみんなヨーロッパ映画だけど。その辺はハリウッドも敵わない。そんな映画を見て育ったせいか? センスには拘っているのかもしれない。

ただ、センスは言葉で説明できない。ここで5秒の間を取ってから次の台詞ーーーとかいうと「さっさとしゃべった方がいいんじゃない?」と言い出す人が必ずいるー往々にしてその種の人は無神経な人が多いのだがーまた5秒の意味を言葉で伝えることはできない。多数決でも決められない。それがセンスというもの。だから、初期の北野映画は日本ではヒットせず、なかなか評価されなかった。

そして鋭いセンスの映画を見た観客は「センスいいなあー」とは思わず「何か凄かったなあ」と感じるので、その作品のセンスの良さに気付かないことが多い。とても難しいのだが、そのセンスというのは編集に寄るところが大きい。だから、会話と会話の間。そして、どこで風景ショットを入れるか?その辺が大きな鍵となる。「え?風景がセンス」と思う人もいると思うが、その辺はまた別の機会に! 編集に戻る。


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