明日にかける橋ー編集日記 編集作業ってイタコの霊媒師? [「明日」編集]
明日にかける橋ー編集日記 編集作業ってイタコの霊媒師?
主人公の高校シーン素材が到着。参加してくれた多くの市民俳優が鮮明に映し出されている。藤田朋子さん演じる化学教師が授業をする場面。かなり楽しい撮影だった。早く編集を開始したいのだが、なかなかそうもいかない。
この話もまた理解されにくいが「映画監督とはそんな人種なんだ〜」と思ってもらえればいいので書く。が、必ず「***監督はそうではありませんが?」とコメントしてくる奴もいるので補足すると、いろんなタイプの監督がいる訳で、僕自身のやり方、方法論だと思って読んでほしい。
多くの監督はシナリオを書かない。そして脚本家で監督する人も多くはない。というのは、それぞれに資質や体質が違うからだ。監督は現場にいるスタッフ・キャストを仕切る仕事があり、団体戦。体力勝負の一面もある。それに対してシナリオは個人戦。想像力や表現力。紙の上に文章で世界を構築する。
そんな訳でその両方をしている僕は、そのたびに神経が切れそうな思いをする。撮影前にはテンションを上げて元気に行かねばならないが、シナリオ、そして編集のときは精神世界に入り込むように内に籠り、机に向かう地味な作業を何ヶ月も続ける。全く違う仕事でありアプローチに仕方が完全に違うのだが、それを説明するのは難しい。
例えば製作会社に行けば、広い事務所の端に置かれた編集機で友人監督が作業している。僕が来たことを知ると「あーどーもー」と声をかけてくれる。「今、****ってホラーものやってんだけど、製作費ないんでさーー」とか話かけてくる。僕がPと打ち合わせをすませ帰るときも、同僚と世間話をしながら編集機を操作。「ま、こんなもんだよね〜」と笑顔を見せる監督もいる。
僕には真似できない。いつも外部との接触を遮断して、メールも電話も止めて1人で編集する。そこで電話に出て声を出してしまうと、その日1日作業ができなくなる。メールも「今、出して来る必要があるのか!」と言いたくなる(先方は編集中と知らないので何の罪もないのだけど)そんなものが来ると、些細なことでもイラつき作業が遅くなる。
要はもの凄い集中力で作業するので、それを阻害するものがあると大きなダメージを受けるのだろう。その集中力はちょっとしたことで削がれてしまい、また同じレベルに戻すのにはかなりな時間が必要。にも関わらず、作業中に何度も電話がかかって来て電話線を引き抜いたことがあった(携帯のない時代です)分かりやすくいうと(?)シナリオ執筆や編集というのは物語の中に入り込む作業。分かりにくくいうと(!)霊媒師が霊を呼ぶようなもの。
力石徹が減量したとき(「あしたのジョー」です)のように、部屋に閉じこもり、打倒、矢吹丈を目指し、ひたすらボクシングの練習をする。そんなふうに究極の状態にして、自分を追い込む。編集作業も同じ。ただ、日常に戻れなくなり、人と会話がし辛い、それ以前に言葉が出なくなる。無理に話すと今度は編集ができなくなる。だから、編集中は人と会わない。買い物も会話せずに済むコンビニとか。
もし、僕がコンピュータープログラマーのような仕事をしていて、引きこもりのような性格で、内気で、日頃からおとなしければ、そんな状態も理解されやすいだろう。それが日頃から人の3倍しゃべり、明るく、能天気なタイプなので、その変貌が想像できないようだ。だから、初期の頃は「編集!」といっても「調子どう?」とかPが何度も連絡してきた。
それがどれだけ邪魔になるか?それ以後、関係者には編集開始宣言をしたら電話は止めてもらい、急ぎのことだけ、メールで伝えるようにお願いしている。てなことをブログで以前書いたら、先にも紹介したように「もし、友達が大変なことになり、助けを求めて来たらどうするの?」とコメントしてきた女性がいたが、なぜ、スタッフでもない人がアレコレ言いたがるのだろう?
今はもう、そんなコメントは来ないが、それが僕のやり方。いろんな方法論があり、いろんな監督、或は編集者のスタイルがあると思うが、10代からあれこれ試して、一番自分に合った形にたどり着いた。毎回、編集は評判いい。だが、今回はまだスタートできない。いろいろ、それまでにやるべきことがある。デスクワークがかなり残っている。それを片付けてから編集。そこまでは素材を整理して、映像を確認。その種の作業を続ける。
2017-10-05 10:56
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