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映画監督って撮影後はどんな仕事をするの? 太田組の場合 [地方映画の力!]

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一般の感覚では映画監督というと撮影現場で偉そうに怒鳴っている人という印象だろう。黒澤明のメイキング映像とか見ると、そう思えてしまう。が、それは監督業の一部に過ぎない。それも怒鳴るのが仕事ではなく、自分がイメージする芝居を要求しているのだ。撮影というのは、監督がイメージする芝居。照明。撮影が大事。

そのあとは何をするか? 通常の監督なら、しばらく休息。編集担当者が撮影した素材を編集。ある程度繋がったら監督に見せて、あれこれ指示を受けイメージと違う部分を直す。そんな作業を繰り返し、編集作業が終わったら、音楽。これも音楽家に監督がイメージを伝え、作曲してもらう。できたらそれをスタジオで映像に付けて行く。細かい作業は他にもあるが、こうして完成。これが通常の監督業。

だが、太田組ー僕の場合はかなり違う。撮影が終わったら、まず、あと片付け。撮影時の領収書を清算。撮影以前にかかった経費を全て計算し、何にいくら使ったか?を記録。決算書類を作る。撮影時の経費はアソシエイト・プロデュサーが担当し、全て計算して書類にし、赤字はいくらか?出してくれる。(赤字分は毎回、監督料から差し引き補填する)が、撮影前の費用は全て僕が管理。担当するので、自身で計算。領収書整理をして書類を作る。これに何日もかかる。

同時に撮影現場で撮られたスチール写真。数千枚あるものを全て見て、その中から宣伝、チラシ、パンフレット等に使うものを数百枚選ぶ。これがまた大変な作業でかなりかかる。それを各俳優事務所にまわして、OKをもらったもののみを宣伝で使う。俳優の肖像権は全て事務所が管理している。現場で撮ったスナップでも全て許可を得なければ使うことはできない。

そしてスタッフに請求書を出してもらう。ギャラである。今回30人分くらいのスタッフの人件費は全て僕宛に送ってもらい、今月末にある委員会からの入金から事前に決めた額を銀行から振り込む。その際に法律に従い事前に源泉徴収。10.21%を引き、財務局に払わなければならない。これが面倒。その上で、各スタッフ1人1人の銀行口座に振込をする。

あと、撮影中に起こった事故とか忘れ物。失くし物。苦情。相談にもA・プロデュサーと共に対応する。いろいろあるのは、僕自身もプロデュサーを兼ねているからだ。以前に参加した映画で製作費、特にギャラを担当するプロデュサーが誤摩化しをしたり、中抜きをすることが頻発。それも製作会社ぐるみ。悪辣な人がやたらにいた。映画界でトラブルを起こすのは必ずプロデュサーと思えるほど。


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約束した額をスタッフに払わない。通常以上の手数料を抜く。一生懸命なスタッフにあとからギャラの値下げを頼む。或は支払い拒否をする。経費を払わない。僕も散々そんな目に遭った。自分の作品ではそれはさせまい!と今は製作会社には依頼せず、プロデュサーも自身で担当することにした。

そして今回のような市民映画の場合はプロダクション手数料を頂かない。その分を現場にまわす。そんなふうに手数料0円で映画制作を請け負ってくれる会社なんてないので、あれこれ仕事ー製作費の配分とか、業者とのやり取りも僕がせねばならず、おまけにプロデュサー料はもらわないので、忙しくなる上に収入は減るが、誤摩化しをするPを入れないためには必要なのだ。

それらの仕事が終わらない内に編集作業がスタートする。約3ヶ月ほど編集室に籠もり作業する。これが何より大変だが、それは別の機会に書く。

同時に、地元上映会。東京公開。全国公開の準備も始めねばならない。作品をどのように宣伝するか? どのようなイメージのポスターやチラシを作り、どんな形でアピールするか? 予算をどう使うか?等。いろんな戦略が必要。テレビで大宣伝しても映画館にはなかなか客が来ない時代。今回も大掛かりな宣伝は無理なので、どうんな方向性を打ち出すか?配給会社と相談する。

こんなふうに僕の場合は監督業以外の仕事も担当している。そのことで人件費の削減もできるし、誤摩化しや暴走も止められる。映画は企画から完成ー公開まで一環した方向で進めなければならない。出来たものを業者にポンと渡しても、先方は愛情はなく、商品のひとつしか考えない。宣伝費も無駄使いする。だから、映画業界では監督が最後の最後まで立ち会い(その段のギャラは出ない)あれこれ確認。宣伝や配給は監督の承認を取る。僕の場合は自分が中心となって宣伝活動を進める。舞台挨拶の演出も担当する。

宣伝と言えば、すでにスタートしているが、Facebook、ブログ、Twitterによる映画宣伝である。通常は映画公開の数週前からしか監督たちは情報発信をしないが、僕は撮影前からスタート。DVD発売まで続ける。今回は大企業や映画会社が作る大作映画ではない。映画のタイトルを知ってもらうことは大変。だからこそ、個人のFacebookで1−2週間。書いただけでは知名度は上がらない。それなら時間をかけ、月日をかけ、ネットで長期間発信することで、より多くの人に映画の存在を知ってもらえる。

また、映画をサポートしてもらった人。参加、出演、応援してもらった人たちへの報告でもある。現場にいても知り得ない事実。感動的な逸話等もある。それを記事にすることで、それらの人にも喜んでもらったり、同様に宣伝に協力してもらえるようにするためにも、毎日の発信が大事。こうして結果、7人分ほどの仕事をすることになる。これが太田組の監督業。いろいろせねばならないことは山積みだが、編集作業がスタートすればしばらく専念せねば。


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