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監督業とはどんな仕事をするのか?記事が好評。続きを掲載 [映画業界物語]

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こんな声が届いた。「驚いた。監督ってこんな仕事するんだ」「意外だった」「大変だな〜」ということで、もう少し書いてみる。

世間では映画監督というと「撮影現場で偉そうにして、怒鳴っている人」という印象が強いようだ。それは黒澤明監督のイメージ。まあ、そんなタイプの監督は少なくなって来たが井筒和幸監督はその種のタイプと聞く。が、今時の監督は結構おとなしい。

よく言われるのは「映画監督は金持ち」これは明らかにハズレ。ハリウッドの映画監督をイメージしているのだろう。考えてほしい。日本人は年に1本しか映画を見ない国民。おまけに映画が大ヒットして10億円稼いでも監督には1円も入らない。アメリカとはシステムが違う。日本は監督が儲からないようなシステム。だから、ほとんどの監督は貧しい。

例えば監督料を200万円もらっても1年がかりだと、1ヶ月20万円弱となる。大卒サラリーマンよりも安い。その上、毎年映画を撮れる監督はごくわずか!副業をやらないと生活ができないのが映画監督。ちなみに日本映画で監督だけで食えるのは5人ほどと言われる。あの人と、あの人と。。。映画ファンなら名前は分かるだろう。

さて、今回はスタッフ集めの話を書く。監督にとって最も大切な仕事のひとつだ。仕事依頼が監督に来るとスタッフ集めをする。優秀なスタッフを集めないといい映画は撮れない。監督がいくらがんばってもスタッフが優秀でないと、素晴らしい作品は撮れない。ただ、映画界は黒澤組とか、大林組とかいって監督を長とした気心が知れた常連スタッフがいることが多い。初めてのスタッフだと意思疎通がなかなかできず、いい作品を作る以前にコミニュケーションに労力を使う。

ずっと以前、仕事をしたカメラマン。本当にダメだった。センスがないくせに、自分で全てを決めようとして、こちらの意図を聞こうとしない。「カメラはここなんだ!」とカメラポジションを自分で決め、何を言ってもそこから動かない。理由を聞いても意味不明。議論している時間がもったいなく、多くの監督は彼の言う通りにさせるが、大した絵は撮れていない。結果「二度と仕事しない!」と多くの監督は決意する。

撮影前はとてもいい人なのだが、現場に入ると性格が変わる。もう、トランプでいうとババを引いたようなもの。そんな人とでは素晴らしい作品は絶対にできない。だから、何度も仕事をして気心しれた優秀なスタッフを集める。が、これもむずかしい。**組と言ってもヤクザのようにいつも一緒にいる訳ではない。社員でもない。皆、それぞれがフリーでそれぞれが別の現場で仕事をしている。だから、監督は依頼を受けるとまず、彼らに連絡。スケジュールを確認する。

スタッフにはいろんなパートがある。撮影部、照明部、演出部、制作部、録音部、衣裳部、美術部。一番上を技師と呼ぶ。技師さんを決めれば、それぞれが助手を集めてくれる。だが、上記の7パート7人のスケジュールを合わせるのは至難の業だ。優秀な人は依頼が多く忙しい。撮影部は夏OKだが、演出部は秋OKということもある。さらに撮影スケジュールもなかなか決まらないものだ。夏撮影予定が秋になることも多い。

そうなると撮影部に「夏撮影」で御願いしても、秋にズレると先約が入っていて、いつもの撮影部には来てもらえない。撮影部がダメになり、別の撮影部を呼ぶと「いつも一緒にやっている照明部とやりたい」といわれ、すでに決まっている照明部に頼めなくなる。撮影&照明は相性が大事。アメリカでは同じパートである。だから、先に決まっていた照明部に御願いすることはできない。

いつものメンバーが集れば確実にいいものができるのに、そんなことで、全員が集らないことがある。また、こちらが夏から撮影と決まっていても、スタッフがその前に入っている仕事が伸び伸びになると、こちらに来てもらえないこともある。今、やっている仕事を「次があるので〜」と辞める訳にもいかない。そんなこともありえる。

が、一般の人の多くは「監督が1本電話すればスタッフがすぐに集る」と思っている。「AさんがダメならBさんを呼んでくれる」と考える。が、そんなふうにはいかない。撮影が夏なのが、秋にズレた。「ごめんね。秋でよろしく〜」という一般のスポンサーがよくいるが、こちらはてんやわんやの大事件となる。また1からスタッフを探さねばならない上に、夏に予定を開けていたスタッフは夏1ヶ月の収入がなくなるということ。しかし、スポンサーはキャンセル料を払わないと言い出すことがある。

例えば7月撮影と決めたらスタッフは、7月のスケジュールを空けて待つ。なのに9月に延期となると、7月は仕事がなくなる。そして9月は別の仕事が入っているとなると、そのスタッフの生活は大変。スタッフを押さえたあとにスポンサーの都合で撮影期間を変えると多くが迷惑する。死活問題となる。スタッフは生活を賭けて待っている。が、それも理解されずらく「延期になりました!」と平気でいうスポンサーが時々いる。

それは監督の責任でもある。スタッフに声をかけるのは彼らの生活を背負うのと同じ。もし、理不尽な形で撮影中止や延期が行なわれれば、スポンサーに掛け合い、保証をさせる義務が監督にもある。スタッフは監督を信じてスケジュールを空け、他の仕事を断り待っていてくれるのだ。スタッフは社員ではなく、職人。それぞれの分野のエキスパート。技術だけでなく、思いややる気も大事。安いギャラでも全力でやってくれることもあるが、いい加減な仕事だと高いギャラでも真剣にはならない。

とても気難しく、頑な人たち。だからこそ、素敵な作品を作るアーティストなのだ。そんな彼らに仕事を頼むときは1本の電話では済ませない。実際に会ってシナリオを渡し、なぜ、今回の映画を作るか?を詳しく説明し、納得してもらった上で引き受けてもらう。もし、納得できない作品なら受けてもらえないし、安いギャラでは引き受けてもらえないだろう。彼らが参加してくれるということは大変なことなのだ。僕の映画が毎回高い評価を受けるのは彼らが参加してくれるからである。

その辺も一般には理解されずらい。電話1本ー業者に電話すれば飛んで来るくらいに思っている。工事現場の日雇いに近い印象しかなかったりする。分かりやすく言えば、「七人の侍」だろう。腕はいいだけでなく、思いもある侍。名誉や金のためでなくても闘いに参加してくれる侍。そんな侍を探すのがスタッフィングなのである。それが監督にとって、最も大切な仕事のひとつである。


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