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「男たちの旅路」の脚本家・山田太一さんから学んだこと? [映画業界物語]

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「男たちの旅路」の脚本家・山田太一さんから学んだこと?

山田太一さん。大好きな脚本家で、学生時代はテレビ欄で彼の名前を見つけたら必ず、そのドラマを見ていた。オリジナル脚本。名作ばかり。「男たちの旅路」「ふぞろいの林檎たち」「沿線地図」「岸辺のアルバム」「輝きたいの」「時には一緒に」「早春スケッチブック」「深夜にようこそ」どれも凶悪な犯罪や大きな事件の起こらない日常の物語。なのにハラハラドキドキして、見ずにいられない面白さ。

時には考え込み、自身を振り返ってしまう。打ちのめされ涙が止まらないことも。倉本聰や市川森一らも活躍した時代で、テレビドラマが完全に映画を超えていた。入場料を払っても、それらを超える感動ドラマを映画館で見ることはできなかった。脚本家たちが素晴らしいドラマを次々に生み出したのだ。

そんな山田太一さん。どうやってあんな凄い脚本を書いたのか? 彼のエッセイやインタビューを読み漁り、その答えを探した。まず、徹底的な取材。彼のドラマを見れば分かるが、背景となる会社や仕事を非常に詳しく調べ描いている。「男たち」ではガードマン会社。「深夜に」はコンビニ。さらに学生の気持ち。老人の気持ち。主婦の気持ち。見ている同じ層が「あー一緒、一緒!」と共感してしまう。

当時40代だった山田太一さんがどうやって、10代の女子高生の気持ちを理解し描くのか?と思っていたが、通勤電車で話す女子高生たちの会話に耳を傾けて取材したそうだ。そして、あれこれ取材したものを一度、全て忘れてシナリオを書く。情報に囚われると物語が死んでしまうという。そして、書くべきドラマに近い映画をビデオで見まくる。そうやって物語の世界に入り込んで、一気にシナリオを書く。という手法。

僕もそれを学生時代から実践。プロになった今も続けている。ただ、映画を見て、その世界に埋没すると、そこから帰って来れなくなることがある。日常生活に支障を来す。神経過敏になっているので、人との接触やコミニュケーションが難しい。

これは俳優が役を演じているときに近い状態だろう。追い詰められやけっぱちになるヤクザを演じると、その撮影の間、俳優は常に役と同じ気持ちになってしまうことがあるという。「いつも陽気でいい人なのに、最近変ね」と思われる。その切り替えが大変。アルパチーノは撮影が終わっても、役を引きずり、自分に戻れなくて苦しむという。麻薬中毒患者を演じた「悲しみの街角」ゲイの街に潜入する刑事を演じた「クルージング」想像しただけでも大変。

シナリオを書くときも同じ。だから、その期間はなるべく人と会わない。電話しない。メールも出さない。主人公が怒り狂っている場面を描いているとき、電話が来たら大変なことになる。でも、書くのは最後の作業。まずは物語の世界観を作るために、あれこれ映画を見る。山田方式。今も実践している。


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