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矢沢永吉の言葉を理解したのは10年もあと=かつて熱血教師のような若手監督だった僕? [映画業界物語]

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矢沢永吉の言葉を理解したのは10年もあと=かつて熱血教師のような若手監督だった僕?

監督デビューした頃。30代の僕はテレビの熱血教師ドラマを彷彿とさせるキャラだった。俳優卵たちを応援。無料のワークショップを開催。太田組俳優部を作ろうと、若い連中の面倒をよく見ていた。道を踏み外しそうになると、飛んで行って説教。自分がまだ監督業だけでは食えないのに、彼らに飯を食わせたり...「役者には成れないだろう」と思っても応援した。頑張れば、その経験が別の機会に生きるからだ。

当時の僕は卵たちに自分を重ねていたのだろう。でも、夢がある。それを掴みたい。でも、チャンスがない。誰にも認められない。高い高い壁ばかり。20代の頃に自分を思い出し、彼らを応援したくなった。が、次第に卵たちとの距離は次第に近づき、緊張感がなくなる。甘えが出て、宿題や特訓をやらなくても「監督は優しいから叱られない」というムードが強まってしまう。それでいて「次の作品には俺も出してもらえるかな?」という期待するばかり。

ある若い女優の卵に至っては「出演させてくれたら練習頑張る!」とか本末転倒なことを言いだす子もいた。中には「監督は何もしてくれなかった」と逆恨みする者。僕の名前を使ってイベントをしたり、「監督の推薦する芝居です」と自分が出演する舞台のチケットを売る者まで出て来た。若手を応援することに疲れた。そんなとき思い出したのが、矢沢永吉の言葉だ。

「矢沢さん。若者へのメッセージをくださいと、よく言われるんですよ。でもですね。やる奴はやる。やらない奴はやらない。幾ら言ってもやらない奴はやらないんですよ」

そちらを実感したのは、40代になり映画監督デビューした時のこと。「ストロベリーフィールズ」で出会った4人の若き女優たちは皆、天才と言える物凄い演技力を見せてくれた。僕が応援していた卵たちが逆立ちしても適わない。100年訓練しても追いつかないだろう。そんな子たちが存在するのが芸能界。

その後は第一線で活躍する有名俳優、ベテラン俳優と毎回、映画作りをするようになった。やはり凄い。僕があれこれ言わなくても、誰もが全力でかかる。実力ある人たちが全力! 卵たちは実力ないのに全力は出さなかった。彼らだけに罪がある訳ではない。与えられた教育の中で育った彼らに、自分で考えて全力で何かをやるという経験がないのだ。

それ以降。若者を応援するということはしない。それより素晴らしい映画を作ることに時間を使う。もう、追いかけてまで説教はしない。よく知る若手でも自分から手を上げなければ「やる気」はないと考えるようにしている。やる奴は言わなくてもやる。やらない奴は幾ら言ってもやらない。その指摘は正しいと思える...。寂しいけどね。



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