SSブログ

映画製作は理解し辛い。あれこれ勘違いする人たち。良かれと思ってかき回すこともある? [映画業界物語]

70393717_2975302395877378_6399382184481783808_n.jpg


映画製作は理解し辛い。あれこれ勘違いする人たち。良かれと思ってかき回すこともある?

毎回、撮影の手伝いに来てくれる人たちがいる。自腹でロケ地まで来て、自腹で宿泊。ボランティア・スタッフとして撮影を手伝ってくれる。でも、何かを要求するわけではなく、映画が好きなので、撮影に参加できるだけで喜んでくれる。そんな1人。ある中年男性が、こんなことを言った。

「女優のA子さん。今回は出演してないんですね?」

彼女には期待していたが、前回の映画で酷い芝居をした。だから今回は起用していない。だが、その男性はいう。

「前回、よくなかったという話は聞いてますけど、そのことで反省して次は頑張るということもある。また呼んであげたらどうです?」

その発言。悪意はないが、あえて言えば、いくつかの問題がある。まず、ボランティアで手伝ってくれるのはありがたいが、キャスティングに意見するのはどうか?もちろん、自分の思いを伝えただけで強く要求した訳ではない。が、会社の人事で、外部から来たお手伝いの人が、社長に「彼は営業部に戻してあげたら」というだろうか?それは世間話とは言えない。 

シナリオだとどうだろう?「結末はああではない方がいいですよ」というだろうか? 映画ファンがネットであれこれ言うのは自由だが、撮影現場ではスタッフ、キャストだって、キャスティングやシナリオについては一切。言わない。なのに、彼は世間話のような感じでそんなことをいう。プロではないので仕方ないところもあるが、引っかかった。

             *

背景を考えた。A子の失態は非常に深刻で、物語が成立しなくなる危険があったことを知らない。演技がボロボロだったが、別の俳優で撮り直す余裕も、時間も、費用もない。何人ものスタッフが物語が繋がるようにポスプロで長時間、何度も徹夜で編集せねばならなかった。A子のために苦労したスタッフ、超過した予算のことを彼は知らない。

なのに「可愛そうだ」「また呼んであげよう」と言う。また同じことが起きたらどうするのか?とは考えず、可愛そうという。映画作りは仲良しクラブではない。大学のサークル活動ではない。トラブルを起こしても、反省すればまた仲良くやろう。仲間はずれは可愛そうだ。そんな発想で彼は考えているようだ。

映画は真剣勝負。一つの失敗で、全体がダメになることがある。多くの人が迷惑し、被害も受ける。製作費は低予算でも何千万円。一大プロジェクト。それをサークル活動のように考えている。ただ、一般の人だし、映画製作が分からないのは当然。その時は分かりやすく説明した。



              *

それ以来、あれこれ言うようになる。シナリオがどうだ。撮影がどうだ。彼が言うべきことではない。ボランティアで船に乗った人が船長に航路や速度について、あれこれ進言するようなもの。悪い人ではない。手伝いもありがたい。が、集中せねばならない現場で、それを言って来られても困惑する。その後、彼は手伝いには来なくなった。自分の意見が通らないからか?余計なことを言っていたことに気づいてくれたのか?は分からない。

僕にも反省がある。もともと彼にとって撮影は「仕事」ではない。祭りの参加に近い。さらに話すことで「監督はいい人」「お友達になった」と思われた。彼は撮影=祭り=サークル活動と捉えるようになる。もちろん他の人たちはボランティアに徹してくれるが、彼はそう考えた。

「みんなで仲良く」「仲間はずれはいけない」「自由に意見を出し合う」

そんな勘違いをさせた僕にも責任がある。よく映画監督は「怖い」と言うイメージがあると言われる。近づき難い。それはそれで意味があると最近は思えている。



72886915_3128310307243252_1182670501093310464_n.jpg
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。