スピルバーグからの大きなチャンスを待ってはいけない。 俳優は小さなチャンスを繋げ大きな成功を掴む?④(終) [映画業界物語]
スピルバーグからの大きなチャンスを待ってはいけない。
俳優は小さなチャンスを繋げ大きな成功を掴む?④(終)
俳優の卵たちに訊くと、こういう。
「月9に出たい」
「アメリカ映画に出たい」
もちろん可能。でも、そんなことをいえるのは遠くで憧れているだけだから。業界の競争を知らず、「私は特別、きっと成功する」という根拠のない自信を持っている子の場合が多い。
「主演以外の役はしたくない」「ゴールデン枠しか出た無くない」
という無謀な希望を語る子もいる。一度、そんな奴に説教したことがあるが、何を言っても、
「僕は大丈夫。まあ、見ててください。主演映画の試写会のときは呼んであげますよ!」
と自信過剰。さして二枚目でもない20代の男の子だった。その後、30年ほど経つが未だに招待状は来ない。デビューしたという話は聞かない。映画でもテレビでも見かけない。要は現実を知らず、待っていればいつか誰かが自分を認め「君が主役だ」と言ってくれると思っていたのだ。
シンデレラ症候群と同じ。スピルバーグからいきなり「僕の映画に出てくれ!」と依頼が来たりはしない。だから、小さなチャンスに気付かない。見逃してしまう。
30年前。僕が若い頃から、そんな連中はいた。そして、今の若い世代も同じことを言う奴が多い。若さゆえの過ちなのものかもしれないが、その手の連中は一度、壁にぶつかるとすぐ「現実は甘くない」といい諦めてしまう。大切なことは今も昔も同じ。
「チャンスに気づき、小さなチャンスを繋げて大きなチャンスを掴むこと」
高過ぎるプライドを掲げて、高望みをしても誰も叶えてはくれない。また、日常に目を奪われていると、小さなチャンスを逃がしてしまう。そんな若い人を数多く見てきた。ただ、僕は誰1人、現実に気づかせることはできなかった。そんな子たちにはどう伝えればよかったのか? 今も考えてしまう。
(了)
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