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メイキング編集は続く(3) 日本の教育??? [映画業界物語]

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メイキングを撮った学生君のことを考えていて、自分のことを振り返ってみた。僕も長らくメイキングをやっていた。自分でいうのも何だが、かなり評判がよく。次々に依頼が来た。「本編よりメイキングの方が面白い!」といってくれる人までいた。が、僕はドラマを監督したかった。なのに、依頼はメイキングばかり。

先輩などは「ここまで来たらメイキング極めろ。ドラマはその次だ!」とまで言いだす。メイキングを極めることに何の意味があるのか? でも、その内に目のあるプロデュサーが「このメイキングは面白い。こいつにドラマを撮らせてみよう!」という展開があるかもしれない。と思い、メイキングを続けた。

が、そんな展開はなく。やがて僕は「メイキングしない宣言」をする。惰性でメイキングを撮るのは嫌だし、生活のためだと我慢してやるのも嫌。何より、毎回違ったアプローチをしていくと、それ以上に新しい展開はもうメイキングではできないというところまで行った気がしたからだ。そこに先に先輩から「極めろ!」と言われたのが、それを極めることに意味はない。それよりドラマで新しい挑戦をしたかった。

それだけに僕はメイキングにはうるさい。1時間ものの編集に半年かけたこともあるし(完全に赤字!)複数のカメラでメイキングを撮ったり、ドラマ仕立てのメイキング(?)、バラエティ風のメイキング。メイキングというより熱血ドキュメンタリー。泣ける感動もの。といろんなパターンを作っていた。その方法論でのちにテレビ・ドキュメントも担当した。

最終的には大林宣彦監督から映画「理由」のメイキングに指名してもらった。これは「監督デビュー前に大林組で勉強しなさい」という大先輩からのエールでもあったのだけど。2ヶ月ほどの撮影に参加させてもらった。昔々は助監督経験を積んでから監督になったが、僕の場合はメイキングをすることで、いろんな現場を体験し、監督デビューしている。

本当にメイキングというのはギャラをもらって勉強するインターンのようなもので、邪魔にさえならなければ、撮影現場のどこで、どんなふうに撮影してもいいし、俳優やスタッフにもインタビューして、疑問を聞くことができる。ものすごく勉強になる。本当に素敵な仕事だ。ただ、メイキングにも限界があり、あれこれ挑戦すると、それ以上のことは撮影現場ではできないことが多くなり、やはり本来からの目的でありドラマを監督したくなった。

話が逸れたが、それだけに僕はメイキングにうるさい。ちょっとだけ自慢すると、大林監督の現場ではいつもメイキングが注意され、ときにはクビになることあるという。巨匠の現場はとても厳しい。監督がメイキングカメラの位置を指定することもあるそうだ。が、それはその通りなのだ。現場で、そのシーンをメイキング撮影するなら。

本編のカメラが例えばここ、そうするとメイキングカメラはここ!と決まってくる。「どこで撮ろうかなあ? ここだと本編のカメラに映ってしまうし。ここだと... 」と考える必要はない。シナリオを読み、ロケ現場を見れば、メイキングはここから撮ると場所は決まる。

撮影しながら編集も考える。だったら、こんなカットも撮っていこう。この人もアップで撮っておこう。もしかしたら、新人の**さんメインのメイキングはできないか?とあとになって言われることもある。あるいはスタッフ中心のメイキングってできないか?と聞かれるかも? だから、いろんなパターンで編集できるように素材をあれこれ撮っておく。実際、「理由」のときはメイキングで予告編を!との話になり、それも担当させてもらった。

「いつも大林組でメイキングをやっているんですか?」とスタッフさんから言われた。監督からほとんど怒られずにいたからだ(一度だけ怒られたけど)。いつもは大変らしい。でも、僕はそのときが初めて。「へー」と言われた。ベテランのスタッフさんから頂いた最高の褒め言葉だった。でも、ちょっと考えれば、メイキングのカメラ位置はすぐに決まる。邪魔にならない場所。方法論。それらは自然決まってくる。考えずに撮影するからまわりに迷惑をかけ、クオリティの低いものになるのだ。

だから「なぜ僕ができたことができない!」と思ってしまう。決して僕が優秀なのではなく、考えればわかることなのだ。が、前回も書いたが若い人は考えない。言われたことしかしない。メイキングは誰も何も言ってくれない。自分で考えて行動するパート。以前のメイキング素材も酷かった。撮るべきところは撮っていたが、カメラが下手過ぎ。おまけに撮影したその若いディレクターに編集させたら、本当に酷く。結局、僕が編集した。

才能とか、実力ではない。考えるか? 考えないか? 人が撮ったメイキングを見て学ぶ。周防正行監督のメイキング「マルサの女をマルサする」は名作だ。「レイダース」のメイキングも面白い。ドキュメンタリーを見て、その方法論をメイキングに持ち込めないか?考える。何にフォーカスし、どんなスタイルで編集するか? 考えた上で撮影する。撮影しながらも考える。さらに、こんな、あんな形にもできるかな?と考えて、あれこれ撮影しておく。

才能ではない。実力でもない。考えれば誰でもできることだ。だが、10年に渡る日本の教育で若い人は考える力を失う。正確にいうと考える力を育てる教育をされていない。暗記ばかり。言われたことをするだけ。それが今回の学生君の背景ではないか?

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