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明日にかける橋ーポスプロ日記 いい映画を作ると制作者は儲からない? [映画業界物語]

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まだ、改訂版は完成していが、世は確定申告の時期。そのためにこの1ヶ月、再編集作業と平行して準備が続き本当に大変だった。映画制作にかかった費用数千万円分を全て確認。何にいくらかかったか? そして領収書、請求書を全て揃えてカテゴリー別に分けてファイルに貼付け。申告、税金を払わねばならない。最終的な手続きは税理士さんにお願いするのだが、そこまでの段階は全て僕が作業する。その方が安上がりだからだ。

もちろん、最初から経理スタッフを入れておけば全部やってもらえるので時間も労力も大いに節約できるのだが、それでは人件費が高騰する。どんなスタッフでも1人雇えば、その人が生活できるギャラを払わねばならないので高額になる。だから、人をなるべく減らして、その分を僕が担当することで毎回、人件費を押さえている。

ただ、僕は経理のプロではないので、最後はプロの税理士さんにお願い。全てを再確認し、申告をしてもらう。「使途不明金はないか?」「二重に計上しているものはないか?」「漏れている事項はないか?」「不正な支出はないか?」「誤摩化しや間違いはないか?」等。全て正当な支出であることを徹底してチェックした上で、税務署に提出。手続きを代行してもらう。

疑問点が見つかると税理士さんから連絡が入る。そのたびにに説明をする。前回も書いたが、それが古畑任三郎か?刑事コロンボか? 杉下右京か!という細かい質問だ。僕は意外に記憶力がいい方だが、昨年の7月に銀行から引き出した90000円を誰に支払ったか?と訊かれてもすぐに思い出せない。通帳を見ても、提携銀行から振込をした場合は、相手先の名前が記録されないのだ。

あれこれ当時の記録やスケジュールを見て思い出し、あーそうだ!と相手先が誰か答える。「分かりません...」ではダメなのだ。それでは誰だか分からない人に製作費を渡していることになる。公金横領と同じだ。そして税理士さんには通帳のコピーも渡しているので、誤摩化しは効かない。もちろん誤摩化すつもりはないけど「忘れちゃったなあー」では通らない。

そんなふうに僕が見落としていること。気付かなかったことも税理士さんはいろんな角度から検証。細かい部分も確認してくれるので、製作費が正当に使ったことが証明されるのである。でないと、税務署に提出した段階で、問題があると、今度は税務署から厳しい追及が行なわれる。そうならないように事前に不正なし、ミスなし、誤摩化しなし、疑問なしにしてくれるのが税理士さんの仕事なのだ。

ただ、映画の場合。たいていは製作費をオーバー。その場合は僕自身のギャラでそれを補填せねばならない。製作者は受けとった額内で映画を作るのがルールであり、オーバーしたらそれは自己負担となる。その段でスポンサーに追加予算を頼むのはあり得ない。なので多くの製作会社やプロデュサーは赤字がでないように、なるべく安上がりに映画を作ろうとする。

それは分かるが、会社の中には最初から半分以上の製作費を抜いておき、受けとった半額で映画を作る。当然、クオリティは低く、粗悪な作品となる。でも、そのことで会社は確実に赤字にならない。抜いた半額は手数料と称して自社の利益とする。これ本当に嫌らしいやり方だが合法。形だけの作品を作り、多額の利益を得る。だから、多くの製作会社が作る映画は駄作ばかりなのだ。

だが、映画監督主導で映画製作をすると、利益より「より映画を良くするため!」と利益を度外視、費用を全て映画製作に注ぎ込みがち。毎回、赤字になる。僕も毎回それだが、大事なことは良い映画を作ること。こちらも生活があるので、ある程度のギャラは頂くが、映画を優先してしまうのは映画監督業。だから、俳優や映画監督が主催するプロダクションは儲からず、いつか倒産するのである。因果な商売だ。でも、大事なのは素晴らしい作品を残すことだと思う。

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