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「明日にかける橋」編集日記ー恥ずかしい話。撮り忘れたカット?! [「明日」編集]

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今回は情けない話を書く。こんな話を監督という人たちはしたがらないが、読者には映画監督を志す人もいると思うので、書いてみる。

編集で素材を見ていると、「あれ? 何であのショットの映像がないんだ?」と気付くことがある。そして探す。「まさかまさか? あーー」と、撮り忘れカットがあることに気付く。そんなときは本当に落ち込む。自分を殴りたくなる。同じ失敗を繰り返さないようにその原因を考える。もちろん、全ての最終責任は監督だ。役者が下手でもその人を選んだ監督が悪い。力及ばずのスタッフがいても、選んだ監督の責任だ。が、どんな状況で問題が起きたか?事細かに反省することは大事。その前に撮影に至る進行をまず説明しよう。

まず、現場をロケハン。どこからどんなふうに撮るか?そのあとに紙に図面を書いてどこにカメラを置いてどんな風に撮るということを考える。そしてカメラマンと打ち合わせ、それが可能かどうか? もし難しければどうすればいいか?相談。さらに現場でカメラを置いてファインダーを覗くのだが、想定していた絵とは違う構図になることもある。そのときはまた微調整する。

そんなふうに最初決めた通りに行かず、また、天候やロケ場所の状態がロケハン時とは変わっていることもあり、その場その場でより良い方向に変更して行かねばならない。急に「**時までに終わってほしい」場所を貸してくれる人が言い出す事もある。俳優事務所から「早めに次の仕事に行かせたい」と理不尽なことを急に言われることもある。対応するには、当初の予定を変更、時間がかからないカット割りをせねばならない。そんな中で撮り忘れるショットが出てくる。

それ以外にも撮影前に事件が起きたり、決まっていた俳優が突然に出演できなくなったり、いろんなことがあって、そちらの対応に時間が取られたために、撮影準備が疎かになることもある。現場がもの凄い暑さや寒さで頭がまわらないとき。困ったちゃんが騒動を起こして皆、イライラさせられたり。まあ、現場というのは戦場なので、ものごとを冷静に考えられる場所ではないのだが、そんなことがいくつも重なり、撮らねばならないカットを撮られずに現場を移動してしまうこともある。まあ、だからと言って許されることではないが、それが要因となる。

また、撮り忘れとは言わないが、編集時に素材を見ていて「あーここのアップほしいなああ。何で撮ってないんだ!」と思うこともある。現場では「これでいい」と感じたのだ。それが冷静に編集室で集中して考えると必要だと分かる。なぜ、分からないか?先に上げた状態が原因。

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では、撮り忘れカット。どうすればいいのか? そのシーンを今から撮る訳にはいかない。かなりな予算が必要。俳優やスタッフはすでに次に仕事をしている。例え全てをクリアーしても、もう俳優たちはあのときと違う顔をしている。あの夏のあの時期だけ、彼ら彼女らは物語の登場人物になっていたのだ。今から戻れといっても不可能なのだ。特に若い俳優はそうだ。数ヶ月で成長。大人の階段を上がってしまう。

それは編集で何とかするしかない。そのカットがないだけでそのシーンが成立しない場合もあるが、別テイクから別のシーンからカットを探したり、繋ぎ方でそのカットがなくても成立させるとか、とにかく観ていて違和感ないように繋ぐのだ。そんなことがあるので、毎回、編集はドキドキの連続。

「あーーあのカット.....フォルダーにない.....もしかしたら.....」

とカメラマンに電話。「いえ、僕は撮った記憶があります。**のフォルダーにあるかも?」と言われ確認。「あったーーーーー!」というスリルとサスペンスの連続なのだ。

今回もすでに1カ所だけ撮り忘れがあった。本当に情けない。理由はともあれ僕の責任。こんな恥ずかしい話、ほとんど監督たちは外部の人にしないが、どこのチームでもときどきあること。ハリウッド映画でも観ていて「あれ?」と思う事がときどきある。それは似たようなことが現場であったはずだ。

そんなミスを徹底して探した記事を掲載した映画雑誌があった。そして世界で1人だけ、そんなミスを発見できなかった監督がいたそうだ。それが日本の黒澤明。その理由はラッシュを観て少しでもおかしいところがあれば撮影をし直したそうだ。それをするためにはどれだけの費用と時間と労力が.....と思うが、だからこそ天皇と呼ばれた監督なのだろう。

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