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【僕なりのキャスティング・ルール? 俳優と親しくなってはいけない!?】 [映画業界物語]

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【僕なりのキャスティング・ルール? 俳優と親しくなってはいけない!?】

キャスティングは本当に難しい。その過程については以前に書いた。今回は僕なりの「こだわり」と「ルール」を書いてみる。ある監督が国民的大俳優主演で映画を撮ることになったとこのことだ。その監督の先輩がこういった。

「お前、今までに不義理をした俳優がいっぱいいるだろう? そんな奴らを今回呼んでやれよ。国民的俳優の***さんと共演できれば皆、喜ぶよ。あちこちで自慢もできるし。そういう優しさが大切だよ」
確かに無名の俳優たちは喜ぶだろう。僕も不義理をして申し訳ないと思っている俳優は何人かいる。出演場面を全部カットせねばならなかったときともある。何かでお詫びしたい。が、その先輩が言ったことは間違っている。そんなことで不義理を償うのは間違っている。これはキャスティングを個人的なことで利用するのと同じだ。

映画で大事なのは迷惑をかけた俳優を呼ぶことではなく、その作品に相応しい俳優を集めることだ。まわりに自慢させるために俳優を呼ぶべきではない。無名の俳優たちはいろいろ大変だ。大俳優と共演できれば喜んでくれる。が、だからといって、それをしてキャスティングするのは間違っている。

大俳優と共演する俳優。それがウエートレスの役であっても、それに相応しい俳優を選ぶべきで、かつて迷惑をかけた俳優という基準で選んではいけない。その先輩は俳優に対して優しい人だろう。でも、作品より俳優に対する思いが強い。監督の仕事はまず作品を作ること。それに相応しい俳優を選ぶことが大事なはずだ。

僕もこんな経験がある。「女優の***さんに昔、お世話になった」と言ったら、プロデュサーはこう答えた「じゃあ、***さんを一度、呼んであげましょうよ(出演させてあげましょうという意味)あの人、最近仕事ないし、喜びますよ」ーこれも先の先輩と同じ発想。同情で呼んでもその女優さんは喜ばないし、合ってない役を依頼するのも失礼な話だ。

その女優さんでなければならない役があったときこそ、依頼するべきで、単に「昔世話になった」で呼ぶべきではない。だが、こんな場合はどうだろう? 仲のいい俳優がいる。十数年の付き合い。共通の友人も多い。その彼が「監督。次の作品に出して下さいよ。最近、仕事ないし。ノーギャラでもいいんです」でも、僕の場合ー彼に相応しい役がなければ断る。友達だからと、出演させるのは違う。

それで出演させれば、心温まる裏話かもしれないが、それは企業の縁故採用のようなものだ。作品に必要で、役に相応しい俳優を呼ぶべきで、友達だから、困っているから出すは間違っている。金銭的に困っているなら、役ではなく、金を貸すべき。そこを混同してはいけない。しかし、親しい友人が困っていると何とかしたいのが人というもの。

だから、僕は俳優とはプライベートでは会わないようにしている。親しくなると情が沸く。だから、会うのは打ち合わせと撮影現場。その人の公演やライブなら楽屋に挨拶には行くが、それ以外の接点は持たない。飲みに行ったり、遊びに行ったりしない。距離を保つようにしている。というと「何だかヘンに真面目過ぎない?」と思う人もいるだろう。

しかし、監督も俳優も互いに甘えてはいけないと考える。昔面倒を見た若手俳優がブレイクした。自分は仕事がない。だから「あいつに出てもらえれば製作費が集る」なんて考えるかもしれない。俳優も「最近仕事がない。昔あの監督の面倒をみたから、新作に出してもらおう」と思うかもしれない。

或は撮影中。俳優は「体調悪い。芝居がうまくできない。でも、この監督とは親しいから分かってくれるだろう」と考えることもあるだろう。監督も同様。「彼なら分かってくれるはず」そうやって互いに甘えが生まれる。厳しく言えなくなる。真剣勝負ができない。

それで素敵な作品ができるだろうか? 監督は本当に必要な俳優を選び、俳優は本当に自分を必要としている監督の作品に出るべきなのだ。馴れ合ってはいけない。義理人情だけでキャスティングしてはいけない。大事なのは観客が喜ぶ作品を作ることだ。

僕は本当にその人が必要なときにだけ依頼する。2作、3作と続いて出てもらっても依頼しないことがある。俳優にとっては「今回は落とされた!」と思うかもしれないが、そうではない。また必要なときに御願いする。これが親しいと「お前、何で呼んでくれないんだよ〜」と友情にヒビが入るかもしれない。

だから、距離を置く。でも、その俳優の魅力を生かせない役で呼ぶことこそ失礼だと思うのだ。
俳優たちは皆、魅力的。努力が多い。だからこそ、その力を最大限に引き出すために、輝いてもらうために距離を置く。義理人情でキャスティングはしない。それが僕のやり方である。


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