撮影現場で大切な「状況把握力」=それに欠ける監督やPだと殺伐とした現場になる? [映画業界物語]
撮影現場で大切な「状況把握力」=それに欠ける監督やPだと殺伐とした現場になる?
撮影現場での状況把握力エピソード。もう一つ紹介しよう。撮影を問題なく進めるためには俳優やスタッフの体調や性格も把握しなければならないという話を先に書いた。が、監督にとって他で状況把握をせねばならない場面がある。
撮影前に怒鳴っているベテランスタッフがいる。制作部の若い子が叱れれている。一見、若手がヘマをして先輩に注意されているようだ。が、本当にそうなのか? 特に我が太田組では「怒鳴る」行為は禁止。昔の現場では怒鳴るどころ「殴る」も日常茶飯事だったが、最近の若手はそんな目に遭うとすぐに辞めてしまう。
ひ弱というのではない。そもそも現場で殴る、怒鳴るは良くない。僕はその手のスタッフはできる限り呼ばない。現場の空気が悪くなるし、若手俳優が怯えて芝居ができなくなる。太田組はそれを大事にする。だから、もし、怒鳴っているベテランを見たら、よほどのことだ。状況を把握せねばならない。
ベテランだから正しい。若手だからミスしたとは限らない。ベテランが古臭い方法論を振り回すこともある。徹夜続きで、イライラが募っているのかも? 仕事量が多すぎる? あるいは叱られている若手以外に問題があり、その怒りを若手にぶつけてしまうこともある。監督は本来、作品を作るのが本分だが、スタッフやキャストが気持ちよく仕事ができる環境づくりも大事だと考える。
ま、本来、それはPの仕事だが、僕はそれを兼ねていることが多いというのもある。弁当が不味い、少ない。ということでベテランが不満を持っているということもある。その原因を把握して解決しないと、同じ問題はまた起こり、現場の空気が悪くなる。作品クオリティを落とすことにもつながる。
原因となった人を叱っても解決しない。例えば弁当が問題なら、一度、どこかで宴会をする。地元の人に相談して焼肉パーティをすると皆、元気になることがある。大浴場のある風呂屋や温泉に皆で行く。そんなことでトラブルを乗り越えることができる。基本、スタッフは「いいものを作りたい!」という熱い人たち。問題があっても前に進もうと思ってくれる。
業界には「ギャラ安いから、このくらいでいいだろ?」という人もいるが、太田組にそんなタイプはいないし、絶対に呼ばない。そんな風に状況把握をし、原因や背景を突き止めること。映画撮影ではとても大事。その力に欠ける監督やPの現場は、よくその手のことで揉める。映画業界には大切な力なのだ。
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