SSブログ

アーティストは、抉れた心の傷を癒すために作品を作る③終 [映画業界物語]

11825614_871027912971514_6740257249980222481_n.jpg

アーティストは、抉れた心の傷を癒すために作品を作る③終
(2014年の記事から)

歌手だけではない。僕のよく知る若手女優も同じだった。最初は家族から反対され、事務所もさじをなげ、映画やドラマのオーディションには落ちてばかり。悲しみの中で、もがいていた。が、チャンスを掴み映画に出演。輝かしい活躍をした。

そのことで家族も女優業を認め、応援してくれるようになった。ファンも増え、恋人もできた。事務所も有名なところに移った。出演依頼も続き、幸せいっぱい。だが、ハングリーな思いをなくし、人の心を打つ芝居ができなる。

プライベートな事件で、演技に集中できず。素人レベルの芝居をしてしまう。女優失格ともいうべき事態。映画が大変なことになり、多くの関係者が迷惑、彼女は出演依頼がなくなる。なぜ、女優業よりプライベートを優先したか? 

それは女優として成功しなくても、家族の「愛」で傷は癒えたのだ。だから、演技を疎かにできた。それに対して、小さな成功では癒されない深い傷を心に負った人々。一生作品を作り続けるアーティストたち。名声と経済的成功では癒されない心の深い傷を抱えて戦う。

本当に幸せなのはどちらだろう? その女優の方が幸せなのかもしれない。親が理解し、恋人ができれば癒される程度の傷。女優業を辞め平凡な結婚をすることが、今の彼女にとって一番の幸せだろう。もう「悲しみ」と対峙する必要はない。大成功して、金持ちになり、有名にならなくても、ハッピーなのだから。

傷が浅ければ小さな成功で癒すことができる。が、アーティスト生命もそこで終わる。傷が深ければ作品は作り続けられるが、一生幸せにはならない。人は「才能」があるから作品が作れると思うが、そうではない。

作品を作り続けないと、抉られた心を癒すことができないから。だから、心の深い傷を埋めるために格闘する。それがアーティスト。遠くで見ているほど幸せでも、ハッピーでもない。本当に幸せなのは

「俺は才能も何もない小市民だよ」

と笑える人なのではないだろうか?


(了)


61328389_2713611712046449_5637045108852391936_n.jpg
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。