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映画が完成しても、映画館で上映するのに1年待ち?ーー① 今旬作品なのに上映は来年? [映画業界物語]

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一般の方は映画は完成したら、映画館で上映してくれるものと思ってはいないか?それがそうではなく、そこにもの凄い苦労がある。今回はそんな映画館事情を書く。

昔は東宝映画は東宝の映画館で、松竹映画は松竹の映画館で上映された。系列といって、東宝の映画は松竹の映画館ではかからなかった。だから、独立プロが映画を作ったときは、メジャー映画館では上映できず。単館と呼ばれるマイナーな個人が経営する映画館でしか上映できなかった。

が、シネコンが作られてからは系列システムは崩壊。松竹系の映画館でも東宝映画が上映され。独立プロの作品も公開されるようになった。しかし、しかし、問題は山積みだ。僕が監督した「朝日のあたる家」のときにそれを痛感した。

メジャー映画は全国一斉公開が多いが、低予算作品はまず東京で公開されてから地方公開ということが多い。東京でヒットすることで、マスコミがニュースを流し、地方での知名度が上げることが大事だからだ。

なのに「朝日」は東京で上映がなかなかできなかった。なぜか?「上映はしたいが今すぐは無理」というのだ。「朝日」の完成は5月。直後から交渉を始めた。ロケ地湖西市での完成披露上映会に3000人が集まり、Yahooニュースのトップに出たり、直後に出演者の山本太郎さんが参議院議員に当選したりで、ネットでももの凄い数の人が「朝日を観たい!」と声をあげていた。

夏に上映すれば映画は必ず大ヒットする。なのに映画館はこういう。「来年の2月はどうですか?」8ヶ月もあとだ!!! 何を考えているのか? 現代はもの凄いスピードで動いている。今、「朝日を観たい!」と盛り上がっているのに、わざわざ8ヶ月も先に公開してどうする。盛り上がりというのは続いて1ー2ヶ月だ。それを過ぎると、皆、忘れていく。別のことに関心を持っていく。なのに、8ヶ月後の翌年の2月だ。

理由のひとつは現在、作られる映画の数に対して映画館の数が少ないということがある。なので、作られた映画が公開されるのは1年後であることが多い。だから、順番待ちだという。それは分かる。が、映画館は役所ではない。また、映画は旬が大事。夏を舞台にした映画は夏前に公開するのが大事だし、ブレイクしたアイドルはブレイクしている内に上映せねば客が来ない。

なのに、映画館は「順番ですから...」というのだ。役所か!?もし、これが昔の映画館のように、1本の映画を1日4回上映するのなら、順番というのも分かる。が、今はシネコンが主流。複数のスクリーンがある。映画はヒットすれば上映が続き、しなければ2週間で終わりというシステム。そこそこなら翌週から1日4回上映を1回上映にされる。

昔の映画館のように客の入らない映画を1日4回もまわすようなことはしない。ダメなら回数を減らす。打ち切る。そして新しい映画をかける。そんなふうにシネコンは融通が利く。つまり、そんな中で隙間が生まれる。夏に10本の映画が公開されても、その全てがヒットすることはなく、というより、基本的にヒットするのは1、2本。あとは、そこそこの客というのが現実。

そんな隙間に今旬の映画を入れることは可能なのだ。その努力をせずに、次、予定を入れられるのは来年だなあ〜と言う。分かりやすく言えば、八百屋に今話題の旬の野菜を置いてほしいと頼む。大評判で必ず売れる。なのに主人は置く場所がないから、来年の春なら....というのと同じ。店の棚にある他の野菜を少し詰めれば置く場所はできるのに、その努力をしない。

今旬の野菜は今、旬なわけで来年の春に売れるものではない。8ヶ月も経てば鮮度を失い、売り場に並ぶ頃にはもう客は興味を示さないのだ。そんな商売をやっているのが今の映画館である。呆れ果てて、映画興行の基本である東京からスタートをやめた。

「朝日」を一番最初に上映してくれたのは愛知県豊川市のコロナグループだ。ここは行動が早く、夏の終わりに公開してくれた。そして大ヒット。だが、その後、東京で秋に上映したいという映画館が出てきて、そこでも大ヒットしたが、もっと早く上映していれば、もっと凄いヒットになっただろう。

そんなふうに映画館と言うのはお役所的で、儲かるかどうかより、申し込みがあった順。今旬(いましゅん)よりも、順番に囚われるところが多い。「順番を無視しろ!」というのではない。ちょっとした努力で、多くの人が見たがっている今旬の作品を上映することは可能なのだ。その努力をしないだけ。今旬を8ヶ月後にやっても意味はない。客も興味を失っているし、映画館も儲からない。

最近、映画館がどんどん潰れているが、役所のようなことをしているからではないか? 映画館も商売。それを系列時代のように、上から言われた映画を上映しているときと同じ感覚で上映しているように思えてならない。作る方も上映する方も損をするこのあり方。考えなければならない。(つづく)


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