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明日にかける橋ー編集日記  音楽を考えた上での編集? [「明日」編集]

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編集というのは撮影された映像をストーリー通りに繋いで行くことが基本。その際にテンポやスピード感というのが大切。無駄を省いて行くという作業もある。この辺までは今までにも書いたが、編集も最終段階に入ると、さらにもうひとつ考えねばならないことが出てくる。

「音楽をどこに入れるか?」である。ただ、それを世代が上の監督たちはあまり気にしないところがある。とにかく編集して無駄を省き、詰めて行く。その際に音楽をどこに入れるか?考えない。最終的に「ここアクション・シーンだから、その感じの音楽。ここ泣けるシーンだから悲しい音楽」と指定しておしまい。「別に音楽なんて入れなくても魅せるだけの作品なんだがなあ」と思う監督もいる。

以前にも書いたが古い監督たちは音楽を「バックグラウンド・ミュージック」=まさに「BGM」としか考えていない人が結構いる。ま、若い人でもなぜか?監督と呼ばれる人は音楽に興味がある人が少なく、僕のまわりでもコンサートにまで行く音楽ファンは数人。当然、彼らの音楽への関心は少なく、映画での音楽の使い方も先の古い人たちと同じ方法論だ。

それに対して僕は昔から音楽にうるさく、音楽家さんをいつも困らせる。音楽はもう一人の主役。とても大切なものだ。「バックグラウンド・ミュージック」=「背景に流れる音楽」ではなく、前面に流れるべきシーンも大事と考える。そのためには編集時にストーリーに合わせて映像を繋ぎ、無駄を省くだけの作業ではいけない。

編集時。どうしても「1秒無駄がある」「この3秒は切れるだろ」とどんどん映画を詰めてしまう。確かにそうやって切ることでスピード感が増し、テンポもよくなる。が、そうすると音楽を入れる余地がなくなってくる。だから、アクション・シーンにそれなりの音楽をかぶせるとか、悲しいシーンに悲しい曲を流すとか芝居のバックに流れる曲ばかりになる。

そこで編集時に、ある程度繋がって来たら、音楽を入れるパートを考える。そこにイメージする仮の音楽を貼付けて、それに合わせて編集。今回、8分ほどの長い音楽がかかるシーンがある。そこは音楽なしでは成立しない場面。

似たような形を思い出すと、ま、全然規模が違うが「2001年宇宙の旅」の宇宙ステーションー「美しき青きドナウ」が流れるシーン。「ロッキー」の練習シーン。「太陽がいっぱい」でアランドロンが市場に買い物に行くシーン(テレビ放送では必ずカットされる部分)「ゴッドファーザーPARTⅢ」最後に娘が撃たれるシーンからラストシーンまで「インターメッツォー」が流れる場面等がそれ。フランス映画の「冒険者たち」でも、そんなシーンがいくつかあった。

どれもストーリー展開を見せるのではなく、映像と音楽で語る場面。台詞がなく、美しい映像。魅力的な映像を音楽と共に畳み掛けて来る。これって映画ならではの表現だ。僕の映画でも「青い青い空」の書道練習シーン。「ストロベリーフィールズ」の女子高生たちが幽霊になり、それぞれが実家に戻るシーン。「向日葵の丘」で常盤貴子が故郷に戻り思い出の場所を訪ね歩くシーン。いずれも7分以上に渡り台詞がなく、音楽が流れ続けるという場面。(観客の多くはその間、台詞が全くないことに気付かないことが多い。映像と音楽で登場人物の気持ちを伝えているので、言葉がないことに気付かないのだ)

どのシーンもイメージする曲を先に決めて編集したものに、作曲した音楽をつけてもらった。だから、編集のリズムと音楽が合っているので見ていて気持ちよくなる。同じ手法を昨年の「君の名は」でもやったらしい。歌ありきで、それに合わせて映像を編集した。一部では批判する人もいたが、その手法を使ったから映画は盛り上がり大ヒットした要因のひとつとなった。どうしても日本の映画人は映像が大優先。音楽は添え物的な発想があるから音楽を優先した編集をすると批判したくなるのだろう。

音楽も、芝居も、カメラも、どれも大事。どれが一番ということではない。それぞれの良さがかけ算となって映画は素晴らしい作品となる。長々と書いたが、そんなふうに編集時から音楽を考えねばならない。少し前まではとにかく編集、編集で詰めて来たが、その辺も意識して「音」「音楽」も考えながら作業する段階となっている。


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