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監督業だけやっていては、映画を乗っ取られる? ん、どういうこと? [映画業界物語]

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プロデュサーの仕事というのは大きく分けて3つある。

1、企画を立てる。

2、原作者や監督を口説き、人気俳優と交渉。実質的に映画を進める。

3、製作費を集める(これが一番大事)。

そう考えると、これまで作った映画は僕自身が企画し、製作費を調達。スタッフを集め、ときには直接キャストも口説いてきた。誰かプロデュサーがいて、全製作費を集めてくれて「さ、監督しろ!」というラッキーな展開は一度もない。その意味では映画監督のスタート時点から僕はプロデュサーでもあった。

が、初期の頃はこう考えた。企画し、製作費のほとんどを集め、脚本、監督、編集まで全部1人でやっているので、さらにプロデュサーという肩書きまで着けるのはどうか? スピルバーグがプロデュサーを兼ねているのは皆知っているが、新人監督がPというのは気が引けて、その肩書きはクレジットしなかった。

それが失敗。あるとき、仕事を頼んだPがこっそりと関係者にこんなことをアピールしていた。「監督は若くて経験もないので、私が何とかしますよ。任せてください。私がプロデュサーですから!」さらに自分が製作費を集めて、太田を監督として起用したかのような言動を繰り返し。シナリオや編集にあれこれ口を出し、自分の趣味を押しつけ、僕の意図とは違う方向に進めようとしたのだ(それが多くのPの手法であることをのちに知った......)

僕は雇われ監督と思われ、関係者の一部は「Pのいうことを聞くのが、監督の仕事だ!」と言い出す始末、(例え雇われ監督であっても、映画の中身の責任者は監督である。Pがあれこれ決めるのは本来間違ったことなのだ)Pは暴走。作品を徹底的にねじ曲げられそうになった。おまけに経緯を知らない友人は「太田は映画を撮らせてもらってラッキー。Pに感謝しろ!」と言い出すし。ま、通常はPが企画し、製作費を集めて、監督を雇う。僕のように監督が製作費を集めてPを雇うなんてことはないので、勘違いするのも当然なのだが....

「肩書き」とか「ブランド」とか、昔から嫌いで、こだわらないようにしていたのだが、多くの人はそれにこだわり「社長」だから偉い「部長」だから凄い!という捉え方をすることを痛感。「P」だから「製作費を集めた人」「監督を雇った人」と思い込む。つまり、何もしなくても肩書きを持てば、多くの人が信用し、言うことを聞くのである。

いや、Pだけではない。映画というと、いろんな人が集まって来て、自分に決定権があるかのように振る舞い。利益に繋げようとする。そんなことで映画を歪められては困る。だからこそ、スピルバーグは「監督」だけでなく「プロデュサー」としてもクレジットするのだ。以降、僕も「プロデュサー」という肩書きを必ずクレジットするようにした。

今では「P」とクレジットされるのは僕だけにしている。Pという肩書きを着けるとなぜか?勘違いして「自分は偉い」「決定権がある」と暴走する人が多いからだ。だから、作品における最高責任者が誰であるか? 知ってもらうため僕1人にしたのだ。作品が不出来でも、赤字になっても、全て責任は僕にあるということなのだ。その責任を負わない者を「P」と呼ぶことはできない。

にも関わらず、今回の現場でも「太田は監督。Pは***さん」と思っていた人たちがいて、苦情をその人にぶつけていたらしい。確かに「プロデュサー」は1人だが「アソシエイト・プロデュサー」や「アシスタント・プロデュサー」という人はいる。が、業界を知っていれば「アソシエイト」というのは、会社間で使う「友達」という意味で、協力プロデュサーという意味。実質的な決定権はない。という立場。「アシスタント」はその意味の通りプロデュサーをアシスタントする役目だ。

シナリオにもしっかりと役職はクレジットされている。なのに、それを理解出来なかった人たちがいた。そのことを映画界に詳しい友人に話すと「え、太田さんはプロデュサーなんですか?」と言われた。彼が間違うのなら、カタギの人が勘違いするのは当然だろう。今回は大きな事件にはならなかったが、アソシエイト・プロデュサーには申し訳なかったし、その辺のことをしっかりと周知させることは大切だと感じた。

過去には「太田は監督」と思われ、僕の知らないところで宣伝会議が行われていて、そんな方向にしたら宣伝戦略はぶち壊し!みたいなこともあった。関係者は「監督は編集で忙しいから、こちらで進めよう」みたいな気遣いだったらしい。

が、監督として、Pとして宣伝戦略会議に参加するのは当然のことなのだ。映画作りは宣伝も含めて映画作りだ。そこに監督の思いが入ってなければ伝わらない。以前は立場を利用する人がいて困惑したが、今は別の意味でむずかしい問題も出て来ている。あまり肩書きをたくさん並べるのは好きではないが、それは大事なことなのかもしれないと最近は思えている。



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