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映画監督はどんな仕事をするのか?僕はなぜ毎回過労で倒れるのか? [映画業界物語]

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映画監督はどんな仕事をするのか?僕はなぜ毎回過労で倒れるのか?

映画監督というと一般的には撮影現場で怒っている人。偉そうにしている人という印象が強いだろう。それ以外の仕事というと何をしているのか?想像できる人は少ないかもしれない。そこで今回は実録・監督の仕事。そして太田組作品がなぜ低予算で商業映画並みの作品ができるか?を紹介。厳しい部分もあるが紹介する。

監督の多くはシナリオを自分では書かない。脚本家が書いたものに、あれこれ注文をつけて直してもらう。そしてキャスティング。シナリオを読み、どの役を誰に頼むか?決めて行く。連絡するのは演技事務かプロデュサー。自身で依頼はしない。次に演出プラン。それぞれのシーンをどう撮影するか?考える。これがもっとも大事。撮影まで何ヶ月も考え続ける。

それからロケハン。製作費部が探して来たロケ地候補を観に行き「ここはOK」「ここはダメ」と判断する。あとは撮影。ここまで監督がロケ地に行くのは挨拶、ロケハン、撮影の3回くらいだ。

そして編集だが、多くの場合は編集者が編集。繋がったところで監督が見て「このシーンはいらない」「ここは別テイク」とか言って直しを要求。そのあとが音入れ、音楽入れ。これも監督が指示する。こうして映画は完成する。


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さて、太田組の場合ーつまり僕の場合は少し違う。まず、シナリオ。脚本家が書くのではなく、僕自身が書く。もともと脚本家だからOKだ。次にキャスティング。実は書いているときから、ある程度実際の俳優をイメージして書く。「向日葵の丘」でいえば、常盤貴子さんや藤田朋子さんは本人をイメージして書いた。今回の「明日にかける橋」でも何人かは当て書きで本人の魅力が出るように書いてある。

といって、その俳優が出てくれるとは限らない。その場合。そしてイメージする俳優がない場合はキャスティング。希望する俳優を上げて、担当者が事務所に連絡。交渉してもらう。そしてロケハン。通常は制作部が探して来たものを監督は見るだけだが、僕は自分で探す。ロケ地を何ヶ月も歩きまわり、選ぶ。

製作部が探してくれると本当に楽なのに、なぜ監督自身で探すのか?理由のひとつは、そのことで製作部を雇う時期を遅くできる。早く雇うとそれだけ多くのギャラを払わなければならない。僕は制作部としてのギャラはもららわないので、人権費を削減できる。

それと、製作部は優秀なのでシナリオにピッタリのロケ地を見つける。が、ピッタリでなくてもいいのだ。より絵的な或はそこを舞台にすれば別の展開ができるロケ地があれば、それに決めてシナリオを直す。それは制作部にはできない作業。僕が脚本と監督とロケハンを兼ねているからできることなのだ。

そして演出プラン。これもロケ地を自分で探すからいち早く現場での演出を考えることができる。通常だとロケ地を監督が見られるのは撮影1ヶ月前。そこから俳優の動き等を考える。僕の場合は何ヶ月も前から考えることができる。これも大きなメリット。そんなことでロケ地には1年近く数十回通う。そのことで地元を知り、好きになる。だから、映画で地元の魅力を伝えることできる。

あと、通常の監督がしないこと。まず、シナリオ。初期段階では自分でプリントアウトして、製本屋に持ち込む。印刷屋に出せば1000円。自分で作れば500円ほど。500円安い。といっても僕が自宅のプリンターで印刷するので、かなり時間がかかる。50冊とか作るには3日ほどかかる。その後は印刷屋に出すが、毎回、100冊ほど手製のシナリオを作る。時間も労力も取られ大変だが、製作費削減になる。


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そしてスタッフへの連絡。通常はプロデュサーがやるが、毎回、僕はプロデュサーも兼ねる。だから自分で連絡。ロケハンをするたびに写真をスタッフに送る。撮影部、照明部、美術部、演出部と何人にも送る。そして途中経過報告をメール。1日がかりになることもある。本来ならプロデュサーかアシスタントの仕事。だが、僕自身がやることで、その種のスタッフを早い段階から雇わずに済み、人件費を払わずに済む。これも製作費削減に繋がる。

あと、地元との打ち合わせ。これも僕自身。本来はプロデュサーがやり、監督は東京で演出プランに専念するのだが、そうも行かない。通常、初期段階では地元にプロデュサー、脚本家、制作部、監督が行く。4人で行けば、4人分の交通費、宿泊費、食費が必要となる。が、全部僕がやっているので、経費は全て1人分しかかからない。ここでまた製作費削減。あと、市民俳優オーディション。これも通常の映画ではやらない。が、地元で映画への関心が高まるので毎回行なう。



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こんなふうに監督が4人分、5人分の仕事をすることで経費削減ができる。その上、ロケハンでいい場所が見つかればシナリオを書き直すこともできる。キャストをイメージして書くこともできる。仕事量は増えても便利なことも多い。ただ、4人分5人分働いてもギャラは1人分プラスaしかもらわない。

そんなふうに撮影直前まで僕が1人5役やることで、スタッフを雇うのは撮影1ヶ月前からで済む。その分、人件費が下がる。まともな形で映画を作ると最低でも1億円。それをより安く、それでいてクオリティを下げない作品を作るには、こんなやり方をするしかない。だから、映画が完成すると過労で倒れる。それ以前から医者には「休まないと過労死するよ!」と忠告される。でも毎回、遺作のつもり。でないと素敵な作品にはならない。


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そして映画にはトラブルがつきもの。雨が続いたり台風が来れば製作費は超過する。赤字を埋めるのは監督料。そのために完成したとき残るのは借金だけであることが多い。にも関わらず、毎回こう言う人がいる。

「監督は好きで映画を作っているんでしょう? だったら、ギャラはいらないよね?」

趣味で映画作りをしている訳ではない。だが、ロケした町の、地元の人にそう言われることがある。監督の仕事がどんなものなのか?理解してもらえないからだろう。

けど、地元の人が懸命に集めた寄付で作られる映画。その製作費を最大限に有効に使い、最高の作品を作るために、経費を徹底して節約することが大事。だから、僕は撮影までに5人分。撮影後は4人分(監督、編集、プロデュサー、宣伝)の仕事をする。監督が身を切って映画を作るからこそ、スタッフも通常以下のギャラでもがんばってくれる。さらに町の人たちの力を得て映画作りをすることで、低予算でも素晴らしい作品ができる。それが太田組のやり方なのだ。


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