【キャスティングの話をもうひとつする。知名度や演技力だけでは選べない?】 [映画業界物語]
【キャスティングの話をもうひとつする。知名度や演技力だけでも選べない?】
大手映画会社が俳優を選ぶときは役に合っているかどうか?より、有名俳優を揃えることを重用視する。だから、主人公の家族は皆、顔の売れた人ばかり。明らかに家族としておかしい組み合わせであっても、それよりも知名度を優先する。
或は、「この漫画原作の主人公はこの俳優じゃないだろう〜」ということも多い。このときも役に合うかどうかではなく、知名度のある人気俳優を起用したがる。そのために物語に違和感が生まれても、人気を優先する。その俳優のファンに映画館に来てくれることでヒットさせようという目論み。これはまだ分かる。
ある日、プロデュサーがこんなことを言い出す。「昨日、俳優の**さんとパーティで会ってさあ。いい人で、今回の映画に出てもらおう思うんだ。そういうと是非と言われたさあ」監督はいう「でも、もう役はないですよ。全部決まってます」なのにPはこう答える「だったら、役を作ればいいだろう? あ、台詞あるそれなりの役だよ!」ーこんなことをしているから、日本映画はダメになる。
完成したシナリオはもう無駄がないところまで削ぎ落とされている。その上でキャスティングをしている。そんな段階で、台詞のある、それなりの役を作るなんて、物語を壊すことに繋がる。キャラクターにはそれぞれ使命や役割がある。伏線があり微妙に繋がっている。そこに何ら関連性のない役を入れ込むことはできないのだ。が、多くのPはシナリオ文法が分からず。「彼は有名だから出るとプラスになる!」としか考えない。
また別の悩みもある。僕自身の映画で10代の女優4人がメイン。選ぶのはあと1人となった。これまでの子は皆、できる実力派。ルックスもいい。そこに抜群に魅力的な女の子プロフィールが送られて来た。一目見て「行ける!」と感じた。しかし、同じキャラの女優をすでにキャスティングしている。「でも、魅力的なら、その子も入れればいいじゃん?』と言われそうだが、ダメなんだ。
4人の中に同じキャラがいると物語がうまく稼働しない。違うタイプ同士が対峙することでドラマは盛り上がる。アルパチーノとダスティン・ホフマンが共演するようなもの。悔しいけど、その子は諦めた。その後、僕が選んだ子も選ばなかった子もブレイク。今も活躍。選ばなかった子は銀行や酒のCMにも出演。未だに悔しいが、大事なのは物語なのだ。
そんなふうに無駄な役を作ることは物語を壊してしまう。どんな魅力的な俳優でも、バランスが大事。似たようなタイプが並ぶと、これも物語を壊す。さらに言えば、漫才と一緒で突っ込みタイプの俳優とボケタイプがいる。それを人気だけで選び、ボケ同士を選ぶと物語が進まなくなる。ボケ役は突っ込みがいてこそ盛り上がる。本当にむずかしい。
或は俳優同士の相性。この2人はうまくいくか?も大事。恋人同士になれるか?友達になれるか?俳優は相手が嫌な奴でも、仲良くしようとするし、恋人でも、友達でも演じてくれるが、どこか?ぎこちなさが出る。相性が合うことで、より仲の良さが出て感動物語を盛り上げるのだ。大手の映画は相性より、知名度や事務所を優先する。だから、大作でも???の作品が出来てしまう。
全てはキャスティング。プロフィールに「私はボケ担当です」とは書かれていない。「私は***キャラです」「俳優の***さんとは仲がいいです」とは記載しない。それを監督が見抜き選ぶことが大事。知名度や演技力だけではないのだ。
2017-05-12 10:38
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