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待っていてもチャンスは来ない世界。監督業も俳優業も同じ=嫌われても動かなければダメだ。 [映画業界物語]

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待っていてもチャンスは来ない世界。監督業も俳優業も同じ=嫌われても動かなければダメだ。

アメリカから帰国、映画監督を目指し、

アルバイトをしながらシナリオを書いていて時期がある。当時というか、今でもそうだが、監督になる王道、近道というのはすでに閉ざされていた。映画会社に入り、10年助監督をしたら監督になれる。という映画黄金期のシステムは崩壊していた。

高校時代から日米の監督がどのようにして夢を掴んだか?を調べ、できることをしてみた。シナリオを書いて売り込むこと。あの「ロッキー」のスタローンはあのシナリオを書き、ユナイトに売り込んだ。自身が主演するという条件で。

最近でいうと、ある青年が自作のシナリオをワーナーブラザースに売り込み。監督も任せられた。それがクリストファーノーラン。映画は「バットマン ビギンズ」だ。「今までのバットマンは違う。これこそが本当のバットマンだ」とプレゼンしたらしい。だが、そんな売り込み日本人は苦手。また、飛び込みでは会ってもらえない。相手にしてもらえないことも多い。

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学生映画コンクールで賞を取るとか、

親が芸能人であるとか、何かがないと、なかなか認められない国。おまけに僕は営業が下手。話すのは得意だが、自分や自身の作品を売り込むのは苦手。広告代理店の友人とか見ていると、その辺がとても上手い。そもそも、クリエーターというのはそこが得意でない人が多い。作品を作るのと、それを売るのは別の資質だ。

「空手バカ一代」を読むと、極真会を作った大山倍達はカラテでは誰にも負けないが、本部建設の資金を集めるために、資産家にお願いして回るのが一番辛かったいう。その気持ち。とてもよく分かる。そんな時、島田紳助さんがテレビで言っていた。

「努力した奴は必ず売れる。

芸人は皆そうや。ただ、芸をする。笑わせるというだけではアカン。岡本夏生でもレースクイーンで人気出たけど、当時から自分の写真入ったテレフォンカード作って、仕事したスタッフさんに配ってた。またお願いしますと頭下げてた。ダチョウ倶楽部も努力した。どっちも絶対に売れると思てた。あいつら売れたやろ?努力せな売れへんねん」

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いいシナリオを書くだけではダメ。

懸賞に出して待っているだけでは無理。テレフォンカード配らなくても、いろんな人に会って、アピールして、覚えてもらう。監督業も同じだと感じた。それは俳優業も同じ。思い当たることが最近は多い。太田組に出演した若手。

その後、一度も連絡ない。こちらから電話しようと思ったけど、勘違いするといけないから止める。次も呼んでもらえると思っているのだろう。あるいは2年前のワークショップで気になった役者。今回も来れば...と思うが応募はない。知らないのか?前回、役がもらえなかったからか?彼らの思いは分かる。

「僕なんか連絡しても」

「何度も参加したら嫌がられるかも」

「迷惑じゃないだろうか?」


そう思っているはず。僕自身がそうだった。シナリオを見せてダメだしされたら、もう一度!とは言いずらかった。が、それでは何も変わらない事。あの頃に痛感した。動かなければだめ。足掻かなければいけない。


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太田組作品に出演する俳優が毎回、輝いている理由?=そもそもの始まりはあの国民的女優さん! [映画業界物語]

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太田組作品に出演する俳優が毎回、輝いている理由?=そもそもの始まりはあの国民的女優さん!

「太田組に出る俳優さんたち。毎回、魅力的ですよね。もともといい役者なのに、太田組では特に輝いている。その人の作品ベスト3に入るものが多い。何で太田監督の作品に出ると皆、輝くんですかね?」

これも時々聞かれる。嬉しい話だ。答えは先の記事で書いた通り。ほとんどの場合。その俳優さんに合わせた当て書きだから。その人が輝くような役にして、物語にしている。それでいて他の作品では見せない。見られなかった魅力を引き出す役にしてあるから。

ファッションでいえばオーダーメイド。その俳優に合わせてデザインし、身の丈を図った衣装なのだ。多くの場合。役という衣装が用意され、それを着れるように俳優が頑張る訳だが、努力だけでは行かないことがある。痩せることはできても、背を伸ばすことはできない。それを演劇学校では「どんな役でも演じられる俳優になれ!」と教えるが、できないものはできない。

それなら、その人の魅力が発揮できる役を用意した方が有効だと僕は考える。始まりは藤田朋子さんだった。ある日米合作映画でご一緒して、その後、僕が監督デビューしたら「太田さんの映画に出たい!」と言ってくれた。国民的俳優が僕の映画なんかに出ないでしょう?と最初は冗談だと思ったらマジというので、考えた。

先の法則に従い、彼女がかつて演じたことのない役。それでいて藤田朋子の魅力が全開になること。もちろん、物語の中に役として定着することは当然だ。これはルービックキューブの6面を同時にあわすような作業。5年ほど考え、藤田さんが出演した舞台をヒントにある役を思いつく。「向日葵の丘」のエリカである。帰国子女、映画が好き、お茶目、でも、悲しい過去を抱えている。「けど、多忙な女優さんだし、事務所に断られたらどうしよう?」と不安だったが、出演してくれた。

それもお願いしてもいないのに、髪を金髪に染めて熱演してくれた。髪の色を変えるというのは俳優にとって大変なことで、他の仕事に差し支える。にも関わらず、そこまでしてくれたのは役に対する熱いものがあったからだ。藤田さんは見事にエリカを演じてくれた。そのあと「次回もよろしくね!」と言ってもらえたので、次の作品でもシナリオの段階で藤田さんの役を考えた。これまでに演じたことのない。それでいて魅力的な....。前回は5年考えたが、時間がない。

朝起きてから寝るまで藤田さんの役を考える。何日も考える。そして思いついたのが、「バックトウザ・フューチャー」でいうドク(クリストファーロイド)の日本版とも言える。里美先生の役。「明日にかける橋」だ。ドクとは違う、泣かせる場面もある。これもあとで「ドクは一番美味しい役じゃない?」と喜んでくれたそうだ。

しかし、国民的俳優である藤田さんに出てもらえる意味は大きい。作品クオリティが確実に上がる。名優の力は絶大。ありがたい。そんなわけでシナリオを書くときは、毎回、今度も出てもらえるのなら、どんな役がいいか?で苦闘する。嬉しいことだが、大変な作業でもある。


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ワークショプで出会った実力派たち。何が決め手で映画出演になったのか? [映画業界物語]

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ワークショプで出会った実力派たち。何が決めてで映画出演になったのか?

前回のワークショップ。探していた人材を見つけた。40代おじさん。10代男の子。あと、怪しい役1人。もちろんずば抜けていい役者がいれば、その人に合わせた役を作るつもりだった。あるいはすでに上がっているシナリオに登場する役を、その俳優に合わせて直すことも考えていた。

が、基本はワークショップ。若い人たちの勉強になればと思っていた。実際にやる気ある人材が見つかり、撮影に参加してもらった。残念な例もある。以前、僕の映画に出てくれた俳優も参加していた。彼の実力はよく知っている。「来なくてもいいのに〜」と思ったが、芝居を見て感じた。

「別のキャラだが、今回のあの役も彼で行けるかな?」

他にも候補者がいたが、彼がダントツ。最終日に決戦で決めようと思ったら、彼は来なかった。それはもう実力ではなく運がないと言うこと。残ったメンバーの中から決める。残り候補者3人の内1人は来れないと連絡。残りは2人。が、その内の1人は早引きするといい。決戦ができず、残り1人に決定か?と思ったら、来れないはずの1人が来て決戦。彼が勝ち残った。本当に誰を選んでもいいくらいに実力派ばかり。最後は運だった。

若手の方も、決戦となった。

実力は互角。ルックスも互角。後日、スケジュールを聞くと片方がアウト。もう片方はオーケー。それで決まった。3人目はもう向かうところ敵なし。他に候補になる役者はいなかった。ただ、彼も実力がある訳ではない。キャラがいい。それでも彼の演技を実際に見れたことで確信を持てた。行けると。

そんなことで、それぞれに鈴木杏や田中美里、板尾創路と言うすごい面々と共演してもらった。事務所が大手とか、売れている俳優とか、過去に有名作に出ているとか言う俳優たちではないが、第一線の人たちに負けない芝居を見せてくれた。こんな風に探せば、できる役者たちはいる。が、小さな事務所にはオーデイション情報がいかないことが多い。だから、チャンスがない。

あるいは5分10分のオーディションで実力発揮できない俳優もいる。でも、変に器用な奴より、そんなタイプに本格派がいる。その意味で今の映画界はなかなかの人材が見つけにくい環境。だからワークショップの意味は大きい。今回も名もなき実力派との出会いを期待している。(写真は前回の様子)

参加者募集中=>https://cinematic-arts.blog.ss-blog.jp/2019-10-28



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デビューから15年。ネクスト・ゲイトを目指すためには? [映画業界物語]

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デビューから15年。ネクスト・ゲイトを目指すためには?

映画監督業は80、90歳まで仕事をするという話を書いたが、誰もが出来るとは限らない。健康問題があるし、それ以上にヒットを取らないと依頼が来なくなる。80歳どころか現在でも、40代の監督でも多くは副業で生活している。年に1本監督できる人は日本に数人しかいない。そんな厳しい世界で、この先もやっていけるのか?と、不安になる。

今年は2020年。僕のデビュー作「ストロベリーフィールズ」を監督したが2005年。つまり15年目だ。ついこの間、デビュー10周年だったが、全く気づかずにその年を終えた。なのにもう15年。15年で6本。単純計算で2.5年で1本ということ。映画は企画から完成公開まで最低でも1年。下手すれば3年。そう考えると「まずまずね」と言われる。

ま、毎回、宣伝にも参加するので、そのくらいのスタンスになるが、先輩でも1本撮っただけで、その後は監督作品なし。10年間1本も撮っていないという人もいる。それに比べたら恵まれている。にも関わらず僕はワガママで、やりたい作品しかやらない。合わない作品。興味が持てない映画はしない。その代わりやるときは毎回遺作のつもり。過労で本当に死にそうなる。

でも、あまり真剣にやるから「ギャラいらないんじゃないの?」と言われたり、製作会社から「監督料安くても真剣にやるから、もっと下げよう」と思われたりもした。まあ、そんな連中とは距離を置き、いいもの作ろう!というスタッフとだけ仕事をするようにしている。が、そろそろ、もう一つ上のステージを目指し、よりいい作品を撮るにはどうするか?も考えていかねばならない。

現在の太田組スタッフは皆、素晴らしい。俳優部も毎回、素敵な面々が出てくれる。プロダクションと癒着しない。キャスティングも横槍はなし、人気があるからとアイドルを起用したりはしない。金を抜くことしか考えないPも排除。映画作り環境としてはかなりいい。では、次にすべきことは何なのか? あれこれあるのだが、考え中だ。


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映画人生を送っていると実感できない年月の流れ=でも、同級生は来年で定年?! [映画業界物語]

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映画人生を送っていると実感できない年月の流れ=でも、同級生は来年で定年?!

久々にテレビを見て、あれこれ感じた。どうも僕は未だに17歳の気分で、今も「だから大人は信用できない」とか言ってしまうことがあるが、お前こそが大人だろ?と言われる。来年にはもう60代に突入。信じられない。今、50代というのも信じがたく、40代も実感ないままに終わっている。30代?それならありかな? でも、発想は未だに17歳から進歩していないだろう。

実感がない理由には結婚をしていないということがある。子供の成長を見つめることで、年月を感じるものだ。また、会社員なら、新入社員が入ってきたり、課長や部長に昇進したり、定年を迎えたりで実感する。映画の仕事を、それも結婚せずに続けていると、時の流れを感じるのは難しい。髪はすっかり白くなったが、年齢による老化をあまり感じない。

でも、考えてみると身の回りでは月日が流れている。友人の娘。この間までモーニング娘。の矢口ファンだと言う中学生だったのに、今は働いて家計を助けているという。静岡の友人は来年、定年なのですでに準備を始めたと年賀状をくれた。お世話になった方が定年後も会社で働いていたが、春から完全にリタイヤーとか聞くと、やはり時代の推移を感じる。

撮影現場でも今や僕が最年長。19歳の時に映画の仕事を始めたので、(その後、留学してブランクあり)あの頃は20代が周りにおらず、上の先輩は30代。「ウエストサイド物語」公開の年に生まれたというと、先輩たちから「ついこの間だろ!」と言われた。が、今や、現場の後輩たち、俳優たちは昭和、どころか平成生まれ。あと十数年で令和生まれも出てくるだろう。

僕が子供の頃に、2時代前というと明治。そう、明治生まれのおじいさんと仕事するようなものなのだ。しかし、実感がない。矢沢永吉は昨年で70歳だが、まだステージに立ち続けている。それでも秋のライブでは体調不良で公演延期。デビューして初めてのこと。「60後半から体のあちこちに問題が出てきた」という。だとしたら僕はあと5年後くらいからだろう。まだ、実感しないが、そういう年齢なのだ。



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なぜ、人は夢を否定したがるのか? 若い人を抑え付けようとするのか?=自分の知らないものを否定、拒否してしまう日本人 [映画業界物語]

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なぜ、人は夢を否定したがるのか? 若い人を抑え付けようとするのか?=自分の知らないものを否定、拒否してしまう日本人

高校時代「映画監督になる!」というと、あらゆる人たちが反対した。親、親戚、教師、友人、近所の人。だから、なるべく彼らとは話さないようにしていたのだが、あれこれ言われた。

「世の中甘くない」「夢はしょせん夢だ」「そんな簡単に行かない」「才能あるのか?」「無理に決まっている」等々。

 しかし、あとで考えると、その大人たちの中で映画界で働いたことがある人は誰もいなかった。友人が映画の世界で仕事していたという人もいない。つまり、自分たちが知らない世界のことをあれこれ、「厳しい」とか、「才能が必要」とか、「甘くない」とか想像で言っているだけだったのだ。

 要は「諦めろ」「やめておけ」といいたい人ばかりだった。いずれにしても自身がやったことがないこと。経験のないことなのに、あれこれ注意、忠告してくるのだ。なぜ、何ら根拠のない、経験もないことをアドバイスしたがるのか? もうひとつ言えば、ほとんどが、こちらから相談した訳ではない。聞いてもいないのに先方から、あれこれ言っていることが多いのも特徴。

 その背景は友人や後輩。或は子供たちを「応援したい」「役に立ちたい」「酷い目に遭わせたくない」という本来、優しさから忠告したり、アドバイスしてしまうだろう。傷ついたり、人生を台無しにしたり、辛い生活を送ってほしくないという願いからの言動だ。
 
 だとしたら、なぜ、自分の知らない世界。或は経験のないことを「簡単じゃない」「世の中甘くない」と決めつけて、相手の夢を否定したがるのか? 自分がよく知る世界で、こんな問題がある。こんな厳しい側面があるというのなら分かる。知らない世界を、経験のないことを「やめた方がいい」と諭すのはどういうことか?

それを「親切心」だけで理解するのは厳しいものがある。本当の親切とは、自分ができることで応援する。知っていることを伝える。危険な部分を教えるということであり、知らないこと。経験のないことを忠告することではない。それは横暴であり、本人からすれば邪魔されているだけと思える。

人には自分が経験していない未知なものに対して不安感がある。その知らないものに関して、聞きかじった知識でも、勝手な想像をして、先の「親切心」という名目で止めようとする。が、それは単に古い価値観や自分が知る方法論から離れられないだけではないか? 自分の知らない世界や未経験のものを否定したいだけではないか? その発想が近年の日本をダメにしているのでは?と考えたりする。


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撮影現場で大切な「状況把握力」=それに欠ける監督やPだと殺伐とした現場になる? [映画業界物語]

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撮影現場で大切な「状況把握力」=それに欠ける監督やPだと殺伐とした現場になる?

撮影現場での状況把握力エピソード。もう一つ紹介しよう。撮影を問題なく進めるためには俳優やスタッフの体調や性格も把握しなければならないという話を先に書いた。が、監督にとって他で状況把握をせねばならない場面がある。

撮影前に怒鳴っているベテランスタッフがいる。制作部の若い子が叱れれている。一見、若手がヘマをして先輩に注意されているようだ。が、本当にそうなのか? 特に我が太田組では「怒鳴る」行為は禁止。昔の現場では怒鳴るどころ「殴る」も日常茶飯事だったが、最近の若手はそんな目に遭うとすぐに辞めてしまう。

ひ弱というのではない。そもそも現場で殴る、怒鳴るは良くない。僕はその手のスタッフはできる限り呼ばない。現場の空気が悪くなるし、若手俳優が怯えて芝居ができなくなる。太田組はそれを大事にする。だから、もし、怒鳴っているベテランを見たら、よほどのことだ。状況を把握せねばならない。

ベテランだから正しい。若手だからミスしたとは限らない。ベテランが古臭い方法論を振り回すこともある。徹夜続きで、イライラが募っているのかも? 仕事量が多すぎる? あるいは叱られている若手以外に問題があり、その怒りを若手にぶつけてしまうこともある。監督は本来、作品を作るのが本分だが、スタッフやキャストが気持ちよく仕事ができる環境づくりも大事だと考える。

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ま、本来、それはPの仕事だが、僕はそれを兼ねていることが多いというのもある。弁当が不味い、少ない。ということでベテランが不満を持っているということもある。その原因を把握して解決しないと、同じ問題はまた起こり、現場の空気が悪くなる。作品クオリティを落とすことにもつながる。

原因となった人を叱っても解決しない。例えば弁当が問題なら、一度、どこかで宴会をする。地元の人に相談して焼肉パーティをすると皆、元気になることがある。大浴場のある風呂屋や温泉に皆で行く。そんなことでトラブルを乗り越えることができる。基本、スタッフは「いいものを作りたい!」という熱い人たち。問題があっても前に進もうと思ってくれる。

業界には「ギャラ安いから、このくらいでいいだろ?」という人もいるが、太田組にそんなタイプはいないし、絶対に呼ばない。そんな風に状況把握をし、原因や背景を突き止めること。映画撮影ではとても大事。その力に欠ける監督やPの現場は、よくその手のことで揉める。映画業界には大切な力なのだ。



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俳優業は苦しみ悶える孤独な仕事=人はそれを理解せず。精神障害を起こす女優も少なくない。 [映画業界物語]

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俳優業は苦しみ悶える孤独な仕事=人はそれを理解せず。精神障害を起こす女優も少なくない。

俳優業というのは見た目ほど派手で楽しいものではない。むしろ、精神的にギリギリまでの戦い。神経を摩り下ろすような仕事だ。もちろん、俳優志望の若い子たちのように「憧れ」だけで、俳優ごっこ的な仕事をしているのは別だ。そして、そんな子たちはやがて消えて行く。俳優ブランドに憧れているだけだからだ。

演技というのはセリフを覚えて、喋るだけの作業ではない。神経が切れるくらいに考え抜き、セリフ、表情、動き、全てを駆使して、感情を伝えるものなのだ。常人ではできない。まず、鋭い感受性が必要。他人の悲しいを自分のことのように受け止める感性が大事。だからこそ、自分の体験でないことで悲しみ、怒り、喜ぶことができる。

その感受性があった上に、それを表現するためのスキルを磨かなければならない。ある意味でミュージシャンとも似ている。バイオリンで素晴らしい曲を弾くには感受性と共に熟練された技術も必要なのと同じだ。が、俳優の場合。その熟練が理解されないことが多く、「才能があれば」と勘違いして、営業ばかりしている子がいるが、技術も感性も磨かないと俳優業はできない。

感受性が鋭いということは、日常生活が送りにくいということもある。鈍感だと気づかないで済むことが、鋭いと察してしまう。それについて考える。悩む。苦しい。仕事以外でもそんなことを毎日、経験することになるのだ。そのために神経が参ってしまい、精神病になる。ノイローゼになる。ドラッグに走る。新興宗教に入る。

僕がよく知る女優さん。数人。有名ではないが、頑張っていた子たちも、おかしくなったことがある(今もおかしいまま)。病名までは突き止められないが、精神障害を発症している。詳しく書くと誰だか分かるの避けるが、暴れたり、叫んだりということではない。精神障害の症状はマスコミが避けて通るので、正確な知識を持つ人が少ないので誤解することが多いが、簡単にいうと人との意思疎通ができなくなること。でも、分かりづらく、周りの人たちも気づかない。小さなズレから始まり、次第に問題が大きくなる。

周りは「最近、少し変」とか思い、問題が起こると、次第に距離を置く。本人も気づかない。「周りが冷たい。嫉妬している」という解釈をしがち。以前に紹介した統合失調症や双極性障害もそうだが、情報処理能力の低下。そのことで世間や人と不協和音が起きる。症状が酷くならないとまず気づかない。

気づいても本人に「精神病だよ」「精神障害かも」というのも難しい。周りは「酷い事言うな!」と言いだす。できることは距離を置いて被害を避けるしかない。そんなことは芸能界でよくある。特に女優に多い。でも、それくらいに神経をすり減らし、自分を追い詰める仕事なのだ。ハリウッドでもドラッグに走ったり、人嫌いになる。過食症。あるいは拒食症になる俳優がいるのは、同じ背景である。



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太田組は有名俳優だけでなく、新人でも当て書き=オーディションで決めた子に合わせて役を直すことも? [映画業界物語]

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太田組は有名俳優だけでなく、新人でも当て書き
=オーディションで決めた子に合わせて役を直すことも?

シナリオ執筆時に、俳優を想定し当て書きをすると書いた。が、それのみではない。シナリオが完成。オーディションを行う。その中に実力派や個性派がいたとする。ただ、シナリオ上の役とは少し違う。そんな時は、その子に合わして役の方を直すこともある。本来は許されないこと。脚本家の先生が大激怒する。

「撮影中に訳あって、物語を少し変更するのなら仕方ないが、キャラを直すなんてとんでもない!」

でも、太田組作品の脚本は全て僕自身が書いている。怒られることはない。通常はキャラが変われば物語が成立しなくなるのだが、僕が脚本を書いた張本人でもあるので、どこまでならキャラを変えても物語が破綻しないか?を承知している。物語を崩さずにキャラを変えることができる。もちろん限界はあるが、できる。

そのことで魅力的な新人を出演させられることが作品にプラス。役に近くても、魅力ない俳優が出ては作品にマイナス。新人だけではない。ベテラン俳優であっても、出演OKが出てから、役を直す。その俳優がより魅力的で、立つようにする。主演だけではなく、脇でも何でも直す。

オーディションでその役に相応しいと決めた新人の場合でも、その俳優と話をして感じるものがあれば、セリフを直す。そのことでより演じやすく、魅力的にするためだ。新人でもそれなので、すでによく知る俳優の場合も同様。有名ではないが、頑張っている。彼、あるいは彼女が出れる役はないか?と考える。

全くの新人よりよく知る人たちの方が安心だ。以前に小さな役で出てもらったとか、ある仕事でご一緒したとか。その意味でワークショップに来てくれた俳優なら、よりよく実力が分かる。毎回、4時間ほど演技してもらうし、話もできる。

だが、運命とは残酷なもので「前回、来てくれたあの俳優さん。今回、ぴったりな役があるのになあ」という時には来ない。流石に「役あるので、もう一度芝居を見せて欲しい」とは言えないので、メールで「ワークショップまたやるので」と連絡しても「今回はバイトの日と重なり残念です」と返事が来たり。

でも、それは縁がなかったということ。1年前のワークショップでは良くても、今は分からない。それが確認できなくては依頼できない。とにかく大事なのは、その俳優が今、抱える人生を役に反映させること。その時に輝く演技ができる。それを引き出すのが太田組流の演出なのである。



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太田組は新人も当て書き=ワークショップで見つけた俳優に合わせて役を直すことも?参加者募集中! [映画業界物語]

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太田組は有名俳優だけでなく、新人でも当て書き=オーディションで決めた子に合わせて役を直すことも?

シナリオ執筆時に、俳優を想定し当て書きをすると書いた。が、それのみではない。シナリオが完成。オーディションを行う。その中に実力派や個性派がいたとする。ただ、シナリオ上の役とは少し違う。そんな時は、その子に合わして役の方を直すこともある。本来は許されないこと。脚本家の先生が大激怒する。

「撮影中に訳あって、物語を少し変更するのなら仕方ないが、キャラを直すなんてとんでもない!」

でも、太田組作品の脚本は全て僕自身が書いている。怒られることはない。通常はキャラが変われば物語が成立しなくなるのだが、僕が脚本を書いた張本人でもあるので、どこまでならキャラを変えても物語が破綻しないか?を承知している。物語を崩さずにキャラを変えることができる。もちろん限界はあるが、できる。

そのことで魅力的な新人を出演させられることが作品にプラス。役に近くても、魅力ない俳優が出ては作品にマイナス。新人だけではない。ベテラン俳優であっても、出演OKが出てから、役を直す。その俳優がより魅力的で、立つようにする。主演だけではなく、脇でも何でも直す。

オーディションでその役に相応しいと決めた新人の場合でも、その俳優と話をして感じるものがあれば、セリフを直す。そのことでより演じやすく、魅力的にするためだ。新人でもそれなので、すでによく知る俳優の場合も同様。有名ではないが、頑張っている。彼、あるいは彼女が出れる役はないか?と考える。

全くの新人よりよく知る人たちの方が安心だ。以前に小さな役で出てもらったとか、ある仕事でご一緒したとか。その意味でワークショップに来てくれた俳優なら、よりよく実力が分かる。毎回、4時間ほど演技してもらうし、話もできる。

だが、運命とは残酷なもので「前回、来てくれたあの俳優さん。今回、ぴったりな役があるのになあ」という時には来ない。流石に「役あるので、もう一度芝居を見せて欲しい」とは言えないので、メールで「ワークショップまたやるので」と連絡しても「今回はバイトの日と重なり残念です」と返事が来たり。

でも、それは縁がなかったということ。1年前のワークショップでは良くても、今は分からない。それが確認できなくては依頼できない。とにかく大事なのは、その俳優が今、抱える人生を役に反映させること。その時に輝く演技ができる。それを引き出すのが太田組流の演出なのである。


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監督はキャスティングをしてこそ監督。なのに、それが出来ない映画が多い?=太田組ではキャスティング前からマル秘演出? [映画業界物語]

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監督はキャスティングをしてこそ監督。なのに、それが出来ない映画が多い
=太田組ではキャスティング前からするマル秘演出?

企業映画では監督が決まる前に、多くの俳優がすでに決まっていることが多い。シナリオも出来ていて、最後に監督が決まる。Pから本を渡され「よろしくね〜」と言われる。複数の企業が出資した委員会方式でよくあることだが、それでいい映画が出来る訳が無い。キャスティングからが演出。それを監督にさせないというだけで本来はアウトだ。

伊丹十三監督の父、伊丹万作さんもいうように「100の演出より1の適役。キャスティングが大事」本当にその通り。往往にしてPは「主演は人気のあるあの子がいいな。相手役は大手事務所が売り出し中の**を使おう」とかいう打算だけで決める。適役かどうか?考えない。「その役、その俳優じゃないだろう?」という日本映画が多いのはその背景がある。

さて、そんな日本映画界なのに、と聞かれることがある。「太田組は低予算ながら、毎回、素晴らしい俳優さんが出演、感動的な作品ができるのはなぜですか?」実は先に挙げた状況を打破するある秘策を使っている。それを書いてしまうとマズイのだが、絶対にマネできないので紹介する。

キャスティングを監督がするのは当然だ。しない段階でアウト。だが、こんな場合はどうか? シナリオは面白いが、その主人公を演じられる俳優がいない。ハリウッドにならいるが、日本人の役だ。これは漫画原作の映画化でも同じ問題が起こるのだが、描かれたキャラクターを現実で探すのは難しい。

結局、顔が似ている人気俳優に依頼。それっぽい芝居をしてもらう。それではそっくりショーではないか? 「おー似てる似てる」「そんなイメージだなあ」ではダメなのだ。漫画原作でなくても、破天荒なキャラクターが演じられる俳優がおらず、昔なら横山やすしのような役を、破天荒でない真面目な俳優がそれなりに演じても伝わらない。

それなのに無理して作るから「なんか、違うよな〜」と観客は感じる。さて、太田組の対応法。どうすれば解決できるのか? 僕はシナリオを書く段階からキャスティングして書く。つまり当て書きをする。この役は俳優の**さん。これは女優の**さん。だから「この役ができる人がいない」にはならない。

ただ、その本人のために書かれた役だから、本人が演じれば他の誰が演じるより映える。おまけにシナリオを書くときに、その人がよく演じる役には絶対にしない。これまで見せたことない部分を引き出す、あるいは演じたことがない役にする。この人がそんな役やるのか?というキャラにする。そのことで俳優さんは燃えてくれる。俳優は挑戦者だ。難しい役に挑む。経験のない役を演じるとき燃える。真剣になる。

なのに、人気が出ると同じような役ばかり依頼される。挑戦できない。そんなときに「え? これ私がやるの?」という役が来れば「よし!」と思ってもらえる。そんな風に、当て書きであり、他の俳優には出来ない役でもあること。経験のない役なので挑戦したくなること。この2つのメリットがある。が、本人が出れないと大変。その辺の事情はまた別のときにか書かせてもらう。


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シナリオ、演出、俳優。映画でそれぞれで大切なこと? [映画業界物語]

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シナリオ、演出、俳優。 

「映画はシナリオが一番大事。監督がバカでもシナリオが良ければそこそこの映画になる」と良く言う。実祭、シナリオがダメだと、どんな巨匠が演出しても駄作にしかならない。本当にその通り。と言ってシナリオが良くても監督がダメだと、やはりそれなりの作品にしかならないし、俳優の重要性を忘れてはいけない。

この10年。僕は幸運にも本当に凄い俳優さんたちと仕事ができた。長門裕之、津川雅彦、松坂慶子、宝田明、と映画黄金期から活躍する名優たちから、いしだ壱成、鈴木杏、常盤貴子、田中美里、藤田朋子、山本太郎、谷村美月と、テレビ時代にトップランナーとして走り続けた若手まで。俳優の力とはどれだけ凄いものか?痛感した。

「一流監督は三流の俳優でも見事な演技をさせる」てなことを言うが、シナリオの話と同じで、多少は良くなるが...と言うことでしかないのが現実。三流が演出だけで良くなることなんてない。本物のすごさを知れば、そんなことは言えない。もし、三流の俳優が見事な演技をしたのなら、その人がもともと素晴らしい資質を持っており、それを監督が開花させたと言うのが本当だろう。

そこからいえば、監督がダメでも一流の俳優を使えば、そこそこの作品が出来る。名優たちは何も言わなくても見事な芝居をしてくれるからだ。では、監督に必要なことは何かと言うと、無名俳優でも、その人の長所を見抜き演じさせること。一流の俳優でも、これまでに発揮していない個性を引き出すことなのだ。これは僕のテーマでもあり、太田組のモットーでもある。

70年代に2枚目で人気があったある俳優。人気はあるが、芝居はそこそこ。出演作もヒットしない。その俳優が80年代に入って時代劇に出演して、俄然いい役者になった。現代劇では昔ながらの2枚目の兄ちゃんなのに、時代劇だととても存在感が出ていた。時代劇に抜擢したディレクターなのか、Pなのか?何れにしても鋭い。

そんな風に俳優の長所、魅力、新しい面を引き出すのが監督の仕事。つまり、撮影現場以前、キャスティングから演出は始まっているのだ。この話。また続きを書く。


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どうすれば心に刺さる感動的な物語を作れるのか? [映画業界物語]

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どうすれば心に刺さる感動的な物語を作れるのか?

この業界で物語を作るとき。よくあるパターン。

「主人公は何歳にしよう? 映画を観にくる年代は10〜20代だから、若い男性にしよう。この世代は恋愛に興味があるからラブストーリー。スマホが絡む事件にして...昔のすれ違いドラマみたいなのはどう?」

と脚本家と監督が話をして商品開発のように物語を作っていく。が、机の上で作られたものはロクなものがない。

不思議なもので、理屈で作られた物語。感動する設定で、感動的なドラマにしても感動できないことが多い。対してアメリカ映画が好きなパターンで「This is a Ture story」とテロップが出るものがある。現実にあったことをドラマ化している。

「まじ? そんなことあったの!」

と言う内容でも、本当にあった話は重く、心に刺さる。これは本当に不思議なんだけど、それが事実だと知らなくても説得力が違う。山崎豊子の小説が重く、心に残るのは、物語のほとんどが現実にあった話だからだろう。「不毛地帯」「二つの祖国」「沈まぬ太陽」どれも忘れられない名作だ。

人は誰でも本物を見抜く力があるのだろう。机の上で作られた物語だと感動的でも、泣けない。けど、現実にあったことはリアリティがあり、心にのしかかる。だから、シナリオ講座や漫画セミナーでは「まず、自分の経験を物語にしろ」と言う。まだ力のない作家が頭で想像したことを描いても説得力がないと言うこともあるが、現実は強いと言うことでもある。

僕も修行時代(バイトをしながら毎日、シナリオを書いていた30代)あれこれ書いていたが、自分で読んでも絵空事のような物語。5年ほど書き続け、どうにか脚本家デビューはしたが、本当の意味で心に刺さる作品がかけたのは、さらに数年後のこと。それは机の上で考えたウケ狙いの物語ではなく、よく知る友人の悲劇を描いたもの。

本当の物語は心に伝わる。もう一つ大事なのは作家が心から書きたい!と思っていること。頼まれて嫌々、書いた物語。今時の若い人にウケそうなストーリーを書いても伝わらない。僕が10代の時に観た日本の青春映画が本当にクソだったのは「今時の若い奴はさあ。この手の話が好きなんだよぉ」と若者をバカにした中年親父が書いた物語だったからだろう。

大切なのは机の上で作った物語でないこと。作家が強い関心を持ち、心から書きたい!と思う題材であることだ。



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物語はどのようにして作られるのか? 名古屋で思いついた「明日にかける橋」 [映画業界物語]

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物語はどのようにして作られるのか? 名古屋で思いついた「明日にかける橋」

「太田監督は毎回、どうやって、あんな感動的な物語を考えるのですか?」

と聞かれることがある。

「と言うのも、通常映画はラストに1回ほろっとするだけでも泣ける映画」と言われるのに、監督の映画は何度も泣ける。1本の映画で3−4回感動する。それも5本の映画全てが泣けた。普通は感動作を作る監督でも、次の作品では全く泣けなかったりする。なのに何で毎回泣けるのか?どうやって物語を考えるのか?不思議なんです」

と言う。時々、ある質問なので書いてみる。多くの日本映画は原作がある。小説、漫画、翻訳物、それらを脚本家が読んで映像表現で伝える形に直し、シナリオ化する。が、僕の映画は全てオリジナル・シナリオ。原作ものはない。1から僕が物語を考えてシナリオにして、自分で演出する。

が、どうやって物語を書くか?と改めて聞かれると、どう説明していいか?戸惑う。「明日にかける橋」の場合は、2006年。今から14年前に名古屋で思いついた。僕の初監督作「ストロベリーフィールズ」の名古屋公開初日に合わせて、前日から現地入り。配給会社が経費を出してくれなかったので自腹で交通費、宿泊費を負担。

なるべく安いところ....と駅前のサウナに泊まった。そこの休憩室にいるのは中年のおじさんばかり。皆、疲れ果ていて、いや、人生に疲れていて、何に対しても希望が持てないでいるようだ。「この人たちがもう一度、熱く燃えて行動するとしたら、どんな時だろう?」と考えた。妻や子供からは粗大ゴミ扱いされ。会社での出世も見込めない。給料は安い。誰でも出来る仕事。「俺なんていなくてもいいんだよな〜」と考えているような人ばかり。

でも、若い頃はクラスメートの可愛い女子に、ラブレター書いたり、密かに憧れたりしていたんだろうなあ。と想像。でも、もし、その子が交通事故で死んでいたら、せっかく仲良くなったのにいなくなったなら、その悲しみを一生背負い。おじさんになった今も、その子のことを思い出すだろう。そのおじさんがもし、タイムスリップして、その子が事故に遭う前の日に戻ったらどうだろう?命がけでその子を救おうとするんじゃないか?

サウナの休憩室で、疲れた顔で缶ビールを飲む、おじさんたちを見て考えた。「これ次回作にしよう!」と考えたが、いろいろあって保留。その後、日本の不況がさらに深刻になり、辛いのはおじさんだけでなく、日本人全てが大変になり、希望が失われた。そんな時代にどんな映画を作るべきか?と考えていて、その物語を思い出した。

主人公だったおじさんを女性にして、交通事故を弟にして、そこから崩壊した家族を救うためにタイムスリップすると言う風に配置換え。それが「明日にかける橋」だ。そんな風に「物語を作ろう!」と言う感じではなく、あれこれ見ていて、想像していて物語ができてくることが多い。でも、そんなアイディアがバンバン出てくる訳ではない。そして物語を作るときはイタコの霊状態。何ヶ月も人と会わない、話さない状態が続く。なかなか大変な作業なのだ。


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映画監督の仕事は演技指導ではない。嘘を見抜くこと?=何でやねん!説明する。 [映画業界物語]

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映画監督の仕事は演技指導ではない。嘘を見抜くこと?=何でやねん!説明する。

何度も書いたが、映画監督は俳優に演技指導をする仕事ではない。自身が芝居できないのに指導なんて出来る訳が無い。そこをよく誤解する人が多い。では、何をするのか?というと、本物と偽物を見分ける作業をする。俳優が芝居をする。それがいい芝居か?どうかではなく、リアリティはあるか? 嘘はないか?を見極めるのである。

友人が死んだ時に、そんな顔をするか? 嬉しい時にどんな笑顔をするのか? 辛い時はどんな風に泣くのか? 俳優はシナリオを読み、設定や流れを理解し、その場面を演じる。監督はそれを見ていて、正しい動きであるか?喋り方はそれでいいか? 演技に見えないか? 自然に見えるか?を確認。判断する。それが監督の本来の仕事。

つまり、監督は演技ができたり、演技を指導する必要はない。日常生活の中で、あるいは通常でない事態の中で、人がどのような振る舞いをし、話し、動くのか?ということを日頃から観察し把握する。

それを俳優が演じた時に、その嘘を見抜く、不自然さ、リアリティのなさを見つける仕事なのだ。いかに上手に人を騙すか?を俳優は努力し、それをいかに見抜いてより巧妙にするか?を監督が指摘する。それが撮影現場なのだ。

だから監督は映画技術や映画の歴史に詳しいより、人を見る目、物事の真理を見抜く目が求められる。それが映画監督がするべき仕事なのだ。オリバーストーン監督が映画化のためにロシアでスノーデンと会った時。いろいろ話した。ご存知の方も多いと思うが、彼はアメリカの情報組織NSAで働くエージェントで、国内の重要機密を持って亡命した実在の人物。アメリカの陰謀を世界に暴露した。

彼を描いた映画を作るために、ストーン監督はスノーデン本人に会ったのだ。が、本当に彼は機密情報を持ち、本当にNSAで働いていたのか? 嘘で注目を集めているだけかもしれない。だとしても、それが嘘だと証明する手段はない。機密情報なのだから。ストーン監督はこういった。

「もし、彼が言っていることが全て嘘ならスノーデンは世界1の俳優だ。数々の名優の演技を見てきた私をも騙せたのだから」

ここにも監督業の本質が見える。演技指導ではない。嘘を見破る。見抜くことこそが映画監督の仕事。本質を見る。本物を確認する。それに秀でた者が監督に向いていると言える。



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