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愛を選ぶか? 仕事を選ぶか? 女優は2つを選べない。 [映画業界物語]

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愛を選ぶか? 仕事を選ぶか? 女優は2つを選べない。

助監督をやっている後輩がいる。ある時、チャンスがやってきて監督をすることになった。当時、女優の卵と付き合っていて、彼女も喜んでくれた。そして当然、自分は何らかの役でキャスティングされると思った。彼は自分のことを愛しているし、女優として花開くことを応援してくれているからだ。

だが、後輩は彼女をキャスティングするのを躊躇っていた。女性としては愛していたが、俳優として実力に欠けたからだ。ただ、自分の作品に出ることで注目されて、女優として展開するチャンスを掴めればとも考えた。同時に演技力がもう一息な彼女を出演させることで作品自体のレベルが下がることもある。

愛する女性のために

多少実力が足りなくても出演させるか? それともデビュー作でもあるし、失敗作にはしたくない。それに彼女だから実力不足なのに出演というのは彼女にも失礼だ。実力をつければ他でもチャンスを掴めるはず!そう考えて、キャスティングしなかった。

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彼女は涙を零す。

日頃から応援してくれていた彼氏が映画を監督するのに自分を出さない。実力がずば抜けている訳ではないことは分かっている。でも、このチャンスを生かし、頑張り、必ず期待に応える芝居をするつもりだった。そんなチャンスを愛する彼はくれなかった。これは愛がないということだと感じた。

それがきっけで、何かにつけ揉めるようになる。結局、2人は別れる。彼女は別の男と出会い。結婚した。男は映画界の人間ではないが「君は女優としての才能がある!応援したい」と言って口説いたという。その言葉が嬉しくて結ばれた。その後、妊娠。子供が小学校に行くようになったら女優として、もう一度勝負したいという。

そんな話を何年か前に聞かされた。どちらの気持ちも分かる。が、監督業をする僕から言うと、彼女は愛と実力を混ぜこぜに考えている。彼氏が監督だから実力が伴わなくても出演できる。というのは思いは縁故入社を期待するようなもの。それを愛というのは違う。入社できたら「頑張る」は誰でも思うこと。入社前に頑張って実力をつけるのが順序だ。甘えがある。

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そして彼女は後輩を「愛する男性」としか見ておらず、「監督」として考えていない。もし、映画に出て自分の芝居が不味くて作品をレベルを落としたら、彼のキャリアも傷がつく。作品もダメになる。彼のことを本気で考えているように思えない。もちろん、彼女はそうならないように頑張ると思っているが、頑張ったからといきなり実力が伸びるものではない。「頑張る」「愛している」という言葉で自分を甘やかしている。

ただ、女性はそこを冷静に見つめるのが苦手

な人も多い。だから、俳優の素質や実力が分かるわけがないカタギの男性に「才能ある。応援したい」と言われて「この人は愛がある」と感じてコロッと行った。子供が大きくなったら再挑戦というが、それではもう遅い。本気で女優を目指すのなら結婚や出産を優先してはいけない。女優になるというのは、ある種、女を捨てることなのだ...。

彼にも問題はある。女優の卵。あるいは女優と付き合うと必ず、この手の問題が出てくる。監督はキャスティング権を持つ。その気になれば、実力のない女優でも出演させられる。女優であればそこに期待する。「愛があれば出してくれる」と考えてしまう。後輩の場合もそうなった。予期できたことだ。後輩も彼女も2つは選べないことに気づいていない。監督業も俳優も孤独な仕事なのだ。


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