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結婚できなかった理由ー記事が意外に好評だったのでもう少し話そう。 [映画業界物語]

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結婚できなかった理由ー記事が意外に好評だったのでもう少し話そう。

「ロッキー」シリーズで有名な俳優シルベスタースタローンがこう言う。

「監督業は大変だ。起きてから寝るまで作品のことを考えるが時間が足りない。若い頃に恋をした時、四六時中、彼女のことを考えたいたが、それ以上だ。飯を食っても、バスルームでも、運転していても、ずっと作品のことを考えてしまう」

彼が俳優業だけでなく監督業も始めた頃。インタビューでそう答えている。それは正解であり、9時5時では時間が足りない。起きてから寝るまで、いや、寝ていても作っている映画の夢を見る。撮影中だけではない。シナリオを書く前から、編集が終わるまで。そのあとは映画館に客が来てくれるか? 喜んでくれるだろうか?と考える。そうすると3年くらい、その映画のことを考える。

女性諸君。もし、あなたの彼がそんなならどうだろうか?そんな男と付き合うか? さらに、その彼は自分のギャラまで製作費に投入してしまい、サラ金で借りて生活を支えることもある。車も買えない。それなりの家にも住めない。貯金もない。時には電気代を払うのに困る。そんな旦那は嫌だろう。

「それでも愛があれば!」

という人もいるかもしれない。が、愛以上に大事なのは、映画界を知っていること。とてもとても特殊でおかしな世界。常識は通用しない。1時間働いて時給900円なんてない。1年働いて0円もある。だとしてもスタッフは全員全霊で仕事することがある。来月、パンを買う金がないかもしれない。それでも仕事は続く。それが映画界。

もちろん、一攫千金。億万長者になることもある。無一文で四畳半で孤独死した監督も多い。いくら愛があっても、映画界を知らない人には耐え難い生活。そんな世界で毎日戦うのが映画監督。国際結婚より大変だ。また、監督側から見ても、愛する妻や子に苦労をかけたくない。そう考えると、自分のギャラはしっかり確保。家庭に届けたい。シナリオ書く時間を減らして子供と遊んでやりたい。

それは良き父であり、良き夫だが、芸術の世界では失格。誰もが24時間しかない中で、どれだけ考え続けるか?が勝負だ。才能があればちょいちょいで出来るものではない。監督業も俳優業も同じ。どう表現するか?どうすれば伝わるか?どうすればリアリティが出るか?彼らは考え続ける。だから、日常生活が破綻する。家族は振り回される。

昔の監督は金持ちだった。が、今は違う。製作費もどんどん安くなる。いかに考えて低予算でいいものを作るか?も考えねばならない。子供と遊ぶ時間どころか、彼女とデートして口説く時間もない。映画のことをしか考えない彼に、彼女はやがて愛想を尽かす。良きボーイフレンドになれば、素晴らしい作品は作れない。人は2つの夢を掴むことはできない。世の中、面白い。


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「結婚してるんですか?」と続けて聞かれた。何と答えるのがいいのかな? [映画業界物語]

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「結婚してるんですか?」と続けて聞かれた。何と答えるのがいいのかな?

最近、続けて聞かれたこと。「監督は結婚してるんですか?」大きなお世話だ!と思うが、そんなことを聞く人はたまにいる。このところ続けて聞かれた。

平均的な日本人は40代までには結婚し家庭を持つ。夫婦になり、親になれば責任感が生まれ、落ち着いた大人になる。分別を持ち、一般常識を理解し、社会の中で生きて行こうと努力する。対して若い頃は無茶をしたり、冒険したり、世の中に逆らったり、まあ、若い頃から世の中に従順な人もいるが、結婚という節目で人は大きく成長する。或いはおとなしくなる。

なのに、あと数年で60歳になろうという私。どう見ても落ち着きない。いまだに10代のような感じ?(本人的にも17歳から成長していない気がしている)世の中には逆らうし、無茶ばかりしている。そんな様子を見た人たちはこう思うのだ。

「監督、結婚してないんじゃないかなあ? 出ないと、こんな無茶できないよなあ。落ち着きないし、子供みたいなところある。奥さんいたら大変だよなあ」

真相が聞きたくなる。その推理は正解。だが、次の質問はだいたいこれ「何で結婚しなかったんですか?」ーこれも大きなお世話だし、語ると長いのでいつもは「モテなかったから!」というのだが、まあ、モテないから結婚できないというのも本来は違う。

自分的にも理由は分からないが、考えると29歳でアメリカ留学から帰国。その後は映画監督になるためにまっしぐら!デビューしてからは映画一色の人生。彼女がいたこともあるが、撮影になると完全に忘れて長期間電話せず、ロケから帰ったらもうアウトということもあった。でも、そのくらい映画というのは全身全霊でかからねばならない。

9時5時でできる仕事ではない。家族のことを心配している余裕もない。日曜祭日もない。盆暮れ、クリスマスもない。何ヶ月も働いて収入ゼロということある。膨大な借金も背負う。スタッフ&キャストの人生をも背負う仕事だ。毎日が戦い。危険を買って生きるような人生。着いて行こうという女性はなかなかいない。そして20年はあっという間。

人にはいろんな幸せがある。愛する人との結婚。子供の成長を見守る。安定した生活を送ること。でも、僕はそれらではなく、長年の夢であった映画監督になることを選んだろう。人はいくつもの幸せは選べない。僕は「夢」を選んだ。その意味で「お前は昔からの夢を実現できて羨ましい」と友人たちから言われるが、他の幸せを全て失ってしまったのだ。

ただ、映画作りは多くの人をハッピーにする仕事。大切なことを伝える。悲しみを繰り返さないための仕事でもある。自分自身が幸せにならなくても、映画を見た人が元気になる。頑張ろうと思う。忘れていたことに気づく。それができる素敵な仕事でもある。ただ、そのためには平均的な幸せを諦めなければならなかったのだろう。そんな訳で気づくと結婚もできず。嫁もおらず、子供もいない。貯金もない。でも、死ぬまで映画を作り、多くの人をハッピーにしたい。


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