ジョーカーに共感する理由を考える。今の日本との共通点とダマされて来た私たち? [映画感想]
ジョーカーに共感する理由を考える。今の日本との共通点とダマされて来た私たち?
主人公とはいえ、犯罪者となるジョーカーになぜ、共感するのか? そこには庶民のやりきれない思いが描かれているからだ。
コメディアンになるという夢
を追うアーサー。現在、俳優や歌手、作家や漫画家を目指している人なら強く共感するところだ。また、頭ごなしのアーサーの上司も、日本でも数多くいる存在。ブルースウェインの父など、政権のあの人や経団連の会長がダブる。アーサーが撃ち殺すエリートサラリーマンの高圧的な振る舞いも、契約社員に対する正社員。大手から中小社員への接し方で感じることが多い。
アーサーの母は病気でおかしくなっているとは言え、彼は母の言われたことを信じた。同様に日本でも子供の頃から「勉強しなさい」「いい大学に合格するのよ」と言われ深く考えず、受験勉強を続けた子供が一流大学に入って、安定した生活。不安のない給与。年金。それらを得たと思いしや、会社が倒産したり、窓際に飛ばされる。リストラ。これまで何のために努力して来たか?悩む。
その始まりは母の言葉。
それを疑うことなく来てしまった。が、それが間違いの始まり。親を恨んでも時間は取り戻せない。また、僕の周りにはそんな親の押し付けに反抗して、エリートコースから飛び出してしまった友人も数多くいる。その後の人生を見ると彼らの方がハッピーに見える。
そしてテレビ。象徴がデニーロの司会者。
憧れの存在。いつかテレビに出て有名になりたい。でも、その願いが叶った時、アーサーは全てを知る。欺瞞。晒し者。物笑い。それがテレビというものだった。テレビは庶民を惑わし、ありえない希望を与えながら、現実から目を逸らさせる役割だった。これは現実。
その一つ一つの意味を観客は把握しないかもしれない。それでも物語を見つめて心のどこかで「そうだ。その通りだ。俺たちも惑わされ、誘導されて来た。誰も俺のことなんて考えていない!」という憤りを感じる。それが映画「ジョーカー」に多くが共感した理由だろう。ただ、この映画のラストではジョーカーは暴徒から喝采は浴びるが、彼らを指揮して暴れたりはしない。
ここ監督の意図を感じる。ジョーカーはこの後、悪の帝王になる。が、あなたはどうだ?
あんたならどうする?
それでいいのか?
この現実を見てどうする?
と問いかけているのだ。私たち日本人にも突きつけられたものであるだろう...。
「ジョーカー」の後日談が「ダークナイト」そこから見えてくる彼の目的=そして人の醜さを暴くこと? [映画感想]
「ジョーカー」の後日談が「ダークナイト」そこから見えてくる彼の目的=そして人の醜さを暴くこと?
「ダークナイト」を見れば
「ジョーカー」の意味がさらによく分かる。すでにご覧になった方も多いと思うが、思い出してみよう。悪の帝王となったジョーカーはバットマンが守るゴッサムシティで行動を開始する。が、これまでの悪は街を破壊する。人々を殺す。という活動だった。
それがジョーカーがやったのは、街を守るバットマンを差し出せという通告。でないと、市民を順番に殺していくというもの。この脅迫のいやらしいところは、これまでバットマンに守られていた市民や警察の力で彼を捕まえ、差し出せというもの。それに対して市民の多くが市庁舎に押し寄せて「バットマンを渡せ」とデモを行う。
ジョーカーが次にしたのは、
客船2隻に爆弾を仕掛けること。起爆装置もつけてある。そして両方の船長に先にスイッチを押して相手の船を爆破した方を助けてやると通告する。これも自身で手を汚さず、船長に何百人という乗客を殺せと命じる。共通するのは、市民に犯罪を強要すること。つまり、これらは人間性への挑戦なのだ。
「お前らはいつも善良な市民を装っているが、結局、自分さえ良ければそれでいい。他人なんてどうなってもいい。自分たちを守ってくれる存在であっても、自分が危険な目に遭うのなら殺してもいい。それがお前ら庶民なんだよ」
といわんがばかり。人間の醜さを暴き立て、証明するための犯罪なのだ。単に金が欲しい。街を支配したいというのが目的ではない。その背景にあるものこそ、新作「ジョーカー」で描かれた部分。
「君のことは好きだよ。でも、同僚たちが..」
とアーサーに注意する上司。結局、彼の立場や苦しみを理解せず、電話1本でクビにする。アーサーが殺した会社員3人。が、彼らは酔った勢いで若い女性に絡み、ピエロ姿のアーサーに暴行。その背後には特権意識が見える。なのにニュースでは「エリート社員が無残に殺された」と報道。
行政は福祉費用を削減。
アーサーは治療を受けられなくなる。「街を改革する」と宣言する大金持ちのウェインはアーサーを汚いもののように扱う。そして誰も彼には救いの手を差し伸べない。
「お前らは建前だけだ!他人のことなんて考えてもないくせに、綺麗事言いやがって。だったらその仮面を引き剥がしてやる。お前らは自分さえ良ければいい最低の存在であることを思い知らせてやる!」
そんな思いを反映したのが「ダークナイト」での凶行だ。そこに現代の歪みも見える。「ジョーカー」に登場した人たち。皆、貧しく苦しい生活をしている。その背景にあるのはウェイン社長のような金持ちの存在。それに気づかず、アーサーの母も「素晴らしい人よ」と称賛。そして貧しい者同士がひがみ合い、傷つけ合う。まさに今の日本と同じ構図。
この映画がアメリカでも日本でもヒットしたのは、現実を映し出した、その背景に多くの人が共感したからだろう。私たちもジョーカーなのだ....。
「クロール」B級映画。台風の日に襲い来るワニの群れ! [映画感想]
「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」ー 12月に完成披露試写会in沖縄を準備中 [告知]
お待たせしています。
「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」
沖縄完成披露試写会。最新情報です。
12月第2週。那覇市内の大きなホールで、無料上映会となる見込み。
よろしく!
デニー知事にも見てもらいたい。
衝撃の1時間45分!
「カメジロー」「主戦場」「沖縄スパイ戦史」に続く問題作!
特報(動画)=> https://youtu.be/Wv5MK0fRauI
予告編=>https://youtu.be/sGFjWg0fo00
監督ブログ=>https://okinawa2017.blog.so-net.ne.jp
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「有名なりたい!」という若い人たち⑥(終) それでは俳優にも、歌手にも、作家にもなれない? [映画業界物語]
「有名なりたい!」という若い人たち⑤(終) それでは俳優にも、歌手にも、作家にもなれない?
「有名になりたい!」「女にモテたい!」
という理由で、バンドをスタートした人たちがいる。が、練習し、腕を磨いた。若い頃からステージに立ち演奏。自分たちで歌詞を書き、曲を作った。
それがビートルズだ。ま、天才たちの話をしても…と思うかもしれないし、ジョン・レノンはバンドのきっかけを「モテたかったから」と言う。ただ、それだけではなく、バカにした奴らを見返してやろう。そんなコンプレックスがエネルギーになっていたはずだ。実際、ジョンは父親と仲が悪く、母は早くに死んでいる。家庭も貧しかった。日本の矢沢永吉もこういう
「金持ちになりたかったから!」
自伝「成りあがり」を読むと彼も少年時代貧しい生活。不満と怒りの少年時代。それらがバネになっているのだろう。前回紹介した俳優になりたい子たちと何が違うか? ハングリーさではないか?
「てめえ。今に見てろよ!」
という気持ち。先の若い子たちは、有名になることで喪失感から逃れようと考えたが、そのための努力を事務所任せにした。ジョンや矢沢は貧しや怒りをエネルギーにして楽器を買い、練習し、ステージに立つ努力をした。時代の差かもしれない。与えられたことをすればいいだけの教育で育った若い人たち。対してまだ、混濁と喧騒が続いていた時代の彼ら。
でも、時代のせいだけではない。ジョンや矢沢は音楽が好きだった。先の子たちは「有名になりたい」だけが理由だったことが大きいと思える。大事なのは「演技がしたい!」「歌が歌いたい!」「小説が書きたい!」という熱い思いだ。もし、本当にそうなら
「バイトあるんで、オーディションには行けません....」
と絶対に言わない。「時間がないのでまだ小説は書いてないんだ。余裕ができたら書きたい物語があるんだけど」とか言わない。歌いたいなら毎日カラオケルームに行く。「まだ、本気だしてないですから...」なんて言い訳はしない。
本当に自分が好きなことを、寝る時間も惜しんで続けてしまうことだから、上達する、うまくなる。磨かれる。それをまず考えてほしい。「有名になりたい」という思いもありだ。エネルギーになる。でも、次に
「だったら本当に芝居が好きか?」
「音楽が好きか?」「書くことが好きか?」
と考える。そしてすでに実践しているか? まだ何もせずに「俳優になりたい...」と言っているのなら、それは憧れでしかない。考えてみてほしい。(了)
「有名なりたい!」という若い人たち⑤ それでは俳優にも、歌手にも、作家にもなれない? [映画業界物語]
「有名なりたい!」という若い人たち⑤ それでは俳優にも、歌手にも、作家にもなれない?
大切なことは「芝居がしたい」「歌が歌いたい」「物語を書きたい」そんな思いだ。「有名になりたい」ではダメ。「CMタレントになりたい」という子もいるが、本来CMは有名な俳優が出るもの。
あるいは売り出し中の若手を出すもの。これも「CMタレントになりたい」ではなく「CMに出て有名になりたい」というのが本当のところだろう。いずれにしても大切なのは何をしたいか?である。それ以前に時代が専門化(?)している。
70年代。山口百恵の時代は歌歌って、ドラマやって、映画に出て、CMに出て、いずれも大ヒットということがあった(百恵ちゃんはテレビでは「赤い」シリーズが高視聴率。映画では友和コンビ作品がヒット。歌は毎回ベストテン入り。CMでも活躍した)が、その後、80年代。松田聖子は歌とCMでは活躍したが、ドラマと映画はイマイチだった。
さらに90年代。宮沢りえの時代になると、CMにはたくさん出ていたが、ドラマ、映画、歌では大ヒットが出ていない。同世代の子たちも皆同じ。つまり、歌手は歌手。俳優は俳優というふうに仕事が分業されて来たのだ。歌は下手でも可愛いから!とレコードが売れた時代ではすでにない。
そんな中、歌でも、俳優でも、何でもいいから有名なりたいでは通用しない。もう少しいえば俳優業。演技というのは誰にでもできると思われがちなので、そんなふうに勘違いする若い人がいるのだろう。でも、演技はスポーツと同じ。アイススケートと同じ。技術を磨き、センスも必要。
絶え間ない練習と挑戦。それによってなし得る表現なのだ。ま、野球でも、ボクシングでも、レスリングでも同じだが、熟練された技術なのだ。それを有名になりたい!という動機でスタートすること自体。無理がある。が、絶対に無理か?というとそうでもない...。(続く)
「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」に俳優・栩野 幸知さん声の出演! [キャスト]
「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」に俳優・栩野 幸知さん声の出演!
僕の監督作「明日にかける橋」「向日葵の丘」で怪演!太田組の常連となった俳優・栩野 幸知さん。実は新作の「ドキュメンタリー沖縄戦」にも参加してもらっている。ある場面の声を担当。彼は大ヒット作「この世界の片隅に」でも声優として参加。いろんなキャラの声を担当している。
今回もある場面で参加してもらったが、戦中の声を頼むと日本一! スタジオが騒然となったほど。凄かった。栩野さんは戦争や兵器にとても詳しいので、制作中は戦場の解説もあれこれして頂いた。そして日本と沖縄の地図? 映画のあちこちで栩野さんが活躍。
そんな「ドキュメンタリー沖縄戦」は12月に沖縄で完成披露上映会が行われる。那覇のホールで無料上映とのこと。お近くの方はぜひ、来て頂きたい。
特報(動画)=> https://youtu.be/Wv5MK0fRauI
予告編=>https://youtu.be/sGFjWg0fo00