春夏秋冬の映像は作品を数段押し上げるのに、企業映画では撮影ができない理由?(下) [映画業界物語]
春夏秋冬の映像は作品を数段押し上げるのに、企業映画では撮影ができない理由?(下)
しかし、太田組ではそれが可能。カメラマンと2人でいつも車で移動。季節の撮影をする(これに関してはカメラマンに感謝。この手法を理解してくれるカメラマンは少ない)。
映画会社だと多くののスタッフが行くので大変だが、こちらは2人。そんなふうにすれば安く済むのに、企業の場合はそれができない。なぜか?監督がこういう。
「制作部や演出部がいないと撮影が大変! ホテルの支払いまで俺がやるのか!」
と嫌がる。カメラマンも
「助手が必要!」
と言い出す。結局10人近いの編成になり、交通費、食費、宿泊費、ギャラを計算すると数百万になる。そこまでしないと美しい四季を撮影できないのが企業映画。
でも、ちょっとした努力。例えば監督が制作部と演出部とPを兼ねて、ホテルや食事の支払いもして、カメラマンが助手なしで撮影してくれれば2人で動ける。宿泊も交通費も2人分で済む。四季を安上がりに撮ることもできる。
低予算でも四季の映像が流れるクオリティの高い映画ができる。監督があれこれワガママを言わず、スタッフも何だかんだ要求しなければ僅かな費用で、素晴らしい四季が撮影できるのだ。お付きのスタッフなんて本来必要ない。監督が自分で雑用もこなせばいい。こうして毎回、実質的には1億円の企業映画に負けない作品を作っている!
春夏秋冬の映像は作品を数段押し上げるのに、企業映画では撮影ができない理由?(上) [映画業界物語]
春夏秋冬の映像は作品を数段押し上げるのに、企業映画では撮影ができない理由?(上)
2年前「明日にかける橋」の撮影中、板尾創路さんに聞かれた。
「監督の『向日葵の丘』DVDで見せてもうたんですけど、四季の風景が出てきますよね? どうやって撮ったんですか?」
普通に聞いていると意味が分からない。「カメラで夏の風景や冬の風景を撮影したんじゃないの?」とか思うかもしれない。でも、板尾さんが言っているのをそういうことではない。彼は監督業もしているので痛感したそうだ。夏を舞台にした映画で春や冬の映像を入れようとすると、撮影終了後にその季節まで待たなければならない。
その上、その時期にまたスタッフを雇い、カメラをレンタルしてロケ地に移動。キャスト抜きだとしても数百万の予算が必要。四季を全て撮るなら本撮影以外に3回ロケ地に行く。まあ、少人数にしても監督、カメラマン、カメラ助手、チーフ助監督、プロデュサー、制作担当と、6人ほどになる。
そのギャラ。そして、交通費。宿泊費。食事代。カメラのレンタル代。レンタカー。それらを全部入れると100万〜200万。それを3回繰り返す。だから、映画会社は
「予算がない!」
と、四季の映像を入れようとしない。春夏秋冬の絵が入ることで映画は数段クオリティが高くなり、奥行きができる。名作「砂の器」はまさにそれ。日本の美しさも伝えることができる。ただ、どうしても費用が大変。映画会社はその予算を捻出するのを嫌がり。シナリオに四季のシーンがあっても、会社はカットしてしまう。
しかし、太田組ではその四季の映像が毎回、登場する。「向日葵の丘」だけでなく、「明日にかける橋」「青い青い空」でも登場した。もちろんどれも超大作クラスの予算ではない。メジャー映画会社でもなかなか取れない四季が毎回登場。なので板尾さんも不思議に思ったのだ。その秘密とは....。(つづく)