俳優業—そして表現の仕事を目指す人たちへ⑤ 終 それは本当の自分を見つける旅 [映画業界物語]
俳優業—そして表現の仕事を目指す人たちへ⑤ 終 それは本当の自分を見つける旅
バイトをしながら、俳優を夢見ているだけで演技派にはなれない。学校で講師に教えられても、大きな成長はできない。実践が大事。舞台に立つ。カメラ前に立つ。もちろん、小さな役でもそんなチャンスはなかなかない。でも、それを何とか掴んで実践することがうまくなる秘訣だ。
自分にあって他人にないもの。それを探すことも大事。日本という国は皆、同じということを大切にする。皆がすると自分もしなければならないと思える。
「はみ出していけない。目立ってはいけない」
そんな国だ。が、芸能の世界&映画の世界は逆だ。人と同じことをしていてはダメ。個性的で、自分らしさをアピールしなければ認められない世界なのに、おとなしくアルバイトをして
「店に迷惑かかるので、その日は休めません。オーディションは行けないんです」
「友達の結婚式があるので、その日の仕事は行けません」
と返事する。それなら俳優を目指したりせずに会社員になった方がいい。何より表現の仕事は「仕事」ではない。金や名誉のためにすることではない。「生き様」だ。表現をせずに生きていけない人たちの生き様。
「一生、食えなくてもやる!」
「一生、主役ができなくても芝居がしたい!」
そんな思いがなければできない。俳優だけでなく、表現の仕事を目指す皆さん。ぜひ、一度、自分を見つめ直してほしい。自分が本当にしたいことは何なのか? 何が得意で何が苦手か? 自分を知らずして表現はできない。
もし、自分が「表現の仕事」に向いてなくても悲しむことはない。それはまっとーな社会人として生きていける証でもある。夢を追い、挫折しても、それは貴重な経験であり、のちの人生に役立つ。とにかく挑戦し続けること。
失敗しても、成功しても大きな財産になる。だから、まず、自分を知るところからスタートしてほしい。自分が望む人生とは何か? 有名なりたいのか? 芝居がしたいのか? そこからいろんなことが見えて来るはずだ。(了)
俳優業—そして表現の仕事を目指す人たちへ④ それは本当の自分を見つける旅 [映画業界物語]
俳優業—そして表現の仕事を目指す人たちへ④ それは本当の自分を見つける旅
「太田監督の映画は皆、泣ける!」
そう言われる。ありがたい。でも、毎回、映画館に行き、観客の反応を見る。劇場の壁にもたれてスクリーンを見ず、観客の反応を見る。狙ったシーンで笑うか? 泣いてくれるか? それを確かめる。うまく行けばオーケー。無反応なら反省。
いろんな劇場で、いろんな年齢の客で確認する。「映画で泣けた」というと安易に「あの監督は才能あるからなあ」という人もいる。それは違う。先に説明した「才能」なんて存在しない。
感動—を生み出すには脚本だけではダメ。
それを演じられる俳優が大事。次にロケ地。その会話をするにふさわしい場所はどこか? 森で話すと泣ける会話もあれば、都会で話すと心に染みる会話もある。
次に朝、昼、夕方、夜のいつがいいか? そしてお天気は晴れ、雨、曇り。風? 季節は? 春夏秋冬? そして撮影法は望遠? 広角? そして照明は? 明るめ? 暗め? 光の色合いは? その全てを考え抜いて感動シーンを演出する。単に実力派俳優を呼べばいいというものではない。
ただ、考え抜いて撮影しても、うまく行かないことがある。そのときは考える。何が悪かったのか? シナリオ? 俳優? ロケ地? カメラ? 照明? 考えて考えて考えて、次の機会にもう一度、挑戦する。それでうまく行けば、反省が正解だったわけだ。その次はその方法論をベースにさらなるプラスを考える。それが演出だ。試行錯誤の連続と、反省、そして実践。
これは他の業種でも同じ。
俳優でも舞台で演じた。イマイチな評判。何が悪いのか? 反省。試行錯誤。そして次の機会に実践。その繰り返しで演技力が育っていく。それをせずにいたら、実力は伸びない。大きなチャンスを待っているだけでは表現力は育たない。
(つづく)