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夢を否定しにくる大人たち。映画製作でPや役所がトラブルの元になること。同じ構図?=夢追う若い人たちに伝えたい大切なこと [映画業界物語]

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夢を否定しにくる大人たち。映画製作でPや役所がトラブルの元になること。同じ構図?

                   =夢追う若い人たちに伝えたい大切なこと

ここ続けて書いた「プロデュサーがキャスティングする弊害」「役所が起こすトラブル」どちらも共通するのは現場で戦った経験がない人が現場に口出しをしてトラブルを起こす、失敗するということだった。

これは映画製作でなくても、レストランの調理場でも、大工さんの職場でも、自動車修理工場でも同じ。現場に立ったことのない人たちが、現場の人選をしたり、作業を指示するのと同じ。現場で長年働くからこそ、分かること。調理でも、大工でも、映画でも、その分野を勉強し、実践している人たちが現場を指揮するべきなのだ。

これと以前に何度も書いた「夢」の話は同じ構図ではないか?と思えている。10代の頃。

「俳優になりたい!」「ミュージシャンになりたい!」

「作家になりたい!」「映画監督になりたい!」

と宣言すると、大人たちが束になって反対するのは、どこの町でも同じだ。僕もそうだった。大人たちだけでなく、同級生や教師まで反対した。不思議なのは、その中で1人も映画界で働いた人がいなかったということ。どんなに映画界で仕事をすることが厳しく、過酷なものか?誰も経験していない。にも関わらず...

「世の中、甘くない」「夢は所詮夢だ!」

「勉強したくない言い訳だろ?」

と言われた。これは先に紹介した映画製作の経験のない市役所職員、現場で演出したこともないPがキャスティングに口を出す構図と似ている。検証してみよう。

多くの若者は夢破れ、諦めて故郷の帰って会社員になったりするので、それら大人の指摘は正しかったようにも思えるが、僕の周りにいた大人たちを思い出すと彼らの指摘はおかしい。「世の中、甘くない」という指摘は一般論に過ぎない。もし「東大に入りたい!」「パイロットになりたい!」と主張しても、言えること。「映画監督になる!」という夢を具体的に否定するものではない。

大手企業に入るのだって大変。いや、今では「正社員になるのが目標」という若い人さえいる。何だって大変。「世の中甘くない」と言える。つまり、当時、大人たちが僕の夢を否定するために放った言葉には具体性はなく、一般論を語ってに過ぎない。映画監督になるには、会社員になるより、具体的に何が大変か? どう難しいか?は誰も指摘していない。

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つまり、知らない!のだ。映画監督になるにはどうするのか? どこが難しいのか? 全く知らない。「求人案内に出ている訳ではない。数が少ない。免許がある訳でもない。だから大変!」その程度。先の役所職員や現場を知らないPがキャスティンしてしまう背景と同じだ。

知らない。勉強していない。なのに、あれこれ口出しする。それがトラブルとなった。僕を批判した大人たちも、今考えると同じ。聞きかじった話で、勝手な想像をし、批判していただけ。Pが

「この俳優は事務所が大手だ。人気上昇中だ。主役にしよう!」

と演技力やセンス。相性を知らずに決めたり。

「わが町出身の俳優だ。主役にしよう。町が盛り上がる!」

と一面だけ見て決めるのと同様。何も知らない。調べてもいない。だから失敗する。つまり若い人の夢を、批判する大人たちも同じだと気づく。だから、若い人に言いたい。

「大人の忠告や批判を聞いてはいけない。ほとんどは何も知らずに言っているだけだ。調べたり勉強したりはしない。時にはー君のために言うんだよーと言う言い方をする大人もいるが、君のことを考えてなんていない。それなら君が目標とする仕事について勉強するはずだ。

俳優でも、作家でも、歌手でも、漫画家でも、アートを志すと大人たちは反対する。でも、彼ら彼女らは何も知らない。そんな人たちの言葉に耳を貸す必要はない。足を引っ張るだけだ」

ただ、あなた自身は目指す業界を徹底して調べて、どうすればその職業に就けるか?勉強しなければならない。憧れているだけではダメだ。そして努力すること。道を探すこと。実力を養うこと。映画製作も、夢を掴むことも方法論は同じであること。感じてしまう。



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映画製作でキャスティングに口出しする市役所? 「主演を交代させろ」??? ーB君の経験談からー [地方映画の力!]

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映画製作でキャスティングに口出しする市役所? 「主演を交代させろ」??? 

ーB君の経験談からー

「自治体では映画製作ができない?」という記事と「プロデュサーはキャスティングをしてはいけない」という記事。両方とも好評。そこで両方の話題が入った「自治体がキャスティングに口を出したことで、トラブル続出!」の話を紹介する。

後輩監督のB君。彼がある地方から依頼された故郷映画。市民が主体となって実行委員会を作り製作費を集めた。途中から市役所が参加した。が、費用は一切出さず「協力」という立場。それが非常にまずい状態を作る。金は出さないのに口は出すということ。担当の職員たちは映画製作の経験はない。にも関わらず、あれこれ言い出した。

提案することにマイナスが多いのに、プロジェクトを推進してきた市民団体が反対しない。皆、市役所を揉めたくない。また、役所の提案が間違ったものであっても、映画作りを知らない市民には「それもいいんじゃないか?」と思う人もいたようだ。

ある日、大きな事件が起こる。すでに決定している主演俳優を役所側が変更しろと言ってきたのだ。その町、出身の俳優を主役にしろと言い出した。

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製作だけでなくキャスティングにまで口出しをする。とんでもないことだ。映画のキャスティングは監督の仕事。役に合うかどうかだけではなく、相手役との相性。人気、知名度。考え方。思い。様々な面を考慮してB君が決めた。以前に仕事をした若手の人気俳優。本人も出演を快諾。すでにマスコミ発表も行っていた。なのに担当職員はいう。

「降りて貰えばいいんですよ。うちの街ではまだその人が主演することは知らない人が多いし、大丈夫です」

B君は憤る。「うちの町」の問題ではない。一度、依頼し承諾した相手に「降りろ」なんて常識的に言える訳がない。「うちの町では知らない人が」なんて関係ない。マスコミ発表をしたのだ。全国に伝わってる。

それを役所の勝手な提案のために主演を下ろすなんて、俳優にも失礼。撮影前に降ろされるなんて名誉問題だ。所属事務所から訴訟を起こされてもおかしくない。もし、役所でも一度決まったことをひっくり返したら大変なことになる。が、担当者は自身の職場に置き換えて考えることをしない。

「**の方がこの町では知名度があるし、市民は喜びますよ。すでに事務所に交渉してOKももらっています」

何勝手に交渉してるんだ!?金も出さない。映画製作も知らない役所がどういうつもりだ! 

「だから、今、そのことを伝えて、監督にも同意してもらおうとしているじゃんないですか?」

理不尽としか言いようがない。にも関わらず実行委員の市民たちは反対しない。やはり役所と揉めたくないのだ。B君が1人反対した。数日後、製作会社のプロデュサーから言われた。

「私のところ役所から連絡があり、説得してくれと。監督は自分がよく知る俳優と仕事をしたいだけだ。そんなことより、わが町出身の知名度がある俳優で行って欲しいとのことです。私もそうした方がトラブルにならずいいと思いますよ〜」

B君は完全に切れた。「よく知る俳優と仕事がしたいだけ」だと?それがどれだけ大事か分かっているのか? 仲良しサークルのノリで映画作りをしていると思っているのか? 何も分かってない奴がPに圧力までかけてくる。許さない!担当者と対決した。

ー地元出身俳優がなぜ、今回の役に合っていると思うのか?

「彼は器用だし大丈夫ですよ。僕がシナリオを読んでも彼で行けると思いましたから」

ーシナリオというものを、これまでどのくらい読んでいるか?

「今回が初めてです。シナリオなんて日頃読む機会はないですから!」

ーその地元俳優の芝居で1番好きなものは何か?

「彼の映画や芝居は観たことはないですよ。でも、本人はよく知っています。いい人ですよ!」

だめだ〜。確かにその俳優はそこそこ有名だし演技派だが、個性が強過ぎる。今回の映画の主役とはタイプが違う。それにシナリオを読んだこともない人間が「行ける」と思いこみ。その俳優の演技も見たことないのに「行ける」と判断すること自体がおかしい。B君は次第にばからしくなってきた。


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今回の企画はとても興味があり。かなり自腹を切って参加している。監督料も非常に安い。終わった時には借金の山となるだろう。でも、絶対にいいものができる!と市民と頑張ってきた。なのに、途中から参加した役所が、映画製作を知らない、シナリオを読んだこともない連中が横車を押し始めた。

これが「別の役で地元俳優を入れろ!」というのなら、まだ分かる。が、主役をその人にすると映画は完全に失敗する。監督であるB君にはそれが分かる。けど、役所の人たちには想像できない。

みすみす失敗作となるのを分かりながら、自分がふさわしいと思わない俳優を使い、素晴らしい作品になることはない。実行委委員たちと役所の担当者を呼んで説明をした。なぜ、主演が彼ではダメなのか? すでに決まった俳優でなければならないか? 30分に渡って熱弁した。

もし、それでも地元俳優で!というのなら、B君は監督を降りるつもりだった。いいものを作れないことが分かりながら妥協して進めるのは市民への裏切りでもある。話し終えた時、市民のおばちゃんがこういった。

「監督が選んだ俳優さんで行こうよ! そこまで情熱を持って選んだ人なら、その俳優さんがいいと思う!」

次々に市民たちは「賛成!」と手を挙げ、B君に賛同した。役所側は渋々地元俳優案を撤回した。その後、映画は完成。大ヒット。実行委員のあるおばちゃんとB君は映画館の近所でお茶を飲んだ。おばちゃんはいう。

「そういえば地元出身の**さんを主演になんて話があったわねえ。今、考えるとありえない〜って感じ。あの物語で**さんなんて想像もできない。やめて正解ね」

B君は分かっている。役所の職員も悪い人ではない。ただ、キャスティングに口を出すのはルール違反。映画の世界では監督がする仕事だ。とても大切な作業であることも知らない。厨房に行き、料理するシェフに、魚の良し悪しの分からない一般人が

「この魚を使った方が美味しい料理になるよ」

と魚を持ち込み、指示するようなものだ。そんなことをする人はいない。でも、映画作りとなると勘違いをする人が不思議と出てくる。餅は餅屋という言葉を忘れてしまう。

その後、B君は別の街で故郷映画を作った。そこでは役所が全く協力をしてくれなかった。そのせいかトラブルは皆無。何事もなく映画は完成した。それが地方で映画作りをする上で大事なことだと気付いた。役所を批判するのではない。映画製作を知らない人が関わると揉めるということをB君は知ったという。映画だけではない他の業界でも言えることだ。



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映画のキャスティング。Pが決定権を持つと名作ができない理由? [映画業界物語]

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映画のキャスティング。Pが決定権を持つと名作ができない理由?

キャスティングのことを書いたら結構、好評だったので、もう少し書いてみる。映画のキャスティングというのは基本、そして日本では伝統的に監督がするものだ。P(プロデュサー)もあれこれ意見を言うが、最後に決めるのは監督である。それがテレビの場合はPが決定権を持つので、勘違いPは映画でも自身で俳優を決めようとすることがある。

しかし、それが諸悪の根源。Pがキャスティング権を持つことでより良い映画は難しい。今回はその話をする。そもそもキャスティングとは、現場で共に物語を形するための俳優を選ぶ作業だ。役に合っていることはもちろん。問題を起こさない。協調性がある。時間に遅れない。評判がいいと言うことも考慮する。

人気があるのを勘違いして、勝手なことをする俳優も気を付けなければならない。また、気が合う。合わないと言うこともある。演じるのは俳優同士だ。その相性が悪いといい芝居にならない。もちろん「嫌な奴だな」と思っても我慢して演じることも大事だが、それはどこかに出てしまう。そんな細かい部分も含めて監督は俳優を選ぶ。

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監督は俳優たちと対で接して、思いを伝え、それを体現してもらう仕事だ。俳優たちのことをよく知り、見ている。信頼関係の大切さ。知名度はなくても実力がある俳優を見抜く。俳優の特性を見抜く。そんなことを何年も続けており、俳優という人種を知り抜いている仕事だ。だから、キャスティングができる。

一方、Pはその種の経験値はない。撮影ではカメラの後ろで見ているだけ。演技について指示したり、俳優とコミニケーションする必要はない。朝、会った時に「調子どう?」と声をかけるくらいなものだ。そんな立場なので、キャスティングをするときには監督とは違う視点で俳優を選ぶ。

知名度があるかどうか? 興行には大事だ。人気がありファンがあれば映画館に多くが来てくれる。レギュラー番組を持っているか? 例えばタレントとしても活躍している俳優であれば、レギュラー番組で映画の宣伝をしてもらえる。あるいは大手の事務所かどうか? 大手はテレビ局に対して力があるので、所属タレントが出ている情報番組等で映画の告知をしてもらえる。


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そういう俳優が映画に出ることでプラスになるということをPはよく考えがちだが、協調性。相手の俳優との相性。等々まで気付かない。それらこそがキャスティングで一番大事なところなのに、それは分からない。なぜなら、Pは本来、制作費の管理や興行宣伝が仕事の中心であり、撮影現場のこと。俳優との対峙をしないからだ。

つまり、それらが分からないPという人種がキャスティング権を持ち俳優を選んでしまうと、人気があるだけで役に合っていなくても選ぶ。大手事務所所属を多く選ぶ。宣伝に協力的な俳優を優先する。等々の尺度で選んだ俳優ばかりになってしまう。当然、現場は混乱する。スタッフは職人だ。「素晴らしい作品を作ろう!」という人たち。会社の思惑や収支なんて考えないアーティストだ。

「この役。この俳優じゃないんじゃないか?」

すぐに気づく。ああ、事務所が***か?Pが決めたんだな。そういう作品ね?今回は!と思われてしまう。いいものを作る気がないんだと解釈する。だったら、そこそこの力でやればいいね?彼らは熱い思いに感銘を受け動く人たち。金儲けや会社の思惑のためには真剣にはならない。監督もやり辛い。

「この役はこの俳優じゃないんだよなあ」

そう思いながら演出しても力が入らない。また、人気があるからとメインの2人を気が合わない同士が選ばれたら大変。演出以前に2人のご機嫌取りが仕事になる。俳優側からしても同じだ。

「私を選んでくれたのは監督ではなく、Pなんだ」

と、Pにばかり媚びへつらってしまう。或いは

「Pが私を選んだのは演技力じゃなくて事務所が大手だからなんだ」

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そう思うと、やる気をなくす。悲しくなる。監督というのは俳優の底力を引き出す仕事でもあるのだが、自分がよく知らないPが選んだ俳優から力を引き出すのは難しい。そもそもが監督はキャスティングをさせないPを信頼しない。多くは恨んでいる。

「そんなことでいい作品ができると思ってるのか?バカ〜」

そんなPが選んだ俳優を輝かそうとは思わない。寿司経験のない人が魚市場で仕入れてきた魚を持ってきて、寿司職人に

「さあ、美味しい寿司を握ってください!」

というようなもの。家を建てたこともない会社員が大工道具を選んで大工さんに「さあ、素敵な家を建ててください」というようなものだ。

「ノコギリないだろ!」

ということが頻発する。黒澤明監督は言う。

「一度も仕事をしたことのない俳優とは仕事はできない」

それは本当だ。その俳優のことを知り、魅力を感じ、実力を知るからこそ、その俳優の力を引き出すことができる。俳優側から考えても同じだ。

「私の力を認め、魅力を感じているから、この監督は私を選んでくれたんだ!だから、頑張ろう」

と思う。そんな俳優の心理までPは分からない。現場で俳優たちと対峙していないからだ。魚を見極められない。大工道具を使ったことない。というのと同じ。もちろん、興行や宣伝は大事だ。プラスの俳優を選ぶことも必要。でも、提案はしても決断は現場と俳優を知る監督がするべき。


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映画作りはビジネスでもあるが、興行だけ考えていては素晴らしい作品はできない。大事なのは俳優への愛だ。そして理解。その意味でPはそれらを持ちずらい立場にいる。そんな人がキャスティングをしても、いい作品はできない。この数年で

「なんで、この原作で、この人気俳優陣なのに面白くないのかなあ」

という映画を思い出すと、ほとんどがPがキャスティングしたものだ。キャスティングは映画の出来の70%を決めるというが、まさにその通り。Pを否定するのではない。彼らが活躍すべき場は他にある。日本映画では監督がキャスティングをする。それが日本映画の伝統であり、重要なことなのだ。

だから監督である僕は映画のキャスティングー全て自身で決める。その俳優の実力を知り、愛を感じる者を選ぶ。脇の1人に至るまで。それが大事だと考える。



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