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俳優業は過酷。だからこそ、信頼できる監督と仕事がしたい? [映画業界物語]

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俳優業は過酷。だからこそ、信頼できる監督と仕事がしたい?

アンコール上映が近いので、「明日にかける橋」の話を書いてみる。ある取材で、今回出演のある女優さん。太田組初出演の方がこんなことを話していた。

「俳優陣の監督への信頼感が凄かった....」

これは嬉しい話。褒められることが少ないので素直に喜ぶ。が、それだけではいけない。分析してみよう。信頼感って何だろう? 俳優の立場に立って考えてみる。基本、俳優は監督を信頼しようとする。初めての監督でも信頼しようとする。なぜか? 俳優は孤独な仕事だ。そして物凄い気遣いをしなければならない。

まず、スタッフに気を使う。メイクさん。衣裳さんがいるから、メイクをしてもらえれ、衣装を用意してもらえる。だから、感謝の気持ちを持って接する(もちろん、一部には横暴な俳優がいて、仕事なんだから当然だろ?と言う態度の人もいるが、多くは感謝の気持ちを持つ)そして撮影部、照明部には美しく、あるいはカッコ良く撮ってもらわねばならない。

小道具さん。美術さん。その他のパートも、俳優を盛り上げ、いい芝居ができるようにするために頑張る。俳優側からすると必要不可欠な存在。だから、後輩には厳しい俳優でもスタッフには丁寧に接する人が多い。

感謝の気持ちが大きいが、もし嫌われて、意地悪されたら、照明をしっかり当ててもらえない。素敵に撮ってもらえない。合ってない衣装を渡されとも限らない。だから、好感を持ち、応援してもらえるように、いつも明るく丁寧に接するようにする。

スタッフだけではない。俳優は共演者にも気を使う。まず、先輩。撮影前には必ず挨拶に行く。俳優部は体育系だ。挨拶は絶対だ。そして共演者。気持ちよく芝居をするためには仲良くせねばならない。芝居は1人では出来ない。連携プレイだ。相手が真剣に演じてくれるように、愛想よく対応する。

中には意地悪な俳優もいて、わざと本番直前に嫌味を言ったりする人もいる。根に持たれたら撮影期間の1ヶ月。ドラマなら3ヶ月以上も一緒に仕事せねばならない。休憩時間も一緒だ。だから、互いに気持ちよく仕事ができるように、気を配る。撮影待ちの俳優達を見ていると、俳優同士、本当に気を使い合っていることが伝わってくる。

神経ピリピリ。

大先輩が一緒だともう大変。先輩を怒らせるようなことがあれば....とんでもないことになる。さらに主役を演じた時は、共演者に妬まれたりする。それだけで攻撃対象にされる。ブレイク中の俳優も同じ。撮影中、先に帰る。次の仕事がある。先輩達はよく思わない。「もう、お帰りですか? 我々はこれからだと言うのにねえ?」嫌味の一つも言われる。

本当に俳優業は大変だ。だから、多くの俳優さんは非常に気配りができて、いい人が多い。接すると好きになる。と言うのは、そういう人でないと俳優業を続けられないと言うことがある。人気があれば多少ワガママでも仕事はある。が、人気が落ちたら終わり。誰も助けてくれない。長く俳優を続けられるのは本当に気がつく、素敵な人が多い。

でも、それだけに無理をしたり、物凄いストレスになったりする。そのために体を壊したり、心が病んだりすることも多い。酒に走ったり、薬に依存したり。だから、有名俳優やタレントが時々、おかしな行動を取って芸能ニュースになることがある。一般人からすると意味不明の行動。想像を超えたストレスやプレッシャーに晒されることが原因なのだ。

そのためにドラッグに走ったり、新興宗教にはまったりもする。一般から考えると、なんで?クスリなんか?何であんな怪しい宗教に?と思うが、心が擦り切れ、如何しようも無いところまで追い詰められているのである。特に俳優は繊細でナイーブ。そこに先の気遣い。いじめ。ストレス。本当に大変な仕事なのだ。

作品は監督の思いを形にするもの。その監督が何をどうやって、どんな風に作りたいのか? それを理解しないと芝居は出来ない。中には

「俺は俺のやり方でやるんだよ。監督なんて関係ねえよ」

という俳優もいるが、それではうまくいかない。出来た作品を見ると1人だけ勘違いな芝居をしていることになる。だから、多くの俳優達は監督を信頼することで、その世界観や方向性を理解して演じようとする。

ただ、信頼しようとしても、難しいこともある。何がしたいのか? 分からない人。あまり深く考えていない人。これまでの作品がロクでもないものばかりの人。やる気がない人。信念のない人。Pの言いなり。自分のスタイルがない。信頼したくても出来ない監督というのも多い。

「本当にこの監督の言うことを聞いて演じて、いい芝居ができるのかな?」

そう不安になることも俳優には多い。が、信頼するしかない。なのに出来上がった作品を見ると??????と言うものだった。俳優はそんな経験を何度もしている。だから、信頼はせねばならないが、なかなか信頼できないと言うのが本当のところ。なのに、太田組初出演のベテラン俳優さんはいう。

「俳優陣の監督への信頼感が凄かった....」

これは本当に嬉しいことなのだ。詳しく言うと、俳優は俳優で撮影前にシナリオを読み、演技プランを考える。それを現場で実践する。それに監督は「そうじゃない」とか「もう少しこう言う風に」とか注文をつける。その時に「ああ、そう言うことか!」と納得できる指示をされるのならいいが、「何でやねん?」と思うこともある。それが続けば不信感になる。「何を求めているの?」と思える。

方向性の基本は監督の思いであり、趣味だ。でも、それだけではダメ。人の行動には一貫性や心理展開がある。俳優はそれを踏まえて演じる。特にベテラン俳優は物凄い演技プランを考えている。あれこれ考え尽くして決めたプランで撮影に臨む。いい加減に考えている監督では太刀打ちできない。

だから、監督は俳優以上に考えねばならない。そして俳優は自分の役だけ考えればいいが(凄い人は他の役まで把握する)、監督は出演者全ての役を考えねばならない。それでいて俳優以上に考えていないと演出はできない。それでこそ、俳優は

「ああ、この監督は考えている。信頼できる!」

と現場で感じる。そして出来た作品を見た時に自分の演技を見て、同時に作品全体を見て完成度が高ければ、本当の信頼に繋がる。そんな監督と仕事をするのは俳優としては嬉しい。疑うことなく、信頼して演じれば、いい芝居ができり。素敵な作品ができる。仕事が楽しくなる。つまり先の俳優さんの言葉は、多くの俳優さんからの評価でもあるのだ。

それも「信頼していた」ではなく「信頼感が凄かった」なのだ!とても嬉しい。考えてみると、今回のメンバー。多くが2本目3本目の俳優さんばかり。以前の作品で「いい仕事が出来た!」と言う評価でもある。そして俳優に信頼されてこそ、いい作品になる。俳優が迷ったり、疑っていたりしては、いい芝居ができない。それは作品クオリティの低下に繋がる。

と言うわけで、今回も素敵な作品が出来た。12日にはロケ地でアンコール上映。近隣の方はぜひ、観て頂きたい。最後の映画館チャンスだ。



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