「明日にかける橋」感想 by 和歌山県の女性=どこにでもある地方の小さな町が、こんなに美しくなる… [明日にかける橋=感想]
「明日にかける橋」感想 by 和歌山県の女性=どこにでもある地方の小さな町が、こんなに美しくなる…
過去に戻れたら…そんな切実な思いを胸に、私達はいつの時代も、言えなかった言葉や、伝える術を知らなかった悔しさを抱えながら生きています。
太田監督の映画「ストロベリーフィールズ」では、そんな青春真っ只中の女子高生の悲しい叫びと熱い思いに涙しましたが、最新作のこの映画では、主役は今の私達、くたびれかけている私達、諦めかけている私達、そう、観客自身でした。
いつもハリウッド映画でも、鳴り物入りで封切られたテレビ局出資の邦画でも、眠気に苛まれる私が、この「明日にかける橋1989年の想い出」では、一度も緊張感が途切れることなく、最後まで観賞できたのは、主役が観るもの自身に設定されていたからかも知れません。
1989年の景色が映し出される度に、私達観客は、楽しかったことも、辛かったことも、頭の片隅に自分自身のスクリーンを映し出しながら、この吉行家の家族達を追っていくのです。最後はどうなっちゃうの?ハラハラしながら物語は進みます。
「ストロベリーフィールズ」では、悲しい運命は変えることができなかったけれど、太田監督作品は、どの作品も、どこかに必ず光を植え付けてくれています。
けれども、今回この作品では明らかに一線を越えてきます。過去が変えられていくのです。なぜ?
それは、今の時代に観てもらうことに意義があったからなのでは? 昨今の、有無を言わせぬ世の中の流れは、力のない弱い立場の人々にはあまりにも酷です。
過去の悲惨な戦争体験さえ暗示しながら、物語は小さな少年の大好きなカメラ好きから決して手を離さないのです。
お母さんの剣道好きからも、主人公の家族愛からも…。
メッセージはこれで充分でした。この映画を観た方々は、必ずそこに自分を重ね、好きなものへの執着だけが、自分を、そして世の中を変えられる鍵だと気づくはずです。
最後を飾る花火は、どこにでもある地方の小さな町が、こんなに美しくなる…それは、私達という弱くて小さな存在の背中を押してくれる、あたたかいメッセージでした。観てよかったです!
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明日にかける橋。ららぽーと磐田、岡山メルパで絶賛上映中。
京都、群馬は近日上映。