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映画にしか出ない俳優が増えている? バラエティや歌をやらない訳 [映画業界物語]

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俳優とタレントは違う。両方をやっている人もいるが、近年は明確に線引きがされている。昔は歌手でレコードを出し、ドラマに主演し、映画に出て、CMの出演という人が多かった。が、次第に俳優は俳優。歌手は歌手という風に専門職(?)が主流になってきた。

これは近年のレストランと同じ。昔はデパートの最上階にある食堂とか、洋食、和食、中華なんでもあり。便利だけど、味はそこそこというのが人気だった。その後、洋食専門どころか、イタリア料理専門とか、さらに分業され。今では、オムライス専門というところまで来ている。でも、そんな店の方が人気で単に洋食というだけのレストランは人気がない。

歌手の世界も同じ。歌手なら歌手。歌が専門。映画やドラマには出ない。バラエティにも出ない。そのことでアイドルとは違い、本格派であることをアピールする。現在のアーティストの多くはこのタイプだ。元祖的なのは松任谷由実とか、矢沢永吉、山下達郎。最近のアーティストも皆、このタイプ。

俳優も同じだ。ドラマや映画を専門とし歌は歌わない。それがさらに線引きされて、映画しか出ない俳優というのも出て来た。というのもテレビドラマには出ないことで、特別感を持たせるためだ。ドラマだけではない。バラエティ番組にも出ない。ただ、主演映画が公開されるときは、宣伝としてトーク番組等に例外的に出る。

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今、人気の俳優はそんな路線で売る人が多い。いい映画を選んで出演。テレビドラマは極力出ない。映画で特別感を出して、イメージを売り、CMで稼ぐ。本来、テレビに出ることが売れるための近道だったのだが、あえてそれを避けることが主流になっている。それに対してタレントという人の多くは、以前からのパターン。テレビに出まくることで「売れている」感を与えて人気を得るという方法を続けているが、どこか俳優に比べると軽さを感じてしまう。

それらは事務所の方針である。違いは仕事をすると分かる。俳優専門で売る事務所だと、出演依頼をすれば撮影期間中のスケジュールを全て押さえてくれる。俳優が役に専念できるようにバックアップ。が、タレントあるいはモデル専門からスタートして俳優も扱うようになった事務所は、撮影休みがあると、すぐ別の仕事を入れてしまう。少しでも多くの仕事をさせて稼ぐ。

商売であることは分かるが、問題がある。そもそもタレントやモデルは基本、1本の番組。その日1日の仕事であるので、毎日違う現場に行くのは当たり前。1日でなく、数時間空けば別の仕事をするのは当然なのだが、映画というのは集中力であり、同じ役を1ヶ月に渡って演じ続けるのに、途中で別のドラマに出たり、バラエティに出たりしていると、役から離れてしまい、現場に戻ってもまた1からとなることが多い。いい芝居が出来なくなる。

そんな映画現場をタレントやモデルが中心の事務所は理解できない。なので、俳優の気持ちを考えずに別の仕事をさせてしまう。結果、いい俳優が育たない。ルックスはいいが、演技力のないタレントが役者を兼ねているという存在しか育たない。ある事務所はまさにそれ。大手で力があるが、そこの俳優はずば抜けた役者がいない。スケジュールもねじ込んで来る。だから、僕はそこからは絶対に選ばない。


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長くなって来たのでまとめるが、お笑い芸人でもいい役者はいる。が、やはり彼らはお笑いに命を賭けている人が多く、俳優業はアルバイトと考えている人が多い。タレントと言われる人たちもそう。人気はあるが、彼ら彼女らと素晴らしい作品を作るのはむずかしい。「映画も多くの仕事のひとつ」としか考えていないからだ。全力で演じない。台詞を間違わなければいいかな?という姿勢。命がけで演じることはなく。「この現場のあとテレビがあるから、体力を温存!」という感じ。

それらは個々の俳優というより事務所の方針が大きい。毎回、キャスティングをするときは、そこを重用視する。演技に命を賭けている人。人生を賭けている奴。低予算でも、大作でも、同じエネルギーで挑む役者。そんな人たちとでないと、いい作品はできない。1人でも軽い気持ちで、アルバイト感覚で俳優をする奴がいると、現場の空気が悪くなる。「早く終わってよー次があるんだからさー」みたいなタレントやマネージャーがいると、スタッフの怒りが込み上げる。

その俳優を魅力的に撮影しよう!という気持ちになれない。当然、作品のレベルが下がる。そんなふうに俳優を1人選ぶことはとても大切なのだ。その意味で僕はモデルクラブ系の事務所やバラエティタレントが多い事務所から俳優は選ばない。逆にいうと、近年、増えている「基本は映画」「歌手やタレント業はやらせない」「テレビは出さない」という事務所にはいい俳優が揃っており、映画製作に対する理解もある。そんな事務所と仕事をすることが多い。

レストランも俳優も同じ。専門店が今の時代に支持を集め、生き残っていくと思えている。

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