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素晴らしい俳優に、より素晴らしい演技をしてもらうお手伝い。 それが映画監督の仕事=「明日にかける橋」の思い出 [映画業界物語]

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素晴らしい俳優に、より素晴らしい演技をしてもらうお手伝い。
それが映画監督の仕事=「明日にかける橋」の思い出

太田組式演出は撮影現場ではなく、シナリオの段階で始まる。例えば「明日にかける橋」には田中美里さんに再度出てほしいと考えていた。前作「向日葵の丘」での演技が素晴らしかったからだ。そのあとに彼女が出演した朗読劇を拝見したが、衝撃を受けた。彼女の実力は「向日葵」とは別の、さらなる力があることを痛感。

彼女は「ゴジラ」シリーズ。2時間ドラマでは強い役を演じている。しっかりとした大人の女性キャラが多いように思える。が、本当は繊細で壊れそうなほどナイーブな面もある。その線で考えた。新作はタイムスリップして弟を助けに行くという物語。骨格はできていた。その物語を展開させるために必要な役を考える。

主人公、弟。今回は家族の絆がテーマ。となると母、父が不可欠。そして主人公を助ける存在(藤田朋子さん。宝田明さんの役)。あとコメディリリーフが欲しい。で、主人公の後輩2人を考えた。その中で美里さんはやはり母の役だ。そこからは物語を創作しつつ、美里さんの魅力が発揮される役と展開を同時に考える。俳優の魅力が発揮されるということは、物語が面白くなるということに繋がるのだ。

いつも元気なお母さん。剣道の師範で強い。弟の死によって、その強い母が壊れて行くという展開にする。いかにもひ弱な母なら展開を予想できるが、元気で強い母が崩れて行く姿を見るのはなお辛い。その難しい表現を美里さんなら見事にこなしてくれるだろうと考えた。同時に、後半では娘のために戦う姿も見せる。これは「向日葵の丘」で演じてもらった病気で余命数カ月の女性の延長にありながら、強いキャラも演じてもらう。その極端な二面性を彼女なら見事に演じ切ると考えた。

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それができる女優はまずいないだろう。強い役。繊細な役。それぞれを演じることはできても、両方を魅力的にはできない。他にもかなりリスキーな芝居を盛り込んで「これできますか? 演じられますか?」という高い壁を物語に配した。が、期待通りに美里さんはその全てをクリアして感動の名演技を見せてくれた。つまり、単に本人がやりやすい役を書くのではなく、その俳優さんの魅力が爆発した上で、難題に挑戦してもらうことで、さらなる魅力が発揮。物語も感動的になるということなのだ。

太田組に再度出演してくれた俳優の皆さまには毎回、そんなことであれこれ考えて怒涛のミッションが用意された役を考える。ただ、演じる方も大変だが、考える方も大変。その昔、藤田朋子さんが「太田さんの映画に出たい」と言ってくれたことがあり、役を考えた時も、脳がすり減るほど考えた。

10年ほど考えて結果、喜んでもらえるものを考えつき、出演してもらえたことがある(それが「向日葵の丘」。その意味でも、業界の第1線をトップランナーとして走り続ける俳優さんと仕事するのは楽しいし、いいものができる。素晴らしい俳優に素晴らしい演技をしてもらう、それをお手伝いをするのが監督の仕事だと思えている。


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