毎回、全力投球。手抜きなし。第1線で活躍する俳優ほど努力している? [映画業界物語]
毎回、全力投球。手抜きなし。第1線で活躍する俳優ほど努力している?
誰もが知るベテラン俳優。数々の名作に出演している。日本の俳優の演技派ナンバー1を争う人だ。年齢は70歳前後。そんな凄い俳優さんが僕の映画に出演してくれた。
あまりにも有名、テレビでは引っ張りダコ。ただ、彼の作品を見ていると、これぞ!という映画では真剣だが、テレビドラマでは少し手を抜いているように思えた。とは言え、水準以上の演技であり、決して下手とか、やる気なしではないのだが、他に比べると、そう思えた。ベテランの方はギャラが高くて、多くの視聴者が見るテレビドラマより、現場が真剣な巨匠との映画に力を入れる人がいると聞く。
だから、その人が出てくれると決まった時。決して手抜きはしないが、僕の映画は低予算だ。それなりの演技で来ると思えた。ま、出てもらえるだけで映画は2ランクアップ。それだけの存在感がある方だ。最初、お会いするとき、こう言われると想像。
「ま、よろしく頼むよ! 楽しくやろう」
僕は間違っていた。最初にお会いした時、彼は超真面目な顔で、こう言った。
「私は演技に命を賭けています。ですから、まずは自由にやらせてください。それでもし監督が違うと思ったらいってください」
僕のような青二才の監督に、そう言った。そして、あれこれ言うなんて、おこがましいほどの素晴らしい演技を見せてくれた。鬼気迫る芝居に文句のつけようがなかった。後で、彼とよく仕事をする先輩から聞いた。
「あの人は毎回、全力投球なんだよ。映画でもドラマでも区別しない。手を抜いているように見えても、それはコミカルだったり、軽めの芝居が相応しいと思ってやっている。絶対に手抜きしない」
その通りだ。大手の作品は真剣に演じるが、低予算ものだと適当に演じる俳優はいる。が、彼は違った。いろんな俳優を見ていて気づいた。俳優を目指す若い人たちにそんなこと伝えたい。
「若手の方が手抜きする。この程度の作品で本気出せない。なんて考える。でも、第1線で活躍するベテランは絶対に手抜きしない。全力投球。だからこそ第1線で活躍するようになったのだ...」
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