プロにお任せあれ、なんだかんだ言ってもプロの力は大きい=あれこれ誰かが口を出すからトラブルになる? [映画業界物語]
プロにお任せあれ、なんだかんだ言ってもプロの力は大きい
=あれこれ誰かが口を出すからトラブルになる?
「映画を(わが町で)撮ってくれてありがとう。撮らせてくれてありがとう」
地方で映画を撮るときは、地元も制作スタッフもそんな気持ちが大事だ。そして地元の方々の多くは
「決して高額ではない制作費で故郷の映画を撮ってくれること感謝せねば」
と思ってくれるし、スタッフも頼まれたからというだけでない責任感、職人魂があるので
「こんなに応援してくれるなら、より良いものを作られねば!」
とギャラ以上の仕事をする。そこに雇った側と雇われた側ではない、一緒に頑張る!という関係性が生まれ、映画は素晴らしいものになる。が、時には地元側で
「金をもらってんだから、良いものを作るのは当たり前だろ!」
という人もいる。もし、十分な費用を出しているのならまだ分かるが、通常の半分以下の額なのに大金を出したつもりになり上から目線。
「あの公園も撮影に使うように、マストですから」
「それから街の特産物必ず映画に出してや」
なんて指示を始める。映画というのは旅行ツアーではない。金を出したからと、映画スタッフは何でもしてくれるわけではない。例えばシェフに対して
「私はソースが好きだから、和食でもソース味にしてほしい」
なんて非常識な要望をしても受け入れられない。
「この魚はこう言う切り方をしてほしい」
と言っても、その魚をそんな切り方したら身が壊れてしまうと言うこともある。1人が食べるだけなら良いが、それを多くの人が食べるなら心あるシェフは従わない。オーケストラの指揮者を呼び
「この楽章はこんな風に演奏してほしい」
「ベートーベンの第9は合唱なしでお願いします」
なんてことを素人が指示するのと同じ。それは指揮者に任すべきことであり、いくら金を出して楽団を呼んだからと、何を命令しても良いと言うことではない。映画も同じだ。
「餅は餅屋」と言う通り、プロは観客が喜んでくれる方法論や表現を熟知している。それを素人が上から目線で口を出しても、よくはならない。だから、そんな人がいても、僕が映画を作る時は絶対に受け入れない。すると、
「結局、監督は自分が撮りたい映画を撮るために、俺たちを利用しているんだ.....」
なんて言い触れ回ることがある。が、その人に従えば結果、映画が壊れ、良いものはできない。全国上映もできなくなり、悲しむのは街の人たちだ。例え僕が嫌われても、当て外れの批判を受けても、最後に多くの人が
「良い映画ができてよかった!」
と思ってもらうことが大事。そんな訳で素敵な作品ができても、必ず嫌われ、あとあとまで批判される。でも、それも監督業の宿命だと思える。大事なことは一部の勘違いオジさんのために作品を曲げてはいけない。その意味で「明日にかける橋」も関係者が皆、勉強家であり、そんな口出しする人は皆無、いつも以上に素敵な作品が出来た。皆が喜ぶ作品を作ること。何よりも大切なのだ。
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