「芸能界は魔物が棲んでいる。一般の人が迷い込むと狂わせれてしまう」という話を毎回思い出す? [映画業界物語]
「芸能界は魔物が棲んでいる。一般の人が迷い込むと狂わせれてしまう」という話を毎回思い出す?
地方で映画製作をすると、揉めることがある話。今回は少し詳しく書く。地方で映画を作る。地元からボランティア・スタッフが参加してくれた。とても助かる。でも、後でこんなクレームが来ることがある。
「出番待ちの女優さんがいた。ファンだったので感激してスマホで写真を撮った。ら、スタッフさんに注意された!ムカつく!」
これはよくある話だが、写真を撮った方はなぜ注意されたのか? 分からないことが多い。その構図を説明する。まず、その人は写真を撮り、後で友達に自慢しよう!(あるいはネットでアップしよう)と考える。
中国の山でパンダを見つけたら、誰もが「写真を撮ろう!」と思うだろう。だが、俳優は人間。もし、あなたが街を歩いていて、急に人が寄ってきてパシャ!と写真を撮ったらどうだろう?
気分のいいものではない。場合によっては殴り倒すかも? いや、相手が友人であってもいきなり写真を撮られたら「何だよ!」とムカつだろう。非常識だし、大変失礼だ。では、なぜ、それを俳優にはしてしまうのか?
「憧れの女優さんだ!」
写真を撮れば自慢できる。ネットに上げるとウケる。そんな軽率な考えで常識が働かなくなる。多分、ワイドショーでマスコミが物凄い勢いで写真を撮る映像をよく見るので「俳優の写真を撮るのは構わない」という無意識も働くだろう。
本来、冷静に考えるとこうなる。もし、僕の会社に見知らぬ人が来て、デスクで仕事する僕の写真を無断で撮ったらどうか? 気分が悪い。俳優さんの仕事場である撮影現場でも同じ。注意されるのは当然。なのに「注意された。ムカつく!」と思う人が出てくる。
「タダで手伝っているんだから、写真くらいいいだろう?」
という人もいるが、ボランティとは報酬がない行為。「だから写真を撮ってもいい」では見返りを求めている。それはもうボランティアではない。そして無給で働いたからと言って、写真を撮ってもいいということにはならない。
でも、その手の人は決して常識がないわけではない。日常では法律を守り、ルールを守り、仕事をしている。人に迷惑をかけず、協調性もある。なのに、芸能ということになると、常識をなくすことがある。俳優さんの立場に立って考えていない。「自分がいきなり写真を撮られたら嫌だ」と置き換えない。
「タダ働きだから、写真くらいいいだろう?」
と自己本位に考える。注意されると逆ギレする。芸能関係、俳優に対して、撮影現場で、あるいはコンサート(今は警備が厳重だが、昔はホール内で暴走するファンがいた)という特別な環境になると、冷静さを失い、常識ハズレなことをする人がいる。
「芸能界は魔物が棲んでいる」
一般の人が迷い込むと狂わせれてしまうという話を昔、聞いたことがあるが、この件もそんな一つなのだろう。特に憧れを持っている人は惑わされたり、振り回されたりしがち。だから、俳優にはマネージャーが付きガードするし、撮影スタッフも俳優と一般の人たちとの接点をとても気を付ける。
他にもサインを求めたり、あれこれ俳優に話しかけたりして、メルアドを聞いたり(いずれも、物凄い集中力が必要なので俳優には大きな負担となる)スタッフが注意。そのために逆ギレ。
「手伝って損した!」「結局、俺たちは利用されたんだ!」
と不満を持つことがある。だが、彼らは俳優がどれほど神経過敏になっているか?を知らない。憧れが強く、ドラマで演じているキャラをダブらせて、
「きっといい人だ!」「笑顔でサインしてくれるはず!」「写真を撮っても怒らない。むしろ、ピースしてくれたりするだろう!」
そう考えていたのだ。こうして「映画の手伝いは辞めだ」「あの女優は二度と応援しない」と恨みだけが残る。同じ日本人、日本での撮影、なのに、芸能界と一般の世界はやはり違うのかもしれない。事前に説明しても必ず、何件かはそんな事件が起こり、毎回苦い思いが残る。
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