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町興し映画を作ろう!と市が予算を出しながら、悲しい結末に終わったある田舎町。 [地方映画の力!]

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町興し映画を作ろう!と市が予算を出しながら、悲しい結末に終わったある田舎町。

後輩のD君からこんな話を聞いた。彼の故郷で「街をアピールする映画を作ろう」と、市が予算を取った。D君はボランティア・スタッフとして参加。予算は2千万ほど無名の俳優ばかりの地元発見物語。だが、企画時から揉めに揉めた。

一つには行政側があれこれ文句を付けたことで、トラブルが続出。何かにつけ「市民の税金なんだから!」と言って、あれこれ作品に注文をつけたのだ。依頼を受けた映画監督が激怒。何度もあわや中止というところまで行った。D君に聞くと

「市が映画作りというものを全く分かっていないのに、あれこれ口を出したんですよ」

よくある話だ。金を出した側。映画製作の経験もなく、勉強もしないのに聞きかじった話で、あれこれ指示する。例えればオーケストラを呼び、「第9」を演奏して欲しいと依頼。指名した指揮者に市役所の職員がこう言うのと同じ。

「第1楽章はこんな風に演奏してください!」「バイオリンはヨーロッパの人を呼んでください!」

業界でど素人ーと言われるのはそういう人たちのことだ。

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金を出したら何を要求してもいいというものではない。指揮者を指名したなら、その人のセンス、実力、を信じて指揮してもらうのが礼儀。別の例を挙げるなら、レストランで料理を注文した後に厨房に行き、

「キャベツはもっと細かく刻んで、ソースは辛めに!」

とシェフに命令するようなものだ。そう言い換えると、いかに非常識なことをしているか分かるだろう。指揮者でも、シェフでもプロ。それに対して敬意を払わず、何も知らない素人が指示、命令をするのは身の程知らずとしか言えない。彼らはそのために何十年と修行したり、学んだりしてきているのだ。それが分からない地方の人、行政の人が時々いる。

「市役所職員がまさにそんな感じで、依頼を受けた監督は激怒。トラブルが続いたんです」

結果、2000万も使いながら、できたのは30分の短編ドラマ。D君はおかしいと思った。

「2000万は映画制作費としては安すぎる。でも、30分ものならもっと安くできる。内容を見ても500万くらいで出来るものだ」

いろいろ聞いて回って、どうも製作会社が半分以上の制作費を抜いているようだ。つまり、500万でドラマを作り、後の1500万は利益とした。多分、監督は知らないだろう。製作会社がこっそり行ったこと。

「これはちょっと酷すぎ! 監督も可愛そう。真相を究明しなければ!」

D君は役所に直訴したら職員はこう言う

「映画は金がかかるものだろ? あの30分に2000万かかったんだよ」

準備中はあれほど文句を言い「市民の税金なんだから」と繰り返していたのに、その税金が無駄に使われている可能性があるのに、調べようとしない。D君はすぐに気づいた。

「もし、本当に500万で作っていたら、市民の税金が無駄に使われたことになる。大変なことだ。役所の責任問題になる。だから、制作費は正当に使われたことにしておかないとまずい。職員がいうのは、そう言うことなのだ....」

D君は許せず。今度は県会議員に直訴。こう言われた。

「もう、制作費はないんだろ? だったら仕方ないんじゃないか」


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だから、製作会社に明細を出させて、使途不明金があれば返還を求めれば!と言っても「もう、終わったことだから、言っても仕方ないよ」と繰り返す。

「ああ、この人も市民の税金を無駄にすることより、問題を追及するのが面倒なんだ....」

そう思えた。気の毒なのは監督だ。最初は役所からあれこれ言われ、現場では製作会社に半分以上も費用を抜かれた額で撮影せねばならなかった。2度とあの街では映画を撮らないと言っているらしい。D君はいう。

「故郷が舞台の映画が作られると聞き、嬉しかった。だから、ボランティアとして参加した。監督もいい人だった。でも、素人の職員があれこれ言い出し、監督の思いや希望が次々に踏みつけられた。多分、それを見ていた製作会社が自治体はど素人だと気づき、費用を誤魔化しをした。500万で作ってもバレしない!と。実際、役所も県議もそれを知っても動こうとしない。

もともと、我が街で映画作りは無理だったんだ。いや、市役所には無理だった。映画監督といえば芸術家。その人にあーしろこーしろ素人がいうこと自体がおかしい。監督は屈辱的な対応でよく辞めずに頑張った。もっと、監督が作りたいものを自由に撮らせてあげれば、素敵な映画ができたんじゃないかな...」


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そう。あれこれいうのなら職員が監督すればよかったのだ。役所だけではない。映画製作を知らない、経験しない人間があれこれ言うのが間違い。これは映画だけでなく、先に挙げたオーケストラでも料理でも、その道のプロに対して指示するのが信じられない。餅は餅屋。

服のオーダメードを作るのなら本人の希望を聞くべきだし、家を建てるのなら家族の希望を受け入れる必要がある。が、映画とか、音楽とか、料理とか、多くの人に楽しんでもらう芸術的なものに素人が口を出すと必ず失敗する。その種のものはアーティストを信頼して任せるしかない。それが芸術だ。

結局、その映画は地元の小さなホールで1日、密かに上映されただけで終了。全国の映画館で上映されることはなかった。その1日のための2千万円の税金が使われたのだ。背景にあるのは役所の無知、勘違い。あれこれ指示して、監督のやる気を削ぎ、外部の会社に制作費まで抜かれて、そんな結末。なぜ、勉強しようとしないのか? なぜ、知らないことを指示するのか? 地域がいろんな意味で展開できない背景は、そこにあると思える。



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