仕事のない俳優はどうやってチャンスをつかめばいいか?=ある若手の失敗をご紹介。 [映画業界物語]
仕事のない俳優はどうやってチャンスをつかめばいいか?=ある若手の失敗をご紹介。
俳優業はとても大変だ。テレビや映画に出ている人たちはほんの一握りで、ピラミッドでいう上の部分にいる人たち。だが、底辺にはその何百倍。何千倍もの無名俳優たちがいる。
映画やテレビには出たことがない。事務所に所属はしているがオーディションに受かったことがない。エキストラのような仕事しかしたことがない。映画に出ても小さな役。年に1回2回ある程度。そんな人が多い。
20代だけではない。30代。40代の人たちもいる。皆、アルバイトをしながら生活を立てている。僕もそんな子たちをたくさん知っているが本当に大変だ。だから、飲み会等で監督やプロデュサーが来ていると彼らは力が入る。
「ここで知り合いになり、作品に出してもらおう!」
だが、監督やプロデュサーは男性が多い。むさ苦しい野郎どもに興味はない。女優で可愛い子たちには関心を持つが、そこで次回作のキャスティングをしようなんて思わない。単なるスケベ心でしかない。
また、無名の女優でもしたたかな子がいて、そんな男どもの心理を逆手に取り、恋心があるかのように思わせて近づき、親しくなり、仕事をもらおうとする子もいる。でも、体は売らない。相手のスケベ心を利用しているのだ。
まあ、やり手のキャバ嬢のようなもの。そんなことがあるので、僕は俳優がいる飲み会にはまず行かない。行った先で出会ってしまったとか、関係者の会なら仕方ないが、いつも書くように俳優とは距離を置きたいからだ。
僕のようなひねくれ者もいるので、俳優たちはさらにチャンスを見つけにくい。が、見ているとチャンスが目の前にあるのに気づかずに、みすみす逃してしまう人たちも多い。
こんなことを監督の僕が書くのもどうか?と思うが、ほんと見てられない子が多い。といって、電話して説教するのも違う。だから、ここで少し書いてみる。
例えば小さな役でも出演ができた。でも、その場合。現場で監督と話をするチャンスがないことが多い。監督はメインの俳優には演出するが、小さな役の場合は演出部スタッフから指示がでることもある。食事も別々。打ち上げでもなかなかチャンスがない。せいぜい、挨拶しお礼の気持ちを伝えるくらい。
ある俳優。僕の場合の映画の市民俳優オーディションに参加した。プロなのに市民と共に審査を受けた。受かってもギャラも交通費も出ない。それでも「この監督の映画に出たい!」という。
それは嬉しく。やる気を買って採用した。芝居はまあまあだったが、それなりの役で出演してもらった。が、最後に会ったとき、こういわれた。
「監督。今回はノーギャラで出たので、次回はギャラお願いしますね!」
呆れた。やる気は買ったが、実力は買っていない。ギャラを払ってまで呼ぶつもりはない。でも、何らかしらの芝居に対する映画に対する思いがあれば、次も何かで呼びたいと思うが、結局彼にとってノーギャラ出演は、初回無料のお試し使用でしかなかったのだ。それならギャラなりの芝居をする役者を呼ぶ。
別の俳優。彼も無名。ある監督の作品に出た。小さな役だがとても魅力的な役。監督も評価していた。その映画の初日。メイン俳優による舞台挨拶。彼は登壇できない。だから、劇場には行かなかった。
その後、舞台挨拶part2があり、彼が誘われた。が、バイトがあるからと断った。舞台挨拶はギャラがでないのだ。最終日、監督は映画館に行った。でも、彼はすでに映画を見ていたので行かった。その無名俳優の友人=彼も俳優=はいう。
「お前、ほんと馬鹿だな。なぜ、行かないんだ!行けば帰りに監督が飲みに誘ってくれたりするかもしれないだろ? 思いある監督は初日と最終日に劇場に行くんだよ。そこで会えば、こいつも思いあるんだな?と評価されるだろ? そして何で舞台挨拶行かなかったんだ?」
つまり、撮影現場ではなかなか監督と話をする機会もない。でも、舞台挨拶なら、待ち時間。終わってからもいろいろ話せる。そこで思いを伝えれば気に入られて、次も依頼くれるかもしれない。ということだ。それは正しい。
スピルバーグ監督が「ジョーズ」を撮影していたとき。出演者のリチャード・ドレイファスとランチをした。そこでスピルバーグは次回作はUFOものをやると話す。それに強い興味を持ったドレイファスは言った。
「スティーブン。その役を僕にやらせてくれよ」
が、スピルバーグの主人公イメージはジャック・ニコルソン。年配の親父イメージ。ドレイファスは若すぎると断られた。でも、ドレイファスは諦めず、スピルバーグと飯を食うたびに口説き続け、最後は主人公の年齢を下げさせて自身が演じることで了解を取り付けた。
その映画が「未知との遭遇」である。彼はそこから大スターになり、数年後、「グッバイガール」でアカデミー主演男優賞も受賞する。待っているだけではなく、行動して栄光を掴んだのだ。
友人がいうのはそういうこと。自分の思いを実力を伝えることで道が開けることもある。でも、その前に監督と話ができる機会が必要。小さな役だと撮影も数日。現場は過酷。そんなときに監督とじっくり話したりできない。でも、舞台挨拶なら余裕あり、あれこれ話ができる。帰りに飲み会になるかもしれない。
「そんなチャンスをお前は逃したんだよ!馬鹿だなあ」
俳優業は厳しい。そんなふうにチャンスを探す者。バイトだからと依頼を断る者。道は大きく分かれる。今はFacebookというツールもある。
まあ、それを使って「俺を出演させてください」というのは嫌われるが、監督の思いを知ることができる。俳優というのは監督の思いを、いかにして演技で伝えるか?が大事。だから、信頼できる俳優を監督たちは毎回起用する。
と書くと、その手のメッセージがどどどどと僕のところへ来ると怖いので、なるべく書きたくなかった(僕にその手の連絡はしないように!)いや、僕だけでなくメッセージを送るのは逆効果。特に女優がすると相手は勘違いするだけ。
アプ仕事のない俳優はどうやってチャンスをつかめばいいか? 。女優が飲み会に通っても興味を持つのは、スケベ親父だけ。今回書いたのは営業しろということではなく、目の前のチャンスを逃すなということ。そしていつもいうように営業するより、演技力をつけろ。それが一番大切なことなのだ。
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