俳優の卵たちへ=成功者の言葉にヒントを探し、夢を追う>矢沢、マネーの虎、小室哲哉? [映画業界物語]
【成功者の言葉にヒントを探し、夢を追う=矢沢、マネーの虎、小室哲哉?】
矢沢永吉は今も東京ドームのチケットが完売する人気アーティスト。その彼が30年ほど前に出した自叙伝「成り上がり」。
「誰もがビッグになれる道を持っている」
と書いた。その後、1980年代前半。彼がNHKの番組に出演したとき、「矢沢さん。若者にメッセージを」と言われた。番組側は若者への激励を期待していたようだ。が、矢沢はこういった。
「俺が何を言っても、やる奴はやる。やらない奴はやらない」
随分、突き放した言葉だった。が、当時、学生映画をやっていた僕は納得する部分もあった。映画監督を目指して全国から集った若者たち。8ミリ映画を作り、認められ、メジャーデビューすることを夢見た。が、夢を語りながらカメラを手に取らないもの。映画を撮ってもすぐ諦めて故郷に帰る者。
何度も励まし、一緒に監督になろう!と伝えても無言でいなくなる者も多かった。逆に、自分の夢を着実に追い、目標とする仕事についた友人も1名いた。矢沢の言う通りだ。
「やる奴はやる。やらない奴はやらない」
その後、僕はかなりの年月をかけて監督デビューした。俳優を目指す卵たちと数多く出会った。そのときのことは前回の記事で書いたが、夢追う彼らを見て、昔の自分や消えて行った仲間のことを思い出した。がんばってほしい。僕は応援してくれる人がほとんどいなかったので、余計にそう感じた。
高校時代に映画監督になりたい。映画を作りたい!と思った。が、当然、親、親戚、教師は皆反対だ。「世の中甘くない」と口を揃えて言った。映画学校に行き、学生映画を始めた。
「この作品でプロに殴り込む」
でも、同級生たちはこう言った。
「プロの世界はそんなに甘くない」
その後、学生映画ブームは終焉。僕は思うところがあり、LAに留学。憧れだったUSC(南カルフォルニア大学)の映画科に学んだ。そして帰国。アルバイトをしながら、シナリオを書き続けた。それを映画会社に持ち込んだ。が、こう言われた。
「よく分からないストーリーだね。何ともならないよ」
昔の同級生にはこう言われた。
「あのまま日本にいれば、Vシネマくらい監督できたかもしれないよね?」
否定、批判、無視、そんなことばかりだった。矢沢永吉の本を思い出す。彼はデビュー後、かなり酷い契約をレコード会社と結んだ。メンバーは気にしていなかったが、矢沢は怒っていた。で、彼は勉強を始める。印税について、契約について、興行について、
やがて、最初のバンドであるキャロルを解散。ソロデビューする。そんな矢沢。レコード作りも、最初は作曲と歌だけ。それがプロデュースも担当。テレビ出演はしないという戦略。全国で100カ所コンサートを何年も続けた。
キャロル時代のメンバー。ジョニー大倉。「笑っていとも」のテレフォンショッキングに出演したとき、タモリに聞かれた。ー矢沢永吉ってどういう人なの? こう答えた。
「大阪商人ですね!」
なるほどと思えた。矢沢はアーティストであると同時に、商人であり、ビジネスマンなのだ。
帰国してから壁にぶつかると、著名人の生き方を調べた。皆、どうやって夢を掴んだのか? 目標を達成したのか 矢沢永吉は昔から興味を持っていたので、テレビ出演やインタビュー記事を知れば、必ずチェックしていた。矢沢だけでなく、皆、壁にぶつかったとき、考えている。
何が悪いのか? 何がマズいのか? なぜ、理解されないのか? なぜ、うまく行かないのか?
当時、人気だった番組。「マネーの虎」一般人が夢を語り、その事業をする金を投資してもらうという趣向。スタジオに並んだ金持ちたち(虎)を説得できれば投資が受ける。皆、事業に成功した社長たち(ただ、その後、多くが倒産しているが)役線錬磨のオヤジたちだ。
ある回。事業がうまく行かない依頼人。次こそは!と、プレゼンした。虎の一人がいう。
「なぜ、君の事業はうまく行かず、僕らは成功したんだと思う?」
「さあ、俺の努力が足りなかったんじゃないですか?」
僕も依頼人と同じ答えを持った。が、虎の言葉は予想外だった。
「努力じゃないよ。考え方が間違っているんだよ」
がーーーーーーん! 努力じゃないんだ........。確かにその通りだ。努力しても間違った方法に努力したら、何の意味もない。大事なのは「考え方」なんだ!その考えが正解だったから、虎たちは成功した...。思えば、矢沢永吉を始め、成功者たちも、ほとんど同じ。当時大人気だった小室哲哉も近いことを言っていた。
でも、考えて正解が出る訳ではない。仮説を立てるということ。***を作る。***に持ち込む。***社はその手のカラーが好き。きっと採用される。でも、そんなことは虎に言われるまでもなく、やっていた。が、あの言葉で確信になった。
あとで考えると、当時、僕が考えていたのは売り込み方でしかなかった。もっと大きな枠で考えること大事だと思えた。映画会社は腐り切っているので、何を持ち込んでもダメ。人気原作とか人気俳優しか理解できない。感動的な脚本を求めてもいないし、読んでもその価値は分からないのだ。
考え方と同時に運も大切だ。ちょっとした出会い。そこから大きなチャンスに繋がることがある。バイトを休んででも、参加したことで展開する。バイト休むと来月の生活が....と思うが、それではチャンスと出会えない。
そう感じて、ある年の忘年会。1ヶ月間、毎日参加した。30個の忘年会ー業界のーに出たが、何ら繋がることはなかった。営業でうまく行ったことも一度もない。が、思いかけないことでチャンスが転がって来たことも多い。
先輩からの1本の電話。たまたま、バイトが休み。翌日から撮影。来てほしい。という即決して参加した。携帯のない時代だ。もし、その日、バイトをして電話に出れなかったら、別の者に電話したと、あとで言われた。
その1本の電話から、数年後、監督デビューに繋がる。そんな話をよく俳優の卵たちにしたが、それを理解したからとチャンスが舞い込む訳でもなく、やがて夢破れて消えて行く。そして世代が変わり、今の若い奴にもそれを告げるが、やはり「バイトがあるので」とチャンスを潰す奴がいる。久々に思い出したのが矢沢永吉の言葉。
「俺が何を言っても、やる奴はやる。やらない奴はやらない」
誰かに教わるのではなく、自分でヒントを探して、考えて、実践する。言われても、それは身にならない。僕は何か言ってくれる人がいなかったので、今の若い連中には伝えたいと思っていた。が、自分で答えを見つけることで、大きなプラスになると今は思えている。見つけてほしい。自分なりの「考え方」。そして「その答え」を。
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