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【スピルバーグからの大きなチャンスを待ってはいけない。小さなチャンスを見つけて、それを繋げろ】 [映画業界物語]

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【スピルバーグからの大きなチャンスを待ってはいけない。小さなチャンスを見つけて、それを繋げろ】

先日、チャンスに気付かない俳優の卵の話を書いたところ。「スピルバーグ映画のオーディションなら行くのか?」というコメントをもらった。ああ、なるほど。

僕は不幸にも家族親戚には映画関係者が1人もいなかった。ただ、幸運にも18歳のときに映画撮影の現場を何日にも渡って見学。19歳で助監督を経験した。映画学校の同級生たちは優秀で、多くが映画の仕事をするようになった。

20歳前後にはA.D.を経験。若い頃から業界に親しむことができた。逆に若い頃のアルバイトとか、会社員の経験がなく、カタギの生活がピンと来ないところがある。そんな中で知らず知らず覚えたのは大きなチャンスはめったいにやって来ないということ。

漫画でよくあるように、漫画家志望の子が学校に遅刻しそうで走っていると、誰かとぶつかる。その人がたまたま漫画編集部で働いていた。ぶつかったショックでカバンから漫画原稿が飛び出す。

「君。漫画描いているの?」

それがきっかけでデビュー! なんてストーリーが昔はよくあったが、そんなことはまずない。漫画家だけでなく、小説家でも、脚本家でも、原稿をもって営業しても、読んでもくれないことが多い。つまり売り込んでも難しいのに、遅刻しそうで走っていてもダメ。

ただ、アルバイトをしていてもダメだが、業界と近いところにいると、チャンスがまわってくることもある。が、そのチャンスに気付かない人も多いのだ。以前、ある大手映画会社のプロデュサーから言われたことがある。

「君。***できる?と仕事を頼まれたら、必ずできる!と答えろ。そこから全てが始まるんだよ」

誰もが知る名作、話題作を70ー80年代に製作してきた大プロデュサーの言葉だ。思い出すのは「ゴッドファーザー」のフランシス・コッポラの逸話。

彼のスタートはシナリオライター。あるときプロデュサーに「君、第二次世界大戦について詳しいか?」と訊かれ、「専門家ですから!」と答えた。で、ある映画のシナリオを頼まれた。彼は帰り道で本屋に寄り、第二次大戦の専門書を買って帰ったそうだ。

その後、コッポラに別の会社からオファーが来る。彼が書いた脚本の映画を観て第二次大戦の専門家だと思い頼んで来たのだ。その映画でコッポラはアカデミー脚本賞を受賞する。

日米、同じなのだ。そんなふうにチャンスがチャンスを呼ぶ。小さなチャンスが大きなチャンスに繋がる。いきなりスピルバーグからオファーは来ない。だが、チャンスのあり方を知らない俳優の卵はこう考えた。

「小さな映画のオーディションだから、バイト休むほどのことないな〜」

学校を卒業してからずっと、バイト生活をしている彼は業界のことが分からない。素人同然の(いや、素人です)俳優の卵に、スピルバーグから依頼は来ない。ま、それはないにしても、大作映画のオーディション、有名監督のオーディションにも行ける訳がない。低予算だって無理。事務所に入っていないのだから。だから、いい経験になり、チャンスに繋がるかもしれないので、声をかけた。

すると「バイトがあるので」という答えだった。僕は若い頃から業界にいたので、気付かなかったが、彼は来るはずもない大きなチャンスを夢見て、小さなチャンスに気付かず、それよりも日常を大事にしてしまうのだ。1日バイトを休むと来月の生活にしわ寄せが行く。

だが、どんな下らない映画のオーディションでも、行けばスタッフに会う。監督と話せれば、監督という人種をナマで見ることができる。待っている間に、他の役者と話しができたり、情報をもらえるかもしれない。バイトしていても1時間1000円もらえるだけだ。その辺が想像できない。実践していたことだ。

昔は、そんなとき、そいつを呼び出して説教したものだが、今はもうしない。時間がないということもあるが、それでチャンスを生かした奴もいないからだ。別のコメントにこうあった。

「それに気付くかどうか? が成功する人としない人の違いかもしれないですね?」

その通りだろう。成功のためには努力が必要というが、チャンスに気付けるか  チャンスを生かせるか? チャンスの意味が分かるか? そんなことも大きい。俳優の卵たちに訊くと、

「月9に出たい」

「高倉健と共演したい」

「アメリカ映画に出たい」

という子たちもいる。もちろん可能だ。でも、そんなことをいうのは遠くで憧れているだけから。業界の競争を知らず、自分は特別、きっと成功するという根拠のない自信を持っているから。

「主演以外の役はしたくない」「ゴールデン枠しか出た無くない」

という無謀な希望を語る子もいる。一度、そんな奴に説教したことがあるが、何を言っても、

「僕はできますよ。まあ、見ててください。主演映画の試写会のときは呼んであげますよ!」

と自信過剰。さして二枚目でもない20代の男の子だった。その後、デビューしたという話は聞かない。映画でもテレビでも見かけない。要は現実を知らず、待っていればいつか誰かが自分を認め「君が主役だ」と言ってくれると思っている。それはシンデレラ症候群と同じ。だから、小さなチャンスに気付かない。見逃してしまう。

30年前の僕が若い頃から、そんな子たちがいた。そして、今の若い世代も同じことを言う奴が多い。若さゆえのものかもしれないが、一度、壁にぶつかるとすぐ「現実は甘くない」といい諦めてしまう。大切なことは僕が若かった頃も今も同じようだ。

「チャンスに気づき、小さなチャンスを繋げて大きなチャンスを掴むこと」

高過ぎるプライドを掲げて、高望みをしても誰も叶えてはくれない。また、日常に目を奪われていると、小さなチャンスを逃がしてしまう。そんな若い人を数多く見てきた。でも、僕は誰1人、背中を押すことはできなかった。そんな子たちに何を伝えればよかったのか? 今も考えてしまう。



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