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第1線で活躍する俳優の共通点。それを支える事務所のあり方? [映画業界物語]

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第1線で活躍する俳優の共通点。それを支える事務所のあり方?

僕の映画。最近は第1線で活躍する有名俳優が数多く出演してくれている。松坂慶子、長門裕之、津川雅彦、宝田明、板尾創路、常盤貴子、藤田朋子、田中美里....と凄い面々。未だに、これらの皆さんに出演してもらえたことに驚く。

以前、僕はこう考えていた。人気俳優は忙しいし、大手プロダクションに所属している。事務所はうるさいし、売れている人はいろいろ難しいことが多い。低予算作品だと、バカにしたり、下に見たりして、真剣に演じてもらえないのではないか?

だが、それは大間違い。第1線で活躍する俳優。そしてベテランや大御所俳優、出演頂いた人たちの中で誰1人として手抜きをした人はいない。全員が全力で演じてくれた。あるベテラン。テレビを見ていると、気に入らない作品だとパターンの演技でこなしている人だと思っていた。

それが、ご一緒したら、全力で演じてくれた。別の有名俳優は僕の様なチンピラ監督の言葉をメモし、役作りをしていた。僕が映画ファンだった10代の頃から活躍する方だ。

「いちいち言われなくても、ちゃんとやるから」

と言われても仕方ない。なのに、超真剣。監督が若かろうとベテランだろうと、その言葉に耳を傾け役作りをする。思うに、ベテランも第1線も、そんな姿勢で毎回演じるから、ベテランであり、第1線で活躍できるのだろう。

「低予算映画だから、この程度の芝居でいい。監督が若手だから、いつものパターンでこなすか?」

そんな風に考えない。実際のビッグネームの俳優さんたちと仕事をしてそう感じた。むしろ、俳優の卵。事務所に依頼されたワークショップに行ったときの方が、全力で演じない若手がいた。

「レッスンで真剣には演じませんから」

「次の事務所公演。あそこでがんばっても意味ないしね」

「俺は全力出したらスゲーんだぜ。でも、ここぞというときにしか出さないけどね?」

というスタンスなのだ。大御所が低予算映画で全力で芝居しているのに、新人が事務所主催の公演だから、全力では演じないというのは、間違っている。いや、その若手は大成できないということだろう。たぶん、ベテランや大御所は若い頃から全力で演じていた。だから、今があるのだと思える。

僕の作品ではないが、後輩監督が作った映画にお笑い芸人が出演したころがある。テレビでも活躍している人で、顔を見れば「あーー」と誰でも思うくらいの芸人さんだ。お笑いだけではなく、俳優としてもときどき出演している。その人。現場では評判が悪かった。撮影中もジョークを言って、現場を湧かせたりはするのだが、真剣に演じていない。

「こんなもんでいいでしょう?」

という感じなのだ。演技が冴えず「もう一度、行きましょうか?」というと、「えー、もう一度ですか?」と不満そうにいう。監督がそういうのは演技がよくないからだ。なのに芸人さんは

「あれで十分じゃない?」

と思っているので、そんな言葉が出る。そもそも、演技がOKかNGかは監督が決める。NGということは十分ではない。なのに、その芸人は自分でOKと思い込み、監督の判断に不満を漏らした訳である。後輩はいう。

「彼は俳優業をアルバイト的なものだと思っているようでした。お笑いは本業だから真剣にやる。でも、俳優業は違う。自分は知名度があるし、出演するだけで意味がある。マジに芝居する必要はない」

その芸人はまとめ撮りをして、2日で帰って行ったという。撮影中も

「3時までに終わるかなあ〜。**の番組収録あるんだよなあ」

とか気にしていたらしい。映画より、演技より、テレビのバラエティ番組出演が大事なのだ。その芸人が出た後輩の映画を見たが、文化祭で作られた映画に出た高校生のような芝居。顔が売れているからまだいいが、そうでなければ単なる大根だった。

その背景はこうだ。芸人さんはお笑いに命をかけている。もの凄い努力をする。僕もよく知っている。が、演技には命をかけない。本業ではないからだ。また、芸人さんが所属する事務所はお笑いがメイン。ドラマや映画に対する理解が少ない。会社自体が「映画はアルバイト」と考えている。撮影日にテレビの収録を入れ、5時出しとか言って来る。じっくりと撮影できない。早く片付けて局に行かなきゃ!となってしまう。

ちなみに、モデルクラブから俳優事務所に転じた会社もそんなところがある。芸人もモデルも、多く仕事を入れた方が儲かる。だから、映画撮影の日でも、別の仕事を入れる。事務所がそれだから、俳優もそれが普通だと思うようになる。だから、元モデルクラブの事務所で演技派が育ちにくい。綺麗で、イケメンでも、芝居がダメな役者が多くなる。

その点、昔から俳優中心の事務所は映画作りに理解がある。俳優が演技に集中しやすいようにバックアップする。最近は映画とドラマ以外の仕事をさせないところも多い。バラエティに出たり、歌を歌ったりさせない。番宣のときだけトーク番組やバラエティにも出演させる。出来る俳優が所属する事務所の多くはそんなスタンスだ。

低予算でもいい映画なら出演させる。芸術映画もOK。いかにも売れ線だが低俗な作品には出さない。バラエティには出さない。テレビにも出ないことで高級感を作り、CMの仕事で稼ぐ。この手の事務所も多い。90年代はCMで売り出し、そこから歌手は俳優へというパターンがあったが、そのためには激烈な企業CMのオーディションに合格する必要がある。

そしてCMは15秒、30秒の世界。そこで魅力を発揮せねばならない。だが、その手のタレントは2時間の映画ではもたない。15秒なら輝くが2時間だと飽きてしまう。僕もその手のCMで人気が出たアイドルタレントと仕事をしたことがあるが、まさにそれ。可愛いが、持たない。もういいか...と思えて来る。例えばアメリカ映画で、最初、美人でもなく、パッとしない女優さんが、映画を見ている内にどんどん魅力的に見えて来た経験はないだろうか?

それが女優なのだ。だから、90年代にブレイクして大人気だったアイドルタレント。名前は上げないがMさんも、Mさんも、Mさんも、映画で代表作がない。最後のMさんは個性派に転じようとがんばっているが、厳しい。当時はCMでブレイク。十代でいきなり主演デビューみたいなこともあったが、今は演技力のある俳優が求められる。

さらに昔、70ー80年代は売れると、テレビドラマ、映画、歌、バラエティ(全員集合とか欽ちゃん番組)、CMと、稼げるだけ稼ごう!というスタイルが主だった。事務所の方針だけでなく、観客や視聴者もそれを望んだ。可愛ければ、歌が下手でもレコードデビュー。芝居できなくてドラマに映画。バラエティにトーク番組。

それが近年は観客が俳優は俳優。歌手は歌手と分けて受け止めるようになった。可愛いだけで歌が下手なアイドルのCDを買わない。その歌手が出ているからと、主演映画を見に行かない。テレビには出ないアーティストも増えた。昔は矢沢永吉とユーミンが代表だった。が、そのタイプが増えた。昔はテレビに出ないと売れないという時代だったが、今はそうでもない。芸能の世界も細分化され、売れれば何でもやるという形は廃れてしまった。

そんな時代を背景として芝居が出来る若手女優が増えた。バラエティには出ない。歌も歌わない。映画とドラマだけ。もちろん、相変わらず、テレビで売ろうとする大手事務所も存在する。が、昔のようには行かず、内部分裂を起こしたり、やはり時代に逆行している。話はそれたが、そんな背景ができる若手俳優を増した。

僕が出てほしいのは、そうしたタイプの俳優さんだ。だから、事務所がどこか?も考慮のひとつ。モデル系、お笑い系の事務所はちょっと考える。でも、その中に真剣に俳優業をしている人もいるので、事務所で全ては決めない。あれこれ考えていつも依頼する。芝居に命を賭けている人たちと仕事するのは楽しい。

僕が書いたシナリオをどう解釈し、表現してくれるのか? 出来る俳優さんは何もいわなくても正解を見つけ演じてくれる。これまでに「えーーそれは違うでしょう?」という人は皆無。俳優さんは超真剣に考え、役作りをし、現場に来てくれる。では、彼ら彼女らはどんなふうにして役にアプローチするのか?そしてどんな風にして演じるのか? 次回はその辺を書かせてもらう。



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