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メイキング。ようやく完成。激動の最終作業を報告 [8月ー2018]

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2ヶ月近くに渡ってお伝えしてきたメイキングが完成した。正確にいうとまだ完成ではないが、僕の作業は完全に終了。あとは、専門家のスタッフさんが最終処理作業をするだけ。データをHDに入れて配信先に渡す。彼も一昨日、昨日と不眠不休で作業をしてくれた。丸2日、全く寝ていない。僕は細かな技術のことは分からないので、彼がその辺をやってくれる。

というのも最後の最後。書き出しの段階になって、依頼元からようやくフォーマットの連絡が来た。何度も訊いたのに返事がなかった。ようやく来た返事。それは驚愕。フォーマットが違う。この1ヶ月半の作業を全てやり直さなければならないものだった。メートル換算で建てた家をフィート換算で立て直すようなものだ。

これはもうアウト。無理。納品日は数日後だった。もう、よっぽど止めようか?と思った。ここまでの過程は何度もお知らせしたが、本当に屈辱的な素材を何とか人樣が観られるものにしようと通常の2倍3倍の時間と労力を注いで作業した。それが全部無駄。。。。。僕は諦めないタイプだが、さすがにもう終わりにしようと思った。

そもそもメイキングの映像を撮ったスタッフ。予算の都合でプロが雇えず、映画科の学生に頼んだのだが、上がった映像は本当に酷いもの。手ぶれ。ピンぼけ。狙ったものを撮れていない。映画科とは思えない。素人のおばちゃんが子供の運動会を撮ったビデオの方がまだうまい。それを別にしても、彼の映像には愛がなかった。スタッフに叱られ、注意されたことで、カメラから離れた場所にいて、俳優が豆粒にしか見えない監視カメラの映像のようなものを撮り「撮りました!」といっていたのだ。

愛がない。責任感がない。やる気がない。「将来は映画監督になりたいんです」といいながら、現場で誰にも叱られない安全な場所に避難して撮影していたのだ。最近の若者は叱られるとすぐに辞める。「明日にかける橋」にもそんな台詞は出て来る。が、彼らは本当にやる気がないのではなく、長年の教育システムで鋳型に嵌められ、言われたことしかしない人間として育てられたことが原因。

だから僕は「***をやりたい」「夢は***です」「俳優になりたい」「映画監督になりたい」という若い人たちは真剣に応援する。その中で学校で押し付けられた価値観とは違いもの。方法論を見つけてほしいと願うからだ。まさに、僕の映画のテーマでもある。が、今回の学生君の存在は本当に悲しかった。誤摩化し、ウソをついて現場を過ごし、やるべきことをやらず。しっかりロケ弁は食い。撮影中でも隠れて休憩している。彼の撮った映像はその全てを語っていた。

観るだけの船酔いし、目がしょぼしょぼする彼の撮った映像を1ヶ月に渡って朝から深夜まで編集。その間を縫って、東京公開。宣伝。舞台挨拶。取材。ラジオ出演。そして大阪公開。静岡公開の準備と、本来それだけでもかなりな時間が取られる。生活のための仕事もせねばならない。宣伝で監督はギャラをもらわないのが業界のルール。だが、通常の監督宣伝ー取材を受ける。舞台挨拶をするーを超えて、毎回、ほぼ宣伝員として動く。

その間に編集。生活のための仕事はできず。断るしかなかった。その中で通常の3倍時間がかかる船酔い映像の編集。誰も引き受けてくれなかったこと。そして、これを人に見せる作品にできる人もまずいないであろうこと。いたとしても高額のギャラと長期の作業時間を要求されること。だから、僕がやるしかない。スタッフやキャストの失敗は監督の責任なのだ。

作業は、本当に本当に葛藤と、怒りと、激情の連続。それがようやく編集終了。そこで依頼元から返事が来た。別のフォーマットを指定している。スイッチひとつで直せるものではない。この1ヶ月の作業は全部やり直しだ。おまけに翌日から大阪宣伝ツアーだ。もう、物理的に無理。

だが、そこで配給会社が助っ人を頼んでくれた。本来、この作品のMAをお願いしていた人だが、映像もできる。相談して、出来る限りのカットを入れ替えることで対応できるかもしれない。とのこと。それで行くことにした。入れ替えといっても、指定されたフォーマットに素材を変換。そこからサイズを調整。カラーを直して、テロップを入れ直す。

それを出来た分からギガファイル便で担当者に送り、先方で調整直し、組み立ててもらう。大阪から戻ってその作業。数日後に大阪公開で再び大阪へ。宣伝。舞台挨拶。お礼参り。おまけにお盆でホテルがいっぱい。カプセルホテルも満室。サウナに泊まり休息室で寝る。朝イチで起きて東京へ。着いたらつぐに作業開始。それから徹夜で2晩。僕は少し仮眠を取ったが、担当者さんは寝ずに48時間。

でも、そのお陰で完成した。ようやく上がったプレビューを観るとまた問題点を発見。もう一度、その箇所を直し、再び映像を送る。それが今朝の午前3時。僕はそこから寝れたが、彼は今、この時間もまだ最終作業をしている。本当に申し訳ない。多くの人を巻き込み、正当な報酬もなく、呪われたような素材を編集していると「自分はなぜ、こんなことをしているのか......」と思える。素晴らしい作品を作るなら分かる。まともに人に見せることができる作品にするために、通常の3倍の労力。。。

ひとつには映画の宣伝になること。しかし、これを見て何人の人が映画館に足を運ぶか? 10人。100人? 誰も行かないかもしれない。けど、それが宣伝。それより、ここまでして作品にしたのは、昨年の夏。猛暑の中でがんばった地元の方々の想い出の記録にもなると考えたからだ。それを見てくれれば「あー私たちがんばったわねー」「無理してもやってよかった〜」と思ってくれるからだ。映画そのものではなく、自分たちも登場する作品は本当に嬉しいもの。

というのも、僕の以前の作品。何本かはメイキングが作られていない。どの作品も撮影はしてある。だけど作品になっていない。映画公開が終わったとき、予算はもうないからだ。宣伝費も同様。記録した映像はあるのに、それを観ることができない。だから、今回は何とか。。。と思っていた。映画というのは本当に儲からない仕事。よほどのメガヒットをしなければ、製作費は回収できない。その上、僕の作品は本当に節約節約。経費削減の現場なので、いや、僕だけではなく、ほとんどの映画は最後には製作費が足りなくなる。想定外な出費がある。メイキング以前に宣伝にも多額の費用がかかる。

そんなことで小規模映画はまともなメイキングは難しい。が、今回はネット配信というチャンス。MA代は出してくれるとのこと。それならできる。作品になれば地元の方々。関係者は喜んでくれる。もう、それだけが心の支えで編集を引き受けた。が、想像以上に疲労困憊。心も体もへとへと。なのに数日後にはアメリカの映画祭へ。ときどき「僕は何をしているのだろう?」と思う。

素晴らしい映画を作るための苦労はいとわない。でも、心なき人たちとはどんなにギャラが高くても仕事はしない。そんなスタンスでやって来たが、今回の件はいろいろ考えることがあった。誰が悪いということではない。が、今回だけでなく、やる気のない人や、やるべきことをやらない人。情熱を失う人。利益を求め笑顔で寄って来る人、そんな人たちのために、多くの人が時間や労力を費やし、その尻拭いをするという構図は間違っている。では、どうすればいいのか? そんなことを考えつつ。1本の映画が完成し、公開され、終わりが近づいて来ると、いろんなことを考えてしまう。

ともあれ、メイキングは完成した。ネット***とか、***プライムとか(いずれ分かったら告知)そんな映画配信サイトで8月下旬に観ることができる。かなり酷い映像もあるが、最低限観れるようにして編集。新たな素材も追加撮影して仕上げている。どうにか作品になっているし、関係者が観れば懐かしい映像がたくさんある。また、映画を観てくれた人なら「こんなふうに撮影していたんだ〜」と楽しめる。まだ観ていない人はネタバレはないので、本編が観たくなるだろう。

配信日が決まったら報告する。この1ヶ月半。心配してくれた人。応援してくれた方。どう励ましていいのか分からず見つめていてくれた方。本当にありがとう。でも、これが映画監督業なのだ。決してカッコいいものではない。若い人にも、学生さんにも、それを伝えたくて葛藤や怒りも文章にしている。腹立たしいこと。失望すること。許せないこと。どの仕事でもあるように映画監督業もそんなことの連続。それを伝えるのに今回の件は相応しいと思い書き続けた。観れる人。ぜひ、配信されたら観てほしい。


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