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明日にかける橋ー編集日記 日本の映画人は音楽を重用視しないのはなぜ? [音楽]

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映画にとって音楽はとても大事だ。が、古い映画人は「音楽に頼らず、映像で勝負しなければならない」という人が多い。昔から意味分からなかった。そもそも映画は「総合芸術」と呼ばれ、演劇、カメラ、美術、音楽といろんな芸術の集合体。つまり総合芸術なのだ。にも関わらず、その中から音楽を排除してカメラ=映像で勝負するのが映画だなんていう背景が分からない。

「台詞に頼らず、映像=動きで見せるべき」というのもよく言われる。映画はもともとサイレント。チャップリンやキートンの時代は音がなかった。動きで勝負するしかない。だから、映画は動きで!というのは分かる。が、これも総合芸術で言えば演劇=つまり舞台演劇は台詞で進行する。それを排除して「動きで見せる」というのも少し違う気がする。

もちろん、テレビの2時間ドラマのように安易に台詞で全てを説明するのは問題だが、映画ファンのコメントによく「この監督は台詞は安易に多様し過ぎる」と評論家ぶったものがあるが、台詞もまた映画では大事な要素なのである。いずれも過去の形に囚われて、音楽や台詞を邪道扱いする映画人や映画ファンが多いように思える。

黒澤明監督も「スターウォーズは音楽を使い過ぎ!」とルーカス本人に直接批判したことがある。尊敬する師匠に厳しくいわれて、ルーカスは落ち込んだというが、僕はその「スターウォーズ」を見て「全編に渡って、こんなに音楽を使っていて凄い!」と感動したものだった。そこから考えて行くと、年齢層が高くなるに連れて、新しいものを拒否しがちになるのではないか?と感じる。

フィルムからデジタルに移行しつつあるときも、古い監督たちは「デジタルなんて映画じゃない」「フィルムに拘らねば!」と言っていた。音楽に関しても古い映画人は「音楽に頼ってはいけない」と思うのはサイレント時代からの習慣を守っていたのかもしれない。もうひとつには映画人で音楽に関心ある人が少ないということもあるだろう。

というのも僕は中学時代はビートルズ、高校時代はRストーンズ、その後はBスプリングスティーンと10代からロックを聴き続けて来た。50S、60S。Dボウイ、Jブラウン、プリンス。彼らのコンサートにも行く。CDも毎日聴く(今はiPadに入れているけど)だが、そもそものスタートは映画音楽だった。

自主映画時代からそうだが、8ミリ映画を作っていた大学生でも熱烈な音楽ファンは少なかった。映画はよく見ているが音楽はほとんど聴かない。せいぜい歌謡曲。ライブに行くほど好きなアーティストはいない。映画の世界で働き出してからも同じ。先輩たちにも音楽にうるさい人は非常に少なかった。

あるドラマの監督はこういう「この場面は大事だから、音楽を入れずに見せたい」「このシーンの芝居は今イチだから、後ろで音楽を流してもたせてほしい」音楽は本来、重要ではない。あまり使うべきではないという思いがあるのだ。そう、BGM。バック・グランウンド・ミュージックという扱いなのだ。しかし、音楽は後ろばかりではなく、前面に出ることもある。が、古い映画人にそんな発想はないようだ。

年配の映画人の多くは映画は好きだが、音楽については語らない。ロックでも、ジャズでも、演歌でもいいが、この歌手が好き!という人とお会いしたことがほとんどない。演劇の世界では劇団・新感線の演出家はジューダス・プリーストのファンだし、作家の山川健一さんはRストーンズのファンとしても有名。でも、映画監督で誰々の大ファンというのはあまり聞かない。

そんな背景があるせいか、日本映画(実写です=アニメは音楽に力を入れている)で誰もが知るスタンダードな映画音楽というのがない。アメリカなら「風と共に去りぬ」の「タラのテーマ」「スターウォーズ」「インディジョーンズ」のマーチ「ジョーズ」「ET」「ピンクパンサー」「007」ジェームズボンドのテーマ「カサブランカ」「ある愛の詩」「ゴッドファーザー」愛のテーマと、世代を超えたヒット曲があるが、日本映画はどうだろう?

つまり、古い映画人は音楽に関心がない。そして、映画は音楽の力を借りずに作るべき。という思いが強いということ。若い世代でも音楽に関心のない人が多い。後輩でビートルズが好きなのがいるが、映画関係者と会って音楽の話をすることはあまりないのを思い出す。だが、音楽は重要なのだ。今回の「明日にかける橋」もすでに音楽制作をスタートしている。粗編した映像を音楽家さんに送り、曲を考えてもらっている。

その音楽次第で映画が2倍面白くなったり、半減したりということになる。そんな映画音楽の話。制作の進行に合わせてまた紹介する。


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